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インタビュー2025年9月17日

トップインタビュー オーバル 代表取締役社長 谷本淳氏 流体計測機器の専業最大手 高い技術力と信頼を背景にアジアナンバーワンを目指す

「確かな計測技術で、新たな価値を創造し、豊かな社会の実現に貢献します」を経営理念に掲げ、中長期経営ビジョンとして「アジアNo.1のセンシング・ソリューション・カンパニーへ」を目指しているオーバル(7727・S)。2025年3月期は増収減益となったが、一時的な要因が理由で、増益基調は変わらない。今期は過去最高の売上高が見込まれる。4月から新中期経営計画『Imagination2028』がスタート。成長戦略を谷本淳社長に聞いた。

――事業内容は。

「流体計測機器の専業最大手として幅広い製品ラインアップを展開している。事業の柱は流量計の製造、販売をするセンサ事業、流量計のメンテナンスや校正(計器類の誤差や精度を標準器と比べて正すこと)業務を行うサービス事業、それに様々なシステムソリューションを提供するシステム事業の3つがある。このうちセンサ事業が全体の売上高の約63%を占めており、主力事業となっている」

――強みは何ですか。

「製品のラインアップが豊富なことだ。流量計は測定原理別に容積流量計、コリオリ流量計、渦流量計、超音波流量計、熱式質量流量計、タービンの6種類をラインアップしており、この製品群で液体・気体・蒸気などの各種流体、微小流量から大流量まで、様々な需要に応じられるのは当社だけ。なかでも容積流量計、コリオリ流量計、渦流量計は主力製品でセンサ事業の売上高の約90%を占めており、容積流量計は国内市場シェアの約50%を占めている。またJCSS(計量法校正事業者登録制度)の登録事業者として石油・水・気体の3種類の流量のJCSS登録を持っている唯一の事業者でもある。特に石油の校正可能流量は国内最大を誇っている」

――今期から新中経がスタートしたが、ポイントは。

「前中経の最終年度にあたる25年3月期の連結業績は増収減益だった。オーストリアAnton Paar社とのライセンス契約にかかわる特殊要因(一時金の収受がない減収分)などを除けば増益基調は変わらないとみている。今期から新たな3カ年の中期経営計画『Imagination2028』がスタートしている。前中経を第1フェーズの構造改革期、新中経は第2フェーズの成長期と位置付けており、新たな市場開拓や製品開発に注力し、企業グループ全体のさらなる成長を目指す。中長期経営ビジョンとして掲げた『アジアNo.1のセンシング・ソリューション・カンパニーへ』を達成するため28年3月期の売上高は170億円を目指し、7年後の32年3月期には売上高200億円を目標として、経常利益率は当初の10%から14.0%以上に上方修正した」

――具体的な施策は。

「成長期と位置付けたフェーズ2のミッションは新製品の開発、アジア市場の拡大、新規事業の創出、また経営基盤強化戦略として1人当たりの営業利益の増加やカーボンニュートラルの取り組み、従業員のエンゲージメント向上などを推進していく。また資本政策ではROE(自己資本利益率)向上や株主還元策にも積極的に取り組んでいく方針だ」

――期待が大きい水素関連の事業はどうか。

「今後需要が高まると見込んでいる水素計測用流量計の拡販のため、横浜事業所に水素実ガス校正設備を建設中で、年内には建屋が完成し来年から稼働する見込みだ。水素、アンモニア関連事業には積極的に投資して28年3月期には同事業の売上高を25年3月期対比で50%増を目指す」

――海外展開は。

「中国、韓国、台湾、シンガポールなどに展開しているアジア各国の拠点を軸にして、さらなる販路拡大や生産のグローバル化で『アジアNo.1のセンシング・ソリューション・カンパニーへ』の実現を目指す」

――社内ベンチャー制度を活用した事業が始まったそうですね。

「社内の技術を背景に2つの新規事業を立ち上げた。ケムシェルパ(含有化学物質調査)の調査代行事業とプラスチックごみ問題や過重労働対策にも貢献するローリー車マンホールカバー封印管理システム『Lock‘nLorry』だ。これらの事業を含め、新規事業の売上高は3年後に17億円を目指す」

――株主還元策は。

「25年3月期は年間配当予想を16.0円に引き上げ、配当性向は前期の28.5%から34.8%になった。26年3月期は年間配当20.0円(前期比4.0円増)と過去最高の増配を予定している。また新中経の最終年度にあたる28年3月期のROE7%必達に向け、総還元性向は期間中の平均70%以上、また利益の変動に左右されないDOE(株主資本配当率)2.7%以上を目指し、また、機動的な自己株式取得も計画した。25年8月には、この株主還元方針に基づき自己株式取得を実施済みである」

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