テクセンドフォトマスク(429A)が10月16日、プライム市場に上場する。
半導体用フォトマスク製造専業の外販メーカー。外販フォトマスク市場ではグローバルでトップシェア(2024年、販売金額ベース)の大手。前身は凸版印刷(TOPPANグループ)のフォトマスク事業で、高精細の印刷技術を応用し、1968年にシリコントランジスタ用フォトマスクの量産を開始した。市場の変化に素早く対応するため、事業を切り出し、21年12月にTOPPANグループのフォトマスク事業と関連事業の承継会社として設立、独立系投資ファンドのインテグラルを出資パートナーに迎えて22年4月に事業を開始した。
フォトマスクとは、半導体回路パターンをシリコンウェハ上に縮小露光し、微細な回路パターンを形成する際に使用される原版。ガラス基板で半導体製造工程の一つである露光(リソグラフィ)プロセスにおいて広く使用されている。
半導体業界はかつて、IDM(垂直統合型)事業モデルの下、各半導体サプライヤーがフォトマスクを内製していたが、世界的にファブレス・ファンダリー事業化が進み半導体の設計と生産が水平分業された。その結果、現在のフォトマスク市場は、半導体サプライヤーの内作による供給と、同社のようなフォトマスク製造を専業とする外販メーカーによる供給に二分されている。同社はフォトマスクを内製しない半導体サプライヤーや研究機関などに加え、内製の半導体サプライヤーからの外注需要にも応えている。
現在、EUV(極短紫外線)リソグラフィなどの先端分野は、TSMC(台湾積体電路製造)などの半導体サプライヤーが内作しているが、さらなる微細化競争に伴い、将来は外販サプライヤーへの外注需要が高まることが想定されるという。さらに、エッジAIやIoTなどで半導体の用途が拡大により、外販フォトマスクベンダーに対する外注需要も増加しており、外販市場は拡大の方向にある。
生産体制は現在、アジア5工場(うち国内2工場)、米国1工場、欧州2工場の計8工場でフォトマスクの製造を行っている。シンガポールでは現在、フォトマスク製造の前工程にあたるデータ処理工程のみを行っているが、26年に新工場が稼働する予定。アジア・北米・欧州全ての地域で現地供給できる体制を整え、現地顧客に対し短納期で製品を供給している。
中期的にはEUVマスクの外販化を見据え、開発・量産体制の構築を推進するほか、業界のパートナーとの共同開発を通じて、次世代マスク材料の開発やフォトマスク製造プロセスの早期確立を進める。また、車載や産業向けなど様々な用途で半導体需要が拡大していることに加え、世界各地で半導体メーカーによる新工場設立・生産能力増強が進んでいることに対応、ミドルエンドの需要拡大に対応する生産ラインの拡充を進める方針だ。
概要
●事業内容=フォトマスクの製造・販売
●本社=東京都港区東新橋一丁目5番2号
●代表者=二ノ宮照雄代表取締役社長執行役員CEO
●設立=2021年12月
●上場前資本金=4億円
●発行済み株式数=9229万1220株(上場時)
●筆頭株主=TOPPANHD(上場前47・46%)
●公募株式数=700万株
●売出株式数=3261万1000株(ほかにオーバーアロットメントによる売出が594万1600株)
●仮条件=9月30日に決定
●ブックビル期間=9月30日から10月6日まで
●引受証券=SMBC日興、野村(主幹事)、三菱UFJモルガン・スタンレー、モルガン・スタンレーMUFG、BofA、みずほ、大和、SBI、マネックス、松井、岡三、岩井コスモ
業績推移(連結)
経常利益 | 純利益 | 1株利益 | 配当 | |
2024.3 | 54,358 | 41,176 | 5.76 | ― |
2025.3 | 44,889 | 78,791 | 11.02 | 0 |
2026.3(予) | 122,000 | 82,000 | 11.47 | 3.5 |
※単位100万円、1株利益・配当は円 |