オーバーラップホールディングス(414A)が10月3日、東証グロースに新規上場した。初値は公開価格を7%下回る1,533円。小説投稿サイトなどからライトノベル作品を発掘し、コミック、アニメなどのメディアミックスでヒット作品に育て上げるIP(知的財産)ビジネスを展開。上場当日の記者会見で永田勝治代表取締役社長(写真)が語った内容のポイントは次の通り。
世界に広がるIPを創出……ゼロからIPを生み出し、メディアミックスでそのIPを世界に広げ、業界の最前線を目指す新たな勢力になることをビジョンとして掲げ、2011年に会社をスタートした。新しい才能とあらゆるメディアをオーバーラップさせて作品を世界に広げていく、新しい時代のエンターテインメントIPパブリッシャーを目指している。売り上げの約9割を占めるマンガ、ライトノベル、アニメの自社IP事業および、それらを海外に展開するライセンス事業、そしてポケットモンスターのゲーム攻略本など他社IPを利用した事業を展開。中でも一番メインを占めている自社IP事業は、マンガが8割弱、ライトノベルが2割弱、残りがアニメ・その他となっている。
UGCから原石を発掘……UGC(ユーザー生成コンテンツ)からのIP創出というビジネスモデルが特徴。小説投稿サイトなどあらゆるネットメディアやSNS(交流サイト)メディアを駆使することで、既にユーザー支持のあるIPの原石を発掘、当社のプロの編集者を付けて、作家さんとともに作品の完成度を高めた上で商業作品として世の中へ届けている。また、IPの原石を商業化していくプロセスについても、ライトノベルからマンガ、マンガからアニメ化とリスクの低いメディアから展開し、成功した作品をより市場規模の大きいメディアへとステップアップさせていくことで効率よくヒットIPを創出している。生み出した作品は紙書籍と電子書籍の両方で流通させており、紙書籍については出版取次を通じて全国の書店に、電子書籍についてはほぼ全ての電子書店へ直接取引もしくは電子取次を通じて作品を届けている。現状では電子書籍の方の売り上げが大きく、全体の7割強を占めている。
成長の源泉は「良質なIP」の創出……弊社の業績は大きく3つの成長ドライバーの掛け算で成長していく。ドライバー1がIP数の増加、ドライバー2はメディアミックスの強化、ドライバー3は海外収益の拡大――。直近で最も重要視しているのはドライバー1。これが全てのドライバーのベースとなるという部分と、将来的に大きく育ち得る良質なIPを数多く創出することが弊社の成長のメインドライバーになると考えている。当社では売り上げが年間2,500万円を超えるようなIPを“主力IP”としており、こうしたIPを増やすことを心掛けている。短期的には編集者の積極的な採用および育成、また、創出するIPジャンルの拡大に取り組むほか、中長期的にはM&Aを通じた非連続な成長にも取り組んでいきたい。
アニメ事業参入も視野……ドライバー1で生み出したIPをより大きく育てていくためにはアニメ化の実現が非常に重要な要素となる。当社のアニメタイトル数は順調に拡大してきてはいるが、後もさらにそのトレンドを維持、さらに強化を目指していくと同時に、中長期的にはアニメ事業自体への参入も検討していきたい。
海外へのダイレクトパブリッシングの可能性……近年、グローバルにおいて日本のマンガやアニメの評価が高まる中で、当社も海外ライセンスの強化をしている。具体的には既存のライセンス国による新規ライセンシーの拡大、および当社がまだライセンスをできていないライセンス未開拓国の新規開拓も積極的に行っていく。さらに中長期的には、現在のライセンスのモデルから、海外におけるダイレクトパブリッシング(作品を直接読者に届ける出版方法)についても可能性を模索していきたい。現状、海外のマーケットは紙媒体が主流であり、日本から海外の現地の翻訳出版社にライセンスをして、現地の翻訳出版社が紙媒体で流通させるという流れになっている。日本と同じように電子で読まれるマーケットが広がってくれば、直接国内で翻訳をして、海外の配信サイトに直接配信していくということも考えられる。(SS)