サイプレス・HD(428A・S)が10月8日、東証スタンダードに上場した。初値は公開価格を4.9%下回る675円。同社は飲食店を全国展開している。2025年8月期決算は10月15日に発表予定、26年8月期から配当開始が想定される。株主優待も検討しているようだ。上場当日の記者会見で東稔哉代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
出店オファー多数……全ての人に食の喜びや幸せを伝えたいと思い30年前に飲食店をオープン。現在、海鮮定食「築地食堂源ちゃん」(以下源ちゃん)など和食を中心に36種のブランド、129店を経営している。出店先はイオングループなどの商業施設。デベロッパーのオファーが非常に多く人気があるのが「源ちゃん」、回転すし「ABURI百貫」、持ち帰り焼き鳥「銀座惣菜店」。「ABURI百貫」は平均客単価2,800円と普通の回転寿司に比べ高いが、クロマグロなど材料にこだわった本物の寿司をリーズナブルに食べられると非常に好評。将来的には「子ども食堂源ちゃん」を作り社会貢献もしたいと思っており、ブランドを一生懸命拡大させている。
大手企業が敬遠する業態を確立……魚は価格が日々変動し、生のため取り扱いも難しく、大手企業は敬遠するケースが多い。そこを逆手に取り、全国の市場からわれわれのバイヤーが鮮度の良い魚を仕入れ、その日のランチから召し上がっていただくシステムができ上がっている。われわれのように毎日違う非加熱の魚を安価に提供できる定食屋はなかなかなく、「源ちゃん」は希少性が非常に高い。
1区画に2店舗出店も……商業施設のレストランフロアの1区画に2店舗出店できることも強み。1区画55坪の店舗の場合、デベロッパーは売上高800万~1,000万円で繁盛店と評価、500万円を下回ると退店の可能性が高まる。中で「源ちゃん」は1,500万~1,800万円を売り上げ、同じ区画に「銀座惣菜店」(平均売り上げ1,000万円)を併設することで売上高2,500万円以上に。デベロッパーから優良テナントと評価され、非常に多くのオファーをいただている。全国の商業施設約850中、出店済みは5%で出店余地は大きい。源ちゃん、ABURI百貫はロードサイドも出店できよう。
出店に拍車……新型コロナ禍、51店を出店した。誰もが出店に二の足を踏んでいた時に積極的に出店したことが、24年8月期、25年8月期の最高益連続更新につながった。今後は勢いがさらに増すように出店に拍車をかけて業績を上げていきたい。25年8月期業績は想定以上。正確な数字は10月15日に発表する。既存店売り上げ、既存店客数は前年実績を上回っている。
大風呂敷は広げず……今後は主力3ブランドを中心に1,000店を目指していく。これは5、6年前から社内で合言葉のように全社員が共有した目的。自社出店してオーガニックな成長を積み上げるほか、M&Aなどインオーガニックな成長も積極的に図っていきたい。今後の出店ペースについては建築コスト高騰などに伴う回収リスクを勘案し、ロードショーでも堅い話しかせず、現状で見えている店舗数(10店)だけを申し上げた。大風呂敷を広げるより、四半期決算や中間決算で出店や契約状況を発表した方が良いと考えた。オファーは非常に多く、当然内部では30店、40店出せるような出店政策を計画している。
物価高の影響……米を600トン使用しており、米価格上昇の直撃を受ける。われわれは米価格は下がらないだろうとみて、5月1日に20円値上げした。値上げはこれまでしたことはない。5~8月にアンケートを4,000通とったが、値上げへのクレームは1件もなかった。50円、100円、200円程度値上げした同業他社がいる中で、われわれの値上げは容認されたと捉えている。
離職率は低い……出店は技術者(現在200人以上)の確保が前提となるが、離職率は低く、人材不足で出店できなかったことは過去一度もない。20年前から技術者の方にPL、BSを教え、EBITDAなどの観点から優れた技術者さん、店長さんにインセンティブを出してきた。表彰式は月に1回行い、表彰項目は売上高、EBITDAのほか、レイバーコスト、原価率、一席当たりの売り上げ・利益、前年対比、ホスピタリティなど。表彰された人は給料やボーナスのほかに、10万、15万、20万円とインセンティブが得られる。こうした土壌を20年かけてつくり、働いている方のモチベーションは高い。今期もベア5%以上、総額で1億円以上上げた。(Q)