テクセンドフォトマスク(429A)が10月16日、東証プライムに上場した。初値は公開価格3,000円を19.0%上回る3,570円と順調なスタートを切った。同社は米IBMと共同で2nm(ナノメートル)世代のEUV(極短紫外線)フォトマスクの研究開発を進めており、AI関連としても市場の注目度は高い。二ノ宮照雄代表取締役社長執行役員CEO=写真=が上場当日の会見で語った内容のポイントは以下の通り。
会社のミッション
「先端加工技術で、革新的な未来を描く」を掲げ、フォトマスクの製造を行っている。日本に本社を構え、世界に8つの製造拠点を有し、先端技術でお客さまに製品を届けるリーディングカンパニーだ。テクセンドフォトマスクの社名は「テクノロジー(技術)」と「アセンド(上昇する)」を組み合わせた造語で、先端の半導体技術に貢献していく意思を表している。元々はTOPPANの半導体事業だったが、2022年にインテグラルの出資を受け「トッパンフォトマスク」としてスタート、24年にテクセンドフォトマスクに社名変更した。
外販メーカートップ
フォトマスクとは回路をシリコンウエハに焼き付けるための原版。この原版を縮小露光でシリコンウエハに回路を焼き付けていく。回路の形成では成膜、リソグラフィ、エッチング、レジストなどの工程を数十回繰り返し、先端半導体では80~100回を超える。原版を換えながら露光を行うため、先端品になるほどフォトマスクの枚数も増えることになる。
フォトマスク市場は大きく内作と呼ばれる自社生産と外販に分かれる。私たちのような外販のフォトマスクベンダーから購入してICチップを作るファンダリーが増えているほか、内作している半導体メーカーも最先端分野に経営資源を集中し、それ以外のところは外販を利用する流れがある。現在、フォトマスク市場の37%が外販でそのうち38.9%(24年度)のシェアを当社が持ちトップだ。
外販フォトマスク市場の成長ドライバー
顧客生産ライン、ファンダリーの継続的な増加に加え半導体チップのデザイン数が年率3~4%のペースで伸びている。また、半導体の微細化に伴い必要となるマスク数が増加、多層化により付加価値の高い製品が求められ、マスクの単価も上昇している。外販フォトマスク市場は24~30年で年率8.7%程度の成長が見込まれている。こうしたなか当社は10%程度の成長を想定している。
強み
技術開発はIBM、imec(アイメック、ベルギーに本拠を置く先端半導体技術の研究開発機関)と共同で行っており2nmなど最先端のフォトマスク開発をしている。お客さまの効率をアップさせるような技術開発も行い、提案している。今後の投資についても、成長分野である28nm以下の先端領域を中心に伸ばしていく方針だ。シンガポール、日本、アジアで韓国など地産地消の供給体制を強化する。ミドル領域でも年率7~8%の成長が見込まれ、毎年一定の投資を継続する。
ラピダス、IBMとの今後
ラピダスはIBMと提携して27年から2nmプロセスの量産を開始する計画で、25、26年は量産に向けたセットアップ段階にあると考えている。27年の量産がどの程度になるか見えていないところもあるが、今後も計画に基づいてサポートしていきたい。