エコノミスト櫻井英明が注目する企業のトップにインタビュー。今回はLAホールディングス(2986・東G)。不動産領域において再生・新築・賃貸など市況に応じた戦略的な事業選択、積極的な新規仕入れと大型開発の継続で競争優位な事業展開をしてきた脇田栄一社長に、これまでの軌跡と未来について聞いた。
――長年、上場企業を見ていると、目を見張るような成長機会に遭遇する。貴社の株価は、2020年にホールディングス化したころは600~800円台だったが、9月には9,700円まで買われる場面があった。なにより業績も好調だ。
今12月期は売上高510億円(前期比14.1%増)、経常利益74億円(同8.1%増)と増収増益の見通しです。中期経営計画では26年12月期に売上高610億円、経常利益167億円を目指しています。売上高1,000億円というのも、そう時間はかからないと考えています。年間配当は今期330円。今期は初の中間配当として165円を実施しました。会社として事業成長を目指すことはもちろんですが、株主の皆さまに対しても利益還元の機会をより充実させようという考え方です。
――事業展開のポリシーを聞きたい。
まずはDX(デジタルトランスフォーメーション)新築不動産、DX再生不動産におけるエリア戦略です。未来の一等地となるポテンシャルエリアを対象として、他のデベロッパーが手掛けにくい「中規模開発」を中心としています。例えばDX再生不動産事業では、都心3区を中心とした首都圏に特化し、「ラ・アトレ Premium-Renovation(R)」の販売に注力しています。価格戦略も重要です。広さは100平方メートル以上。場合によっては10億円超の物件も取り扱っています。賃貸でも価値に見合えば月数百万での借り手はおられるということが現実だと気が付くか、付かないか。これは大きな差別化になります。未来に通じる商品企画力で魅力あふれる物件を創造し、価値を創造するというのは、事業展開の大きなポリシーになります。
――仕入れと販売が有機的に結び付いていると考えてよいか。
現時点で仕込んだ案件が売り上げ寄与するのは2~3年先のことになります。当社の事業は常に先を見ていますし、今年の棚卸資産を見れば数年先まで数字は読めます。これが増えていないと当社の成長は止まってしまうことになりますから、未来への財産をどれだけ仕込めているかということを、投資家の皆さまには考えてもらいたいと考えています。ちなみに第2四半期時点で棚卸資産は630億円です。
――今年6月には約80億円の公募増資を実行した。
金融情勢の変化を見越して、いち早く資金調達に動きました。今回は、攻めの増資(成長投資)と守りの増資(財務基盤の強化)の両面の意味を持つ「攻防の一手」です。強固な財務基盤をベースに、急激な市況の変化にも対応可能な事業体制を構築しつつ、同業他社との合従連衡を含めた他社との連携を強めるなど、未来の成長市場を先取りする戦略的な投資と、競争力の高い事業基盤の強化を進めることで、27年以降の新たな成長軌道を描いていきます。
櫻井英明(さくらい・えいめい)氏
最新経済動向を株式市場の観点から分析した独特の未来予測に定評がある。ラジオNIKKEIでは火曜「ザ・マネー 櫻井英明のかぶとびら」、木曜「櫻井英明のシン投資知識研究所」などに出演。
――複数の市場に上場している。
東京証券取引所と福岡証券取引所に加えて、今年7月には名古屋証券取引所プレミア市場、9月には札幌証券取引所本則市場に新規上場しました。グループとしての業務は、例えば福岡では賃貸マンションやホテル、北海道ではヘルスケア施設、沖縄ではグループ会社のファンスタイルが新築マンションの分譲を行うなど、全国での展開となっています。不動産はそれこそ“不動のもの”です。地域の方々とともに成長していきたいという当社の思いの表れです。
――IR活動にも積極的だ。
最近だと9月に開催された名証IR EXPO、日経・東証IRフェアに出展したところ、とても多くの個人投資家にブースへお越しいただきました。熱心な当社ファンの方も多く、当社に対する期待を肌で感じることができました。ファンや株主の方々の思いを受け止めながら、これからも成長にまい進しようと思います。