インフキュリオン(438A)が10月24日、東証グロースに上場した。初値は公開価格を7.1%下回る1,560円。同社は金融機関や事業者に決済に関わる機能を一気通貫でカバーするプラットフォームを提供する「決済イネーブラー(仕組み提供)」。上場当日の記者会見で丸山弘毅代表取締役社長CEO=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
決済全域をカバーするリーディングポジション……あらゆる産業が関わる決済において不可能なポイントを解決する会社。決済にまつわるインフラ(クレジットカードの発行基盤、ウォレット発行基盤、決済端末など)をクラウド型で提供している。SMBCグループ、北國銀行、SBIグループ、JR西日本などのほか、マネーフォワード、Sansanといったテック企業を含め利用されている。イネーブラー型ビジネスで、決済市場が伸びれば当社も伸びるポジション。決済全域をカバーするリーディングポジションであることもポイント。決済の度に増える従量型収入が伸びていくタイミングに差し掛かってきている。
先を見通して先進的プロダクトを構築……現在多くの決済業界は根拠となる法律が異なることもあり、銀行やクレジットカード、〇〇ペイなどそれぞれ別のシステムででき上がっている。一方、われわれはクラウドをベースにシステムを構築。様々な機能をパズルのピースのように組み合わせて導入できるようにしており、顧客企業は低コストかつ短期間で導入でき、機能拡張も簡易にできる。なぜこれを作れたのかというと、祖業であるコンサルティングで20年間、決済業界の課題に向き合ってきたため。業界がどう変わるか、どうあるべきか、先を見通して先進的な決済プロダクトを構築できた。
BtoB決済もアナログからデジタルへ……BtoCを中心としたキャッシュレス比率は現在40%程度と、政府目標や世界の半分程度にとどまる。内訳はクレジットカード、デビットカード、電子マネーが大半で、その多くが旧来型の仕組みでできている。われわれはキャッシュレス市場の伸びシロの部分だけでなく、今あるキャッシュレス市場の改革も担っていける。また、1,000兆円以上に上る日本のBtoB取引市場では、法人カード比率は0.7%に過ぎない。BtoB取引ではアナログの振込業務や紙を使用した請求書の受け渡しといった業務がまだまだ多くを占めているが、紙の使用がなくなり業務のデジタル化が進めば、それに連動して支払いや決済のデジタル化も進むとみられ、市場は大きく伸びていく。電子帳簿保存法が改正され、請求書のデジタル化が進み、手形の廃止も追い風。
成長戦略‥……BtoB決済処理金額を伸ばしていく。これは利用企業の増加、決済データを活用した付加価値向上(決済データを不正や与信に生かす、AIエージェントによる業務代行など)、今年新しくサービスが発表されたSMBCグループとのアライアンスにより大きく成長できると考えている。当社はSMBCグループの「Trunk(トランク)」の開発、運用にも関わる。Trunkは中小企業を対象に口座開設やカードの作成、経理業務の効率化などをデジタルで可能にする総合金融サービスで、デジタルバンクやフィンテックなどが一体となったようなサービス。ここに当社サービスメニューも一部入る。
業績見通し……成長性と収益性の両輪で業績を伸ばしていく。成長のけん引役となるBtoBは今後も年率50%成長を維持し、その他の事業をミックスすると売上高は年率25%成長、粗利益では年率30%以上の成長を続けていく。収益性では粗利益率50%以上、EBITDA15%以上がターゲット。これまで決済インフラを整え、一定の規模に達した。BtoBを中心に決済に応じた収入が伸びていくモデルのため、今後は売り上げの伸びと費用の伸びの差が生まれる。こうしたことによる成長性を見ていただきたい。
デジタル通貨の台頭・普及もビジネスチャンスに……ステーブルコイン、預金トークン、CBDC(中央銀行デジタル通貨)などデジタル通貨を巡りいろいろな動きがある。これもビジネスチャンスの一つとみている。口座、カード、ステーブルコイン、預金トークンなど複数の手段が出てきた時、ユーザーはそれらを統合し与信枠設定といったことが想定され、われわれへのニーズも高まってくるのではないか。
IPOの背景……20年間、決済分野のコンサルティングを行い、業界に対し非常に深い知見を持つ。その中で新しく出てきたテクノロジーや課題に対応し決済のプロダクトを積み上げており、現在は決済にまつわる課題をほぼ全て解決できる一気通貫の仕組みを持つ。一つのサービスで大きく伸ばすモデルよりも、日本のキャッシュレス、決済のインフラを大きく変えるということを考えてきた。その準備にかかったが、ようやく次世代型決済インフラの基本メニューが一通りそろった。まずは日本のBtoB向け決済が大きく伸びるチャンス。グローバルでも通じる部分があり、実際に海外企業からの問い合わせもある。(Q)

