NE(441A)が11月4日、東証グロースに新規上場した。初値は公開価格と同値の750円。SaaS型EC(電子商取引)支援プラットフォーム「ネクストエンジン」を展開。上場当日の記者会見で比護則良代表取締役社長CEO=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
迅速な意思決定、株主価値最大化へ……当社はEC業界のさらなる発展を支えるプラットフォームとしてHamee(3134・S)からスピンオフし、新たなステージへと踏み出すことになった。より迅速な意思決定と柔軟な成長戦略の実現を目指し、独立した経営体制の下でこれから事業を拡大してまいりたい。今回スピンオフ上場を選んだ理由としては、Hameeという小売りをメインにしている会社とシステムをメインしている当社、この2つの中での最適化がなかなか図れなくなってきていた。例えば人でいえばエンジニア中心の会社と営業が中心の会社。この中で会社の制度や仕組みを変えていくこともなかなか難しいところがあり、まずこの辺りをどのように改善していくかを経営陣で話し合ったという経緯がある。成長のための意思決定をいかに早くしていくかといったところを考えた時に、このスピンオフという方法が最適であり、かつ株主価値を大きくしていけるだろうといった判断の下でスピンオフという結論を出した。
安定性と成長性を両立……主要3事業のシナジーにより、当社のビジネスは強固な顧客基盤を活用してビジネスの拡大を図っている。中核事業であるEC事業者向けのSaaSシステム「ネクストエンジン」は、EC事業者の受注や在庫、商品管理などを一元化し自動化するためのシステム。複数モール・店舗にまたがる受注や在庫、商品管理を一元化し、コスト削減や人的ミスの防止に大きく貢献している。料金体系は3つあり、まず基本料金月額3,000円~で受注件数200件までをカバー。それを超えた部分は1件当たり35円から5円へと段階的に下がる従量課金となっている。さらに自社や外部によるアプリ課金、個別の受託開発も収益源となり、顧客のビジネスが成長すればするほど当社の収益も拡大する仕組みになっている。この一元管理・自動化システムとしての特徴が安定したストック収益と成長性の両立を可能にしている。
ECバックヤードのデファクトスタンダード……ネクストエンジンの2025年4月末時点の契約社数は6,570社で前期末から314社の純増。契約企業が運営する店舗数は5万3,602店舗にまで広がり、前期から3,000店舗以上拡大している。さらにネクストエンジンを通じた年間の流通総額、いわゆるGMVは1兆1,800億円を超えて、前年から約7%の成長となった。この規模感が示すように、ネクストエンジンは国内ECバックヤードにおけるデファクトスタンダードとして確固たるポジションを築いている。
コンサルでアップサイドを獲得……ネクストエンジン事業ではシステムの提供を行っているが、コンサルティング事業ではコンサルタントによる人的サービスを提供している。戦略の立案から実行、効果検証までを一気通貫で支援し、EC事業者の成果最大化に貢献している。ネクストエンジンが持つ基盤システムと組み合わせることで、単なるアドバイスにとどまらず、実際の運営代行や改善施策を担う点が特徴。KPIとしては顧客数、平均単価をモニタリングしており、ネクストエンジン事業のストック型の基盤に対して、アップサイドを獲得する位置付けとなっている。
自治体向け支援……3つ目のロカルコ事業は、地方自体向けにふるさと納税の支援・運営を一括で代行するサービス。自治体が寄付額を拡大できるよう、ポータルサイトへの掲載、SEO対策、返礼品の開発などを行っている。こちらも管理システムにネクストエンジンを活用しており、業務フローを標準化しつつ、自治体、返礼品事業者、配送業者の間をシームレスに連携させている。売り上げのKPIは契約自治体への寄付額と当社の手数料率、その他業務量に応じた従量課金で構成される。このロカルコ事業にはリテール事業というものが内包されており、こちらは日々の暮らしに寄り添う道具類を中心に、全国の伝統工芸品をECにて販売している。
成長シナリオ……売り上げの構成比としては主力のネクストエンジンが約75%を占めており、ネクストエンジンの成長が当社にとって非常に重要な位置付けになっている。KPIは契約社数×ARPU(1ユーザー当たりの平均売り上げ)で構成されており、契約社数の拡大に向けては現在、販売パートナーの活用や顧客獲得施策を推進している。一方でARPUの向上に向けては「オーダーメイド開発」といったものやAI機能の新規開発、ステージ別の顧客支援といった施策を展開して顧客体験価値を高めている。これらの取り組みについては単発ではなく、個別ニーズの対応から定着、標準機能への波及へとつながり、再び顧客獲得につながっていくといった持続的な成長サイクルを形成している。さらにここで培った顧客基盤や運用ノウハウはコンサルティングやロカルコ事業にも展開され、全社的な成長機会の拡大に結び付いていく。長期的には海外(クロスボーダー)も視野に含めながら、コマース全体を支える基盤となる存在を目指していく。これについては、26年6月にあらためてNE単独としての中期経営計画というものをお示しして、説明をしっかりできればと考えている。(SS)

