HUMAN MADE(456A)が11月27日、グロース市場に新規上場した。国内外のセレブが愛用するファッションブランド。東証で行われた上場セレモニーには、同社のアドバイザーを務める米グラミー賞アーティストのファレル・ウィリアムスさんも登場し、創業者でクリエイティブディレクターのNIGOさんらと打鐘した。初値は公開価格を9.9%上回る3,440円。28日も大幅上昇した。上場当日の記者会見で松沼礼代表取締役CEO兼COO(写真)が語った内容のポイントは次の通り。
ビジネスとクリエイトの両輪
私は4年半前に、NIGOさんに誘われて入社した。NIGOさんは、「日本の多くのブランドはデザイナーが社長をしており、それまで(NIGOさん)自身がデザイナー、経営者としてやっていたが、海外で成功しているブランドはLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)のように、ビジネスとクリエイトの両輪の組織となっている。当社を日本発の世界に誇る稀有(けう)なグローバルブランドにしたい」と言われた。ぜひ当社をグローバルブランドにしたいという思いで入社し、その礎を築いてきた。
高収益、高効率、高成長のビジネスモデル
クリエイティブとビジネスを分離して、われわれのクリエイションが永続的に残る仕組みづくりに着手した。NIGOさんを筆頭にファレルさんら世界のカルチャーシーンを魅了しているクリエイターと、われわれのような各領域に知見を持ったビジネス陣が集まって組織をつくった。その上で、高収益、高効率、高成長を実現するビジネスモデルを構築した。商品戦略、プロモーション戦略、販売戦略、3つの視点で伝えたい。
ライフスタイル全体へ展開する商品力
まず商品戦略だが、われわれは何よりも商品の価値が経営の中核だと思っている。他のアパレルブランドと違い、物の価値を分かった上で、それを体系だって編集、加工して新しい世界観を作り出し、価値として創出している。ブランドコンセプトは”THE FUTURE IS IN THE PAST” (未来は過去にある)。そこにハートや動物のモチーフというノンバーバル(言葉を使わない)に伝わるIP(知的財産)を軸にしたモノ作りをしている。さらに、アパレル以外のライフスタイル全般、家具、インテリア、生活雑貨まで展開する商品力が、世界中のお客さまに支持されている。
プロパー消化率は100%
プロモーション戦略は基本的に広告宣伝費をかけない代わりにファレルさんをはじめ、多くのVIP、セレブ、KOL(キーオピニオンリーダー)に愛されるブランド、関係をつくった。最近だと1週間ほど前に(韓国の人気アイドルグループ)BTSのJ-HOPE (ジェイホープ)さんとコラボレーションした。このように類いまれなアーティスト、ブランド、企業とのコラボでブランド価値を向上させ、認知度を世界的に広げていく。これができるブランドは世界でも稀有。販売戦略は52週MDという珍しい方法をとっている。これは毎週新商品を出し、木曜日に情報を発信して土曜日に発売する。消費者は発売を心待ちにして、消費意欲が感化されて発売の瞬間に多くの商品が売り切れる。プロパー消化率(定価販売率)100%と他ブランドではあまりない高水準。この結果、営業利益率は28%と高く、3年の平均成長率44%で特に海外は81%に上る。効率性はプロパー消化率100%に加え、1店舗1平方メートル当たりの年間売上高が900万円を超えており、ここまで効率的な小売店は他にないと思う。
世界の文化的発展と成長のため上場
日本は世界有数のクリエイターがおり、世界中の人が愛してやまないIPが多数ある。われわれのようにクリエイティブと資本を融合させ、ビジネスとして昇華させ、世界に新しいカルチャーの芽を植える。それこそがわれわれの存在意義。単なるアパレルブランドでなく、日本が誇るIPをファッションを中心にライフスタイル全般まで及ぶクリエイティブ産業として育てていきたい。世界の文化的発展と成長に貢献できると自負しており、これを実現するために上場する。
国内は旗艦店、海外進出と両輪で
超長期的な戦略として、まずHUMAN MADEブランドを50年、100年続く日本発のグローバルブランドにしたい。国内では旗艦店の出店をベースに高効率事業モデルを盤石にする。同時に2年以内に海外現地法人を立ち上げ、本格的な海外展開に着手する。5年ぐらい前まで、日本人の20歳代の男性客がメインだったが、最近は顧客の性別、年齢は多様化しており、女性客は40%以上。海外も東アジアを中心に裾野が広がり、海外向け売上高比率は64%(国内のインバウンド向け含む)。国内はまだ小さな店が多いが、多くのお客さまに来ていただける大型店を展開し、まず、東京・原宿に旗艦店を出す。まだまだ国内で余白の地域があるので、出店していく。同時に海外では東アジア、東南アジア、アメリカ、中国といった国で需要を感じており、アプローチしていきたい。
新規事業やM&Aも意欲
HUMAN MADE以外でも、われわれのノウハウを応用、転用できる事業がある。クリエイターと一緒に新しい価値を創造するブランドを信じ企業として立ち上げたり、クリエイティブは良いけれど経営の基盤がうまくいっていない企業などと一緒になったりすることで、未来永劫(えいごう)続く日本のIPとしてやっていきたい。(HS)
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