9月末、SBIグローバルアセットマネジメント(SBIGAM、4765・P)と、SBIレオスひふみ(以下レオスひふみ)が統合を発表した。SBIGAMを存続会社、レオスひふみを消滅会社とする吸収合併方式を採用し、合併効力発生日の12月1日にレオスひふみの株式は1株当たり0.36株の割合でSBIGAM株式に交換・交付された。統合に伴いレオスひふみのグループ会社であるレオス・キャピタルワークス、レオス・キャピタルパートナーズ、フィナップ、Kiffyは、SBIGAMの子会社へ移行した。レオスひふみ創業社長の藤野英人氏に統合の経緯や狙いを聞いた。藤野氏は引き続きレオス・キャピタルワークスの社長を務める。
――9月末にリリースを拝見した時、意外感があった。上場会社としてレオスひふみの名前がなくなることに寂しさを感じる人も多い。統合の経緯をうかがいたい。
「ことの経緯はリーマン・ショックまでさかのぼる。リーマン・ショック時にほぼ経営破綻し、2009年にISホールディングスに持ち株を全て放出してオーナーでなくなった。この状況が結局2025年まで16年間ずっと尾を引いた」
「ISホールディングスは買収後、赤字を掘りながらも投資を続けた。2018年にISホールディングスの株式売却意向もあり上場することになったが、結果的に上場はいったん延期に。それを受け、彼らも資金需要があるため当社株式の譲渡を検討。ISホールディングスの遠藤昭二社長に『どこに売るかは君が選択して』と言われ、メガバンク系、生保系、SBIHDの3つを提示された。悩んだが、メガバンク系や生保系は社長が変わると一気に方針が変わる。このためコミュニケーションの相手が一人=北尾吉孝会長兼社長、かつ、時代が変化し今後金融業界で強い立ち位置になるであろうSBIがベストと判断した。SBIはその段階では『上場を目指してね。上場したら保有比率を下げていく』という考えを持っていた。僕らは早期に上場して会社の価値と株価を高め、SBIは保有比率を下げ売却益を得るシナリオは、お互いにとって良いものだった」
「最終的に2023年に上場したものの、アセットマネジメント会社のバリュエーションが世界的に低く株価がなかなか上がらず、もくろみが外れた。SBIGAMの企業価値も思うように上がらないことに悩んでいたところがあり、合理的に考えると2社を統合した方がいいということになった」
「統合により時価総額やAUM(運用資産残高)が拡大する。時価総額が大きくなると機関投資家が買わざるを得なくなり、パッシブ資金も入る。AUMおよび時価総額が拡大するとバリュエーションが向上するということがあり、合理的であるから統合したい――という話が今年7月ぐらいにあった」
――流れからすると不自然ではない。
「僕らからするともくろみが外れたし、SBIももくろみが外れたところもあるなかで企業価値と株価を上げるという面でみれば統合はベター。臨時株主総会でも株主から『統合は残念』という声を数多くいただいたがそれは創業者が一番感じている。自分が作った会社が、上場会社としては消滅してしまうことは大変残念なことだが、合理的に考えると株主の面でみれば株価が下がるより上がる要因の方が大きく、顧客にしてもSBIGAMの子会社になるので結果的にレオス・キャピタルワークスとひふみの名前を守ることになるし、SBIGAM全体で見るとAUMで公募投資信託業界8位の大手になる。業界大手の一員となれば社員の扱われ方や情報も変わってくる。株主、顧客、従業員にとって不利がなくプラス面が大きく、ネックが創業者などの感情的な苦しみだけならば受け入れざるを得ないという話」
「創業者として忸怩(じくじ)たる思いは当然あるが、企業向上、より良い未来のため、株主・顧客・従業員のためになる可能性が高いことなので合理的に判断した」
「コミュニティ志向」継続
“新生SBIGAM”各社特色生かし時価総額1兆円目標
――藤野さんからそのあたりの話が聞けて安心した。SBIGAMのなかでのレオス・キャピタルワークスの位置づけ、特色は。
「SBIグループの中でも僕らは良くも悪くも特殊。運用会社の中でも特殊。ひふみ投信に関してはすごく不思議なのだが、『ひふみを買った』という人はいない。多くが『ひふみに入った』という。他の金融商品で『入った』といわれるものはほんどないのでは。『グロソブに入った』など聞かない。ひふみはコミュニティファンドと認識されている部分があり、僕らもコミュニティ志向が強いところがある。もちろんパフォーマンスが悪いと結構怒られたりするし、パフォーマンスが悪いことを指摘する人もいるが、指摘する人の多くはメディアと顧客ではない人。顧客からは『ありがとう』の声が多く、残高も高水準。これはなぜかというとコミュニティだから。ここが結構大事なところでコミュニティとしての価値が守れるのであればどこにいようとも、守れないのであれば別を考えることだから、今のところそうしたことは大切にするといわれているからそれを信じてやろうというところ。コミュニティファンドとしての価値をしっかりと守ることが核心的に重要」
――大切にするといっているのはSBIHDの北尾吉孝会長兼社長、SBIGAMの朝倉智也社長も。
「二人ともそう。とはいえ当たり前だが、永遠に無限にそれが担保されるわけでないし、業績が非常に悪化するといったことになればテコ入れされると思う。価値を守るが、価値を守るには業績をちゃんと出すことに尽きると思う」
――統合の目的として企業価値向上があるとのこと。統合前の時価総額はレオスひふみが時価総額200億円超、SBIGAMが600億円超。単純合算で800億円超だが、『1+1が2になりました』ではつまらない。そうではない水準を目指しているからこその統合だと思う。藤野さんにお尋ねすることではないかもしれないが、統合後の“新生SBIGAM”の時価総額目標は。
「先日の決起大会で朝倉さんが冒頭のあいさつ、SBI岡三アセットマネジメントの森英世会長が乾杯の音頭をとり、最後に僕が締めのあいさつをした。そこで『僕はイチから始めて運用会社運用残高1.5兆円の運用会社をつくりました。今後は1兆円の時価総額を目指しましょう』という話をした。2社を足したら800億円ぐらいだが1,000億円ぐらいの価値に多分すぐなるから、そこから10倍になろうと」
――テンバガー! 運用資産残高の面ではいかがでしょうか。
「SBIGAM、SBI岡三アセットマネジメント、レオス・キャピタルワークスの3社合計で現在11兆円弱。北尾さんはもうけろではなく、残高を増やせと言い、AUM20兆円を目標に掲げている。この方針に則り、朝倉さんは残高がぐんぐん増えるファンドを探している。残高増加ならばMRF(マネー・リザーブ・ファンド)、債券ファンドなども視野に入るのだろうが、ただそのことそのものは自分がやりたいことと違う。ただ残高が大きいファンドを作りたいわけではない。ただその価値観が間違っているとは思わないから、協力して良いファンドを作って全体的に価値向上を実現したい。とはいえAUMが20兆、30兆円になっても収益が上がらないと株価は上がらない。価値のある良い意味で儲かるものを作り全体的にバランスの良い状態をつくっていくのがいいと思っている」(Q)

