BRANU(460A)が12月1日、東証グロースに新規上場した。初値は公開価格を68.8%上回る1,655円。中小建設企業向けのDX(デジタルトランスフォーメーション)プラットフォーム事業を展開。上場当日の記者会見で名富達也代表取締役(写真)が語った内容のポイントは次の通り。
“オールインワン”の建設DXプラットフォーム
2009年の創業時から一貫して中小建設業のDX支援事業を手掛けている。建設業界における集客や採用を目的としたWebサイトをノーコードで作成・運用できるSaaSの開発からスタートし、その後より建設業に特化した形でSaaSの機能を拡充していった結果、現在の建設DXプラットフォームへと進化した。収益構造も創業時はフローとストックの比率が9:1だったのに対し、現在はバランスよく6:4と成長性と安定性を両立できるビジネスモデルへ変革を成し遂げた。また、全国支店展開と国内最大手の建材商社である渡辺パイプ社とのアライアンスを経て、中小建設事業者48万社へリーチできる体制を構築した。
提供サービスは、建設マッチングサイト「CAREECON(キャリコン)」、統合型のビジネスSaaS「CAREECON+(プラス)」、成果報酬型求人サイト「キャリコンジョブ」の3つ。最終的には当社のサービスを利用すれば中小建設事業者の経営の大半を担うことができる、そんなことが可能になるオールインワンのプラットフォームを目指している。
高い参入障壁と独自のポジション
ターゲットとなる中小建設企業は日本全国に約48万社存在するが、これに対して当社の顧客は2,881社と獲得余地は非常に大きい。これだけ広範で魅力的なマーケットにもかかわらず、有力なコンペジター(競争相手)は存在しない。理由の一つが中小建設企業特有の参入障壁で、広告を打ってもリードが大量に来るわけではなく、かつ社長が現場に出ていることも多く会うことすらままならない、など接点を作り出すことの難しさにある。当社は16年かけてこれを突破する営業ノウハウと、契約後の伴奏支援を通じて顧客とのコミュニケーションを非常に重視する企業文化を築いてきた。
また、コンパウンドSaaSとして複数分野のプロダクトを提供している。それぞれの分野で単一のSaaSを提供するコンペジターはいるが、複数分野にまたがってプラットフォームとしてサービス提供しているコンペジターは存在しない。また、ほとんどが大手のビルダーやゼネコン・サブコンを対象にしており、当社のようにSMB(売上高10億円規模の中小企業)をターゲットにしているところは少ない。唯一無二のポジショニングであり、ビジネス展開上の大きな強みになっている。
AI活用プロジェクト始動
当社ほど広範囲の中小建設事業者との取引データを保有している企業は他にいない。データから最適な営業提案を行ったり、プロダクトに生かしたりといったことに活用している。現在は「BRANU BRAIN」というプロジェクトを発足し、生成AIやラグの活用によるAIエージェント化を目指している。例えばAIエージェントにプロダクトの活用方法や受注機会最大化のための最適な見積書の作成を依頼する、経営相談をするなど。現在は必要に応じて人のコンサルタントが介入しているが、これをどんどんAIエージェントに代替していく。最終的にはAIか人か区別がつかないレベルにまで昇華をしていきたい。
支店拡大と機能強化、新たな柱で飛躍的成長へ
成長戦略は、基盤拡充、プロダクト強化、新領域サービスの3つ。中小建設業者との接点の創出はフェイスtoフェイスのコミュニケーションが必須になるので、当社がまだリーチできていない、もしくはリーチの薄い地域を開拓していく。今期も金沢に出店予定。また、建材卸の渡辺パイプ社との業務提携も非常に重要な収益ラインに育っている。現在は同社の拠点全てをカバーすることができていないので、代理店販売に関しても支店の展開と組織の拡充を行っていきたい。プロダクトについては、中小建設事業者が持つ課題そのものである経営管理の機能を中心に開発し、アップセルの加速とチャーン(解約)の防止を図る。
「キャリコンジョブ」は業界特化型の採用プラットフォームで、今年5月にスタートした。今後力を入れて事業の柱にしていきたい。初期費用や月額費用が掛からない成果報酬型の報酬体系を導入しているので、SMBにとっても非常にコスト優位性の高いサービスとなっている。最終的には「キャリコンジョブ」と「キャリコンプラス」を連動し、プラットフォーム全体としてHRにかかわる全ての領域をカバーしていく。(SS)

