FUNDINNO(462A)が12月5日、東証グロースに上場した。初値は公開価格を42.4%上回る883円。同社は個人が未上場株式市場に直接アクセスできるプラットフォームを実装し、個人投資家にスタートアップの株を購入できる機会を創出。次世代産業を担うスタートアップに継続的なリスクマネーが供給できる仕組みを構築している。上場当日の記者会見で柴原祐喜代表取締役CEO=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
次世代金融プラットフォーマー
2015年設立。第一種金融商品取引業、第一種少額電子募集取扱業の資格を持つ。また、規制緩和などが重要になるため各種規制団体に参画している。われわれは次世代産業育成に向け国内リスクマネーの供給量をいかに高めるかという点に課題を置き、課題解決のため非上場株式市場を整備してきた。現在は非上場株式市場全般の機能開発を有し、次世代型金融プラットフォームの構築に注力している。具体的にはそれを実現するため「プライマリー領域」「セカンダリー領域」「グロース領域」の3領域を展開。プライマリー領域は個人投資家がスタートアップの株式を買えるようにする機能、セカンダリー領域は買った株式の流動化を実現する取引所機能、グロース領域は買った株式の管理機能などで、これらをプラットフォームに実装することでリスクマネーの循環を実現していきたい。
規制緩和追い風
環境整備を行う上で特に研究しているのが米国。1970年代から未上場企業への投資機会、リスクマネーの循環・拡大に向け改革が進んでおり、未上場株式市場の整備が米国で多くのユニコーン企業が誕生している背景の一つ。われわれは日本でも未上場株式市場の整備を行うことこそが次世代産業を担う企業の創出に貢献できると考え、強い思いで事業を進めている。業績は未上場株式市場の規制緩和により2023年10月期から25年10月期の3年連続で営業収益は100%成長。一方で販管費の増加率はこの3年間平均で8.4%にとどまり現時点で黒字化を実現している。26年10月期も増収増益を見込む。金融プラットフォーム化により量的拡大しても販管費の増加率は一定程度に収まる。
強み
上場株式市場は各社が分業体制の下、各機能が全て市場に実装されている。一方、未上場株式市場はわれわれが存在する前は、各種機能が存在しておらず、上場株式市場における機能を一つ一つ粛々と実装する過程が必要だった。中でわれわれは資金調達機能といういわば証券会社の機能を実装し、資金調達した後に発生するディスクロジャーや株主管理など従来は人手に依存していた煩雑な作業をDX(デジタルトランスフォーメーション)化し、さらに取引所機能を実装して現在に至る。これらをワンプラットフォーム上で全て実装しきっていることがわれわれの強み。
GMV・EXIT件数の増加に注力
成長戦略は主に2点。1つ目がGMV(流通取引総額)のさらなる拡大。現在の個人投資家中心から、法人投資家、機関投資家に拡大することで実現していく。また、投資家にとってのEXIT(出口)件数の増加がリスクマネーの循環の実現につながることからEXIT件数の増加にも注力する。これらがしっかりと実現できるようになると、投資家目線でスタートアップ株が買えて、管理でき、売れてという世界観が実現する。売れた後は再投資が期待でき、再投資が1回、2回、3回と繰り返すごとに乗数効果も得てマーケットも継続的な拡大が実現できると考えている。さらにリスクマネーの循環の実現は当社の金融プラットフォームの継続的な拡大につながる。例えばリスクマネーの循環の効果としてはネットワーク効果もあろう。投資家が投資家を紹介してくださったり、投資家が発行体を紹介してくださるなど既に効果が見られ、これも量的拡大を実現しても販管費を抑えられている一因。さらには投資家のCPA(顧客獲得単価)低下とLTV(顧客生涯価値)向上が図られる。こうした仕組みにより非上場株式市場・未上場株式市場の継続的な拡大に寄与していきたい。
上場株式市場との境目なくす
公開を機にあらためて責務の重さを感じている。次世代産業の育成を担う責務を負っていることを意識し、手段として証券会社、印刷、信託、取引所の機能を全て実装した次世代型金融プラットフォームの構築を実現していきたい。このプラットフォームを構築した暁には世界に羽ばたき、インストールをしていきたい。いまだグローバルでこうした全ての機能を実装した金融プラットフォームは存在していないと考えている。これらを実現できれば日本発の新たな金融プラットフォームのカタチを世界に示すことができる。こちらに強くコミットし、まずは国内の未上場株式市場を整備し、上場株式市場との境目をなくしていく。それが次世代産業の育成につながり、こうしたモデルを世界に展開していくことで当社が掲げる「フェアに挑戦できる、未来を創る。」にもアプローチしていきたい。
東証の上場基準変更で存在感
このタイミングで上場するのは黒字化の実現に加え、仲介会社や監督官庁からの期待の高まりも背景。東証に上場基準変更の動きがあり、これに伴いIPO件数が低下傾向にある。こうした状況は非上場株、IPO間近のレイター企業件数の増加につながり、資金ニーズの規模感も増している。非上場株式市場を健全に発展させる必要性が高まる中、当社自身が公開し、市場の厳しいご意見をいただきながら成長していきたいと考え、公開の意思決定をした。
一強他弱
「FUNDINNO PLUS+」はIPOの事例はないが、本格開始から1年強ですので今後に期待いただきたい。予定通りいけば控えているものもある。買い取り事例は1件。「FUNDINNO」ではプロマーケットに2件が上場を果たした。それ以外は上場会社へのM&Aや一部買い取りなど12件。過去は競合企業がいた。現在は当領域において当社のシェアは「FUNDINNO」であれば95%、「FUNDINNO PLUS+」は25年は100%。プラットフォーマーの宿命の一つで、いわば一強他弱の状況。(Q)

