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IPO2025年12月19日

IPO社長会見 ミラティブ 一般的なライブ配信アプリにあらず

ミラティブ(472A)が12月18日、東証グロースに上場した。初値は公開価格を12.6%下回る751円。同社はスマホ一台で簡単にゲーム実況ができるアプリ「Mirrativ」の開発・運営が主力。上場当日の記者会見で赤川隼一代表取締役最高経営責任者=写真=が語った内容のポイントは次の通り。

日本最大級のゲーム配信アプリ

ゲーム実況領域は巨大なゲーム産業の中でこの10年ほど大きな存在感を放っているエンターテインメント。従来、ゲーム実況するには非常に手間がかかっていたが、当社は手元のスマホだけで簡単にできるようにした。これにより支持を得て、「Mirrativ」は日本で最大級のライブ配信者数を持つプラットフォーム、日本最大級のゲーム配信アプリとなっている。

ミルフィーユ構造

ユーザーが気軽に配信できるため、互いに配信し交流し合う配信者のソーシャルネットワークサービスの側面があり、互いにギフトしあう構造。アクティブ配信者数は現在11万人以上。2018年、19年、20年など昔入会したユーザーの売り上げが時を経ても落ちず、ミルフィーユのように積み上がっている。ユーザーが“居場所”と感じて長く使い続けているためで、これが安定的成長が続く礎となる。

SNS性・相互流通性が強み

売り上げの中心はユーザーが配信中に贈るギフト。一般的なライブ配信サービスと似通っている点と、独自性のある点がそれぞれある。ライブ配信中に視聴者がギフトを購入し配信者にギフトする点は一般的なライブ配信と同じ。一方、多くの配信サービスはファンがアイドルやスター配信者にギフトする一方向のサービスであるのに対し、われわれはお互いが配信をし合うSNS(交流サイト)的なサービスのため、受け取った配信者が別の配信者にギフトし、サービスの中で経済圏が回っている構造。この相互流通性がビジネスモデル上の大きな強み。

高テイクレートでも利用継続の訳

ユーザーがギフトをし合う構造が、(一般的なライブ配信サービスとの)利益率の差を生んでいる。サービス利用のきっかけはゲームの友だちをつくりたいというカジュアルなもののため、必ずしもお金目的で配信しているわけではない。結果として配信者へのギフト収益還元率は8.7%と一般的なライブ配信サービス(50%前後)に比べ低いが、ユーザーは“居場所”としてサービスを利用し続けている。この利益率の差分が競争優位性。ゲーム実況は収益がなかなか上がらないことが世界的に課題だったが、当社は利益率の差分を独自コンテンツに投資することで収益を右肩上がりで積み上げている。

スマホゲームトップ30社中26社と連携

ゲーム会社との連携でユーザー獲得できることも特徴。Mirrativで配信されると、ゲームの売り上げ・継続率が明確に上がるというデータが出ている。スマホゲームトップ30社中26社が連携してくださっており、結果、マーケティングコストはあまり掛かっていない。

ライブゲームで世界トップランナー

ライブゲームもユニークな点。ライブゲームはゲームとゲーム実況が融合した新しいゲーム体験。ゲーム実況では視聴者は見るかコメントをチャットするだけだった。ライブゲームでは視聴者が配信者にアイテムをプレゼントしたり、配信者のゲームプレイに介入できる。この領域で当社は世界トップランナー。ヒット作も出てきているが市場黎明期でありいち早く大きなヒット作を出してサードパーティが出て来る循環をつくりたい。

成長戦略

既存事業の売り上げ拡大とコスト低下、新規事業による積み上げにより成長を図る。一人当たり売り上げは右肩上がりながら2万円弱。ライブ配信サービスの上場会社は3万円台が多く、大きな成長余地がある。コスト面はサーバーコスト比率や決済手数料率が低下していく。新規事業では今後はYouTube、Twitch、特に伸びているVチューバーに対してこれまで培ったアセットを横展開していく。具体的にはゲーム会社とのネットワーク、ライブゲーム、アバターなどのアセットをYouTubeなどで活躍しているVチューバーに提供していく。

初値の受け止め

市場の評価を受け止めた上で、ステークホルダーと向き合い中期的な価値向上を目指す。われわれのサービスは分かりづらい部分がある。競争優位性を含め、市場にきちんとお伝えしきれていなかったと感じており、今後のIRなどを通じて強みや特徴、成長性などを説明していきたい。一般的なライブ配信アプリと全く異なる点(双方向性や収益還元の構造など)を正しく理解いただくことがまず重要と考えており、まだまだコミュニケーションが必要と考えている。

事業ポテンシャル

一人一人が自分の好きなものの推し活やナラティブ(物語)を体験する時代とリンク。スマホの画面をミラーリングしながら自分の好きな物語を語っていただくということで「ミラティブ」と名付けた。1.6兆円の日本のスマホゲーム市場はだいたい4,000万人で構成され、おらそら1.6兆円の8~9割は300万~400万人のヘビーゲーマーで成立。配信のうまい下手やスター性と関係なく利用できるコミュニケーションサービスですので、いかにヘビーゲーマーに居場所と思ってもらうかがカギ。(Q)

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