アイティフォー(4743・P)は全国各地の地域金融機関や地方自治体、地方百貨店などにさまざまなITソリューションおよびサービスを提供し、地域経済の活性化に貢献してきた。特に地方銀行向けの審査・延滞債権管理パッケージシステムの導入シェアは圧倒的だ。そして直近で加速しているのがCVC投資。地域産業の活性化につながるスタートアップに積極投資している。また耕作放棄地の棚田の保全活動など、地方創生の活動にも取り組んでいる。現況と今後の戦略を坂田幸司社長に聞いた。
自前主義から共創主義へ、企業価値を上げる
――昨年来、積極的にCVC投資をしているが、その背景は。
坂田 「我々が地方を訪問した際、皆さんが共通に言われるのは『インバウンド(訪日外国人観光客)は増えているが、地域経済への波及効果は限定的だ』という悩みだ。そのためインバウンドに関係した地域の企業が潤うような有力なスタートアップへの出資を増やした。例えば昨年、観光地や商業施設の混雑状況をリアルタイムに可視化する技術をもったVACAN(バカン)社だ。観光地の店舗やトイレなどの混雑を可視化すれば旅行客が回遊しやすく混雑が分散される。沖縄で交通渋滞の可視化実証実績を実施したほか、インバウンドが急増する、ある地方自治体でも導入を検討中だ。同市には有名な酒蔵をはじめとする観光資源が点在しており、観光客の回遊性が高まることで、国内外から観光客が増加し、地域消費も拡大する。また同じく当社が出資するPayke(ペイク)社のソリューションは商品バーコードを読み取ると母国語で商品説明が表示される。酒蔵や土産物店での接客負荷の軽減、購買回転率も向上する」
「さらにWAmazing(ワメイジング)社は、訪日外国人旅行者向けに、リフト券・レンタル・レッスン・宿泊等を組み合わせたスキー旅行商品の販売で実績がある。大きな手荷物を持たず活動できるよう、ホテルや空港での受け取り、購入品の荷造り支援などのサービスで買い回り促進につなげる。ECショッピングとの連携により、外国人が大型の荷物を持ち歩くことなく気軽に買い物ができれば購入額の拡大が期待でき、地域内消費増へ直接貢献度が高いと考えている。同社は、今年11月の免税制度変更を見据えて買い物をしやすいシステム開発を進めている」
――在留外国人向け金融サービス会社にも出資していますね。
坂田 「GIGABANK(ギガバンク)社という外国人就業者の口座開設をサポートするスタートアップへ出資した。日本国内の外国人労働者は2024年の205万人から2030年には336万人へ増加すると予測されているが、国際居住者が移住先で銀行口座開設やクレジットカード発行を行う際の本人確認や審査には依然として高いハードルがある。同社は移住先でもシームレスに金融サービスを利用できる『Trust API』、『DIDウォレット』基盤を展開しており、この提携を通じて、地方銀行向けオンボーディング、金融IDサービスを共同開発し、地方銀行における外国人顧客の口座開設、審査業務の効率化を目指す。当社の既存顧客である地方銀行への付加価値提供と、外国人労働者の国境を越えた金融サービスへのアクセスという社会課題の解決を同時に推進していく」
――CVC投資の対象企業は観光関連事業が中心ですか。
坂田 「地方で共通する悩みはインバウンド増加の恩恵が限られていること。そこで当社の顧客基盤である地域金融機関、地方自治体、地方百貨店とインバウンド需要を結び付け、地域内消費を増やす施策が必要だ。自前主義では限界があるのでCVC投資を通じたスタートアップとの共創を強め、実証から導入、事業化までを推進していく。政府は2030年にインバウンド6,000万人、消費4.4兆円(24年度実績は3,686万人、2.4兆円)の目標を掲げており、観光産業の活性化は地域経済にとって大きなチャンスだ」
「26年3月期のCVC投資は4社。日常的に多くのスタートアップ経営者と面談や協議をしているが、斬新なビジネスモデルと意思決定のスピードの速さにはいつも刺激をもらっている」
――地方創生やCSR活動にも積極的ですね。
坂田 「昨年5月に熊本県阿蘇市の『阿蘇水掛の棚田』で、社員ボランティアによる棚田保全活動を実施した。約50名の社員やその家族も活動に参加し、田植えをした。今年も同規模での実施を予定している。耕作放棄地となっていたこの棚田は、公益社団法人『肥後の水とみどりの愛護基金』によって、地下水涵養を目的とした水田湛水事業が行われており、当社は、この基金への寄付を通じて活動を支援している。このほかに寄付・スポンサー事業として法人版ふるさと納税(高知・青森等)、小中高生向けのプログラミング大会、電気通信大学などのサイバー系大会への協賛など、地方やIT領域に関する支援を今後も継続的に進めていく」
「また、九州・西日本事業所、本社でもオフィス改善を行うなど、社員が働きやすい環境構築に努めており、入社3年目までの定着率が93%と、着実に投資の成果につながっている」

