チャーチル・フランクリンCEOが語る日本でのビジネス展開

■アカディアン・アセット・マネジメントLLCのCEOチャーチル・フランクリン氏
アカディアンの日本における投資についてはこれまで長い歴史を持っている。また、日本のお客さまにもかなり古くからサービスを提供している。そして、このように東京にオフィスを開設するに至った。その理由としては、われわれがこれまで続けてきた長期的な努力をさらに強化して、これまでのお客さまにより良いサービスを提供し、新たなお客さまの獲得を目指していきたいと思うからだ。日本におけるチャンスは非常にエキサイティングと思っている。日本以外の海外ではシンガポール、ロンドンにもオフィスを構え、シドニーでも合弁事業を行っている。東京のオフィスというのは、われわれにとっては初の英語圏以外でのオフィスとなる。ちょっとしたアドベンチャーだ。ここで大きく伸びていくチャンスを楽しみにしている。われわれの歴史をご紹介したい。アカディアンは、1986年に4人で創設した会社だ。私もその1人だ。東京での顧客には10年以上サービスを提供している。それ以降、われわれは着実に資産を拡大してきた。われわれがアピールしたい点は、非常に革新的でグローバルなアイデアを世界中の市場に提供したいということだ。現在、40カ国にお客さまを持っている。オフィスは4カ国にある。そこではグローバルの株式市場を対象として、ストラクチャーのしっかりとした、規律のしっかりとした、またシステマチックなアプローチを、世界中の顧客に提供したいと考えている。こういったアプローチで事業を拡大してきて、現在では運用資産が700億㌦に拡大している。
その運用の方法としてはいくつかの戦略がある。われわれがやろうとしていることは、通常の市場にあるやり方とは若干違っているかもしれないが、常に新鮮な目でもってビジネスをとらえようとしている。日本人の投資家の方々も、現在では日本以外の投資会社に対しても非常にオープンになってきており、われわれにとっても、こういう機をとらえて、さらに日本のお客さまとの関係を強化し、日本でのビジネスを拡大していきたいと考えている。これまでのところわれわれに対する評価も非常に良く受け入れていただいており、日本でも優れた、才能ある人材を獲得できている。
われわれが特に非常に興味深いと感じていることは、日本の市場の声に耳を傾け、いったい市場の中で何が起こっているのかというのを、直接、市場から情報を収集して、それに対する要求にお応えすることだと考えている。現在、日本の市場では、ほかの市場でも同じだが、市場の中で顧客セグメントによって、リスクを増やしたいと思っている顧客セグメントと、リスクを下げていきたいと思っている顧客セグメントが同時に存在しているというストレスに直面していると考えている。
そういった環境の中では、われわれが持っているマネージド・ボラティリティ戦略(低ボラティリティ戦略)が非常に有効だ。この戦略の特徴は、例えば、グローバル株とエマージング株と両方を絡めて、トータルのボラティリティのリスクを低下していくという戦略だ。
■アカディアン・アセット・マネジメント・シンガポールのシニア・ヴァイス・プレジデント/APAC代表リチャード・バリー氏
アジアはわれわれのビジネスにとって非常に重要な地域と認識している。われわれはこの地域をどのようにカバーしていけばよいのかについて、定期的に評価をするようにしている。その際、ハブ・アンド・スポーク・システムというものを使っている。これは、その地域においてハブになるところを決めて、例えば、シンガポールを中核にマニラや香港などほかの都市をカバーするというようなシステムでやってきた。それで、それぞれの既存のお客さまや新規のお客さまなどをカバーしていく、これが非常にうまく進んでいる。日本において、われわれが今後どのように機能していくか、どのような戦略を持っていくかということを評価した結果、日本にオフィスを構えて、そこからソリューションを提供していく方が非常に有効だと考えた。投資運用業のライセンスを取得し、これがわれわれの戦略にとって不可欠な要素となって、これで、日本において新しいタイプのビジネスを展開していきたいと考えている。われわれは、年金のお客さまや提携先などいろいろ日本について学習してきたが、われわれの戦略を介して分散投資の機会を提供していきたいし、提供していけると考えている。今までの時価総額加重のベンチマークという投資から離れて、新たな戦略を使って投資するというソリューションをぜひ提供していきたい。それはマネージド・ボラティリティ戦略などだが、要は、これまでより少ないリスクを取りながらベンチマークと同等、あるいはベンチマーク以上のリターンを追求していくような戦略を提供したいと考えている。
■アカディアン・アセット・マネジメント・ジャパンのヴァイス・プレジデント/ポートフォリオ・マネージャーの山崎博章氏
一般の株式ファンドでは、時価総額ベースでのベンチマークに対するトラッキングエラー(ポートフォリオのリターンと ベンチマークのリターンとのかい離の大きさを示す指標)を例えば3%から5%の間に保ちつつ超過リターンを目指すという運用が今までの主流だった。われわれが現在提案しているマネージド・ボラティリティ戦略は、対ベンチマークでのトラッキングエラーではなく、絶対リターンのブレ(ボラティリティ)がなるべく低くなるようにリスクをコントロールしながら極力高いリターンを目指すという戦略だ。対ベンチマーク投資では、トラッキングエラーの上昇を避けるため、小型株は組み入れにくく、また逆にベンチマークでのウエートが大きい大型株は嫌だと思っていてもある程度組み入れなくてはならないことがあるが、そういう縛りから解放されて、真にお客さまにとって効率が良いパフォーマンスが提供できる利点がある。低リスクだと低リターンではないかと思われるかもしれないが、実際には、低ボラティリティのポートフォリオは、時価総額ベースのベンチマークと比べて事後的にはほぼ同じぐらいのパフォーマンスが期待できるということが経験則だけでなく、アカデミックな分析からも示されており、それならボラティリティは低い方がよいわけだ。時価総額ベースのベンチマークにとらわれない自由度の高い運用で、より効率の良いパフォーマンスを提供したい商品といえる。われわれはこの戦略を2006年からグローバルでやっており、実績も良好だ。(T)[本紙4月3日付12面]