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コラム2021年9月13日

Digital版専用・完全版テキスト 億り人 Zeppy 井村 俊哉 が聞く!!<第4回> 井村氏×ココナラ 鈴木歩代表取締役社長CEO

凄腕個人投資家で、中小企業診断士でもある井村俊哉さん。上場企業トップを直撃して魅力を探るシリーズ第4弾は、今年3月に新規上場したココナラ(4176・東マ)の鈴木歩社長がお相手。個人の知識やスキルをオンラインで売買できる「サービス版のAmazon」を目指す鈴木社長と本音満載のトークを繰り広げた。

――自分の第一印象を申し上げさせていただきますと、シンプルに『儲かりそう』。このビジネスモデルは面白いなと上場前からチェックしていたので、今年3月に上場したときには、とうとう来たな!!と。言うなれば『サービス版のメルカリ』。ご自身ではAmazonとおっしゃってますけれども、CtoCであり、マッチングであるという点で。なにより『スキルのシェア』という切り口、えげつない!! と思いましたね。想像力次第で在庫は無限大。メルカリは家にあるものしか在庫になりえないんですけど、アイディア次第で無限に商品点数を増やせちゃうんですから。

「ありがとうございます」

――しかもテイクレート(手数料率)が20%台後半という。目論見書を読めば読むほど、やっぱり儲かるな、と。 …ただ。最初にコレを聞いたら怒られちゃうかもしれませんが…。

「なんですか? 身構えちゃいますね」

――上場直後に投資家界隈が結構ザワザワしたことがありまして。創業者の南さんがツイッターで『IPOのおかげでマンションが買えた』と発言して『俺たちは財布じゃねえぞ』と。資金使途は個人の自由ですし問題ない行為ではありますが、危機管理という意味ではどうなのかなと少し疑問を感じました。

「皆様を混乱に陥れたことは本当に申し訳ないと反省しております。場で売ったと勘違いされてしまったこともありますが、そもそも、上場企業の役員として皆様の気持ちをざわつかせるということ自体がまずいよねという話を社内では既に共有しておりまして、以降はツイッターの管理などを厳格にルール化しました」

――そうですね、今後はザワザワしないように…。ということで、本題に入りましょう!! まずはビジネスモデル。どんな商材が売れてますか?

「大カテゴリーを16個、『制作・ビジネス系』と『相談・プライベート系』とに二分していますが、制作・ビジネス系では『イラスト・漫画』と『デザイン』の売上が高く、相談・プライベート系では昔からやっている『占い』が強いです。『Webサイト制作・Webデザイン』や『動画・アニメーション・撮影』もトップ3に近い規模まで育っています。ちなみに『成長率』でいくと、すべてのカテゴリーが伸びている、という状況です」

――特定のカテゴリだけがグーンと伸びている、はない?

「実はカテゴリーは細やかにメンテナンスしていて、伸びているカテゴリーに統廃合する、新しい需要が出てきたら新設するみたいなことを都度やっていますから、今残っているカテゴリーはどれも将来的に伸ばしていくぞ!! というつもりでおります」

「あえて言うなら制作・ビジネス系は既にオフラインでいろいろ行われているものでオンラインに置き換えやすいのですが、相談系は占い以外、例えばキャリアの相談はお金を払うという文化がまだ日本では薄く、ビジネスとして伸ばすのには時間が必要」

――資料を拝見するとビジネス系は伸びていますが相談系は止まっているように見えます。

「前提として、僕らは『すべてが揃うサービスマーケットプレイス』を目指しています。ビジネス系か相談系か、出品者さんか購入者さんかなどとは意識せず、すべてを伸ばしていきたい。そんな中で、短期においては制作・ビジネス系が既にマーケットとして存在しているので、これをオンラインに置き換えていくは、やりやすく、優先度が高い。一方の相談系については、マーケットや価値観を作りながら中長期的に伸ばしていくということも、ぜんぜん諦めていません」

――業績に季節性はありますか? 四半期ごとのGMV(販売総額)を見ると2Q(12~2月)が弱いという気がします。

「今は全体の6割ほどが制作・ビジネス系なので土日や年末年始に弱い。2Qは年末年始を挟む影響で凹みますが、逆に土日や年末年始は相談系の割合が増えるので、今後は相談系が伸びてくることで補完関係が築けると考えます」

――4Qが強い気も。テレビCMを期末に打つからですか?

「確かに2017、19、20の3年間は期末にCM打って伸びました。2020年はコロナの影響もあります。5、6月あたりから出品者さんが真っ先に増えて、その後一気にビジネス利用が増えました」

――コロナの特需が、あった?

「特需というよりは『一段底が上がった』。特需は一過性ですけど、我々は戻りはせずにベースが上がったという感じ。非対面・非接触というトレンドの中でオンラインを試してみたら『思いのほか便利だね』と言っていただけている」

――決算説明資料の中でもっともゾクゾク!! と、惚れちゃいそうになったスライドがありまして、それが年度別登録者ごとのGMVです。とりわけ出品者サイドは本当にきれいに過年度の方が、リピートというか、もうハマっちゃって『使いたくてしょうがない!!』という状況になっているのがわかる素晴らしいものだと思いました。そこで、細かいことなんですけれども、これは、過去に使ってた人たちが離脱しないで継続した結果なのか、一人あたりの出品額がドンと伸びたのか。どちらの寄与が大きいのですか?

「SaaS型ではないので多少のチャーン(離脱)はあります。しかし、それよりも一人あたりの販売額が伸びていくことの方が大きいから、こういう結果になっている。なにより我々が扱っているスキルは『サービス』ですから、モノとは違って『売り切れ』という概念がない。評価は、売れたときに付き、付けば付くほど売れやすいので、ココナラは、サービスが売れて活躍されている方ほどリピートするという構造になっています」

――いいですね!! 売り切れの概念がないって、ヤバイですよ。『品薄なんです入荷待ちです』が、サービスだから発生しないし、一回ヒットしたら繰り返し使う人たちも増える。結果、過去の人たちの出品額が上がっているって、すばらしい傾向ですね。

「まずは副業として始めて、売れるんだったらもっとやっていこう、と。本業になれば対応枠が増えますから、そういう意味でも余力はまだまだあります」

――出品者の継続率はどのくらいですか。

「数字は開示していません。カタチとしては、初年度が一番落ちやすく、次年度以降だんだん緩やかになっていく。ただ、チャーンよりも登録される方の方が断然多く、UU(ユニークユーザー)がものすごく積みあがっているこのモデルを、我々は崩れないようケアしていきたい」

――チャーンに関する数字はできる範囲で開示してほしい。

「我々としては販売できているユーザー数が増えているかどうか、UUの伸びが鈍化していないかに注目していただければと考えています。購入者のニーズ、つまり、売れ筋は絶えず変わりますから、チャーンを気にしすぎてもいけない。もちろんココナラにせっかく登録してくださった出品者さんへのサポートは最大限に続けますが」

――続いて購入者について。拡大する出品者サイドに対して、こちらは購入額を増やしているようには見えない。

「購入者の方々も一定チャーンはします。が、残ってくださっている購入者の購入額が増えていくところと、ちょうどバランスが取れていている、という状況です。実はこの状況そのものがユニークなんです。海外で同様のサービスを展開している企業は明らかに右肩下がり。しかし我々は基本的にはキープしていて、そこに新しい年度の流通高が乗るという、ある意味『リカーリング型』。良い伸ばし方だと思っています」

――テイクレートの改定について教えてください。今年4月、購入者からはゼロだったものを5%に、一方で出品者向けは販売額に応じて25%程度だったものを一律20%に引き下げましたが、その意図は?

「テイクレートを上げたいからではなく、結果として多少は上がってるんですけれども、そもそも我々はツーサイド(売り手、買い手)のマーケットプレイスをやっている中で、フェアな取引を実現したいという発想があります。出品者と購入者の双方から手数料をいただくモデルの方が我々の思想に近い」

――大口の出品者にとっては引き上げになります。『ナゼ?』という声はありませんでしたか?

「丁寧にご説明したので、これをきっかけに離脱された方はいらっしゃらない」

――ちなみに大口の方の売上はどれくらい?

「億まではいきませんが、年間1,000万円を超える方は普通にいます」

――テイクレートに戻って。自分でGMVと売上収益から計算すると28、29%ぐらいになるのですが。

「出品手数料25%は全体に適用しているのでなく、サービス種別に応じて異なり、電話形式の場合は50%近くに。もう一つ、我々のサービスはココナラだけでなく『ココナラ法律相談』もありますが、広告掲載課金型なのでGMVにはヒットしません」

――ココナラ法律相談のウエートは?

「まだ全体の10%に満たないぐらい。しかし伸びているので、今後は別途、開示します」

――テイクレートの件、さらに高められる余地があるのか、それとも下げていく考えなのか。

「既に申し上げた通り、テイクレートの引き上げではなくココナラは、すべてが揃うマーケットプレイスとして世の中に浸透していくことを志向しています。ただ、ビジネスの拡張性を考えたときに、例えば出品者向けの広告機能は今、非常に求められていますから、これは既に検討を始めています」

――業績について。3Qから4Qの売上が横ばいの予想ですが、広告投下をされるのにGMVが伸びないとお考えなのか、コンサバなのか?

「テレビCMの開始は4Q末の8月14日からです。効果は翌期以降になると想定しています。多少コンサバなところが残っているのも否めません」

――広告ですが、費用対効果が落ちているような気がします。

「落ちていないどころか、ここ4、5年で高まっています。ユーザー獲得経路が2つあり、ひとつは毎年のテレビCMで、新規ユーザーがどんどん底上げされている。もうひとつはウェブ広告、3年ほど前から代理店ではなくインハウス化したのだが、コストは変わらないまま獲得ボリュームが4年で4倍ぐらいになった」

――最後にリスクについて聞きたい。コロナ禍で成長率が若干お化粧されているように自分は感じていて、今期は売上高で52%増を計画しているが、来期以降については30%超といった漠然とだがイメージを持っている。

「具体的な数字は想像にお任せします。ただ、昨年の4Qで『一段底が上がっている』。特需は一過性だが、我々は戻らず、ベースが上がったまま。以降の伸び方はナチュラルなものですし、キープしていきたい。加えて大規模なマーケティング投資もしますので多少プラスアルファを乗せられるかも、といったことでご理解いただけるといいかと」

――2つめのリスク、大口の出品者が直取引を始めてしまうこと、これを減らす施策は。

「基本的には機械学習の仕組みを入れていて、ユーザーさん同士がコミュニケーションをとるときにNGワードを判別できるようにしています。もちろんよく利用されている出品者、購入者が抜けていないか統計処理していますから、異変があればきちんと見に行く。ユーザーさんと直接コミュニケーションをとる部隊も持っています」

――コンテンツの管理はどこまでできていますか。非常にむずかしいと思うのですが。

「出品サービスはすべて明文化・ルール化していますし、大手の法律事務所に入ってもらい毎月、法令順守のアップデート状況を見ながら中身を変えています。これなら大丈夫というお墨付きをいただいたマニュアルを更新して作り続けていますし、消費者庁とも定期的に協議しています。さらに、これらのマニュアルを見ながらサービスを全件チェックしています」

――チェックを漏れなく? 無理でしょう?

「できますよ。専門チームが新規出品時にすべて見ていますし、後でサービスの中身を書き替えたら、それも見ます。さらに機械学習を入れてNGワードなど法令順守できてないものを洗い出すなど、だいぶ丁寧に対応しています」

――これで本当に最後。事業のミッション、ビジョン、この事業をどういう風に育てていきたいといった夢の部分を聞きたい。

「大切にしてることと、目指しているところ、があり、大切にしていることは3つ。『一人ひとりが「自分のストーリー」を生きていく世の中を作る』とウェブサイトに掲げていて、言い換えると、個人が世の中とつながっていくための手段を提供していきたい、と。チャレンジしたい人が機会すら与えられないのは不幸じゃないですか。ココナラはその場を提供していきたい。出品者、購入者、プロ、アマチュア、プライベート、ビジネス関係なく皆さんを応援していく。2つ目は『制約からの解放』。時間や場所、妊娠、退職など、すべての制約が、人と世の中との接点を減らすようなことをなくしたい。3つ目は、既にお話した『フェアな取引』です」

「そのうえで『目指すところ』。まずは3年でサービスECの世界の中で圧倒的ナンバーワンになり、次の2年で日本におけるサービスのマッチングの概念を変える。価値観を変えるためにはマーケットリーダーであらねばなりません。そのうえで、できないことがない揃わないものがないという状態を次の5年間で。そんな姿を10年かけて目指していきます」

――人の可能性を広げるという、ココナラの事業の社会的意義を強く感じましたし、10年後の姿を想像してワクワクもしました。ちなみに自分は芸人を10年くらいやったけれど可能性を解放できなかった。ココナラさんにもっと早く出会っていればもうちょっと続けていられたかも…。本日はありがとうございました。