ASEANも成長ドライバーに

―まず上場20周年、2部上場10周年を迎え今中間期には記念配当も実施されます。この20年を振り返ってのご感想を。
望月 1995年に当時の店頭市場(現JASDAQ)、2005年に東証2部に上場した。もちろん、2部にとどまるつもりはなく、上のステージを目指していく。事業環境の変化に伴ってラックランドも改革を進めてきた。次の10年に向けての最低限の土台作りがこの10年でできたと思う。10年前は食品と外食業界が主要ターゲットだった。しかし、外部のマクロ指標である、内閣府が発表する景気ウォッチャー調査(街角景気)DI(景況感示す現状判断指数)で外食・小売産業とともにラックランドの業績も左右されていた時期があったことから、事業分野の偏り過ぎを改革する土台作りを行ってきた。店舗部門は全体の売上高の7割を占め、そのうち6割から7割を食品フードが占めており、ここを増やしながら事業領域の拡大に努めた。
―今12月期も2ケタ増益継続を見込まれ、最終益ベースでもピーク益更新予想です。業績好調の背景は。
望月 単体で400名、連結で450名の社員の中には建築専門家、大型冷蔵設備に強いなどスペシャリストがそろっている。いわば専門家集団のモールだ。そのため、トータルでの受注ではなく、「空調設備のみ」「電気設備のみ」といった部分的な仕事が受注できる強みがあり、これが実際に拡大している。16年春の開業を目指し、仙台駅東口の延床面積約10万平方㍍の大規模開発が進んでいるが、ここでも建築、設備、内装で関わり、顧客に認められている。さらに、上を目指すためにも技術者育成の教育に力を注いでいく。また、事業の発注条件には上場会社指定の項目を持つ顧客も多く、これも当社の追い風として働いている。
―中でフードシステムについてはホテル、ウェディング施設、商業デベロッパーに、そして食品加工センター、店舗配送物流施設へ営業領域が広がっています。
望月 温泉施設、駅、大学のキャンパス内など人が集う場所にビジネスチャンスがあり、これが当社の強みの一つである専門家集団の活躍の場となり、事業領域が広がっている。スーパーマーケットでも50店舗以上のチェーンを持つ企業は改装を積極化する元気もある。一方、こうした企業は卸・物流分野を持つところも多く、当社が得意とする物流の冷凍冷蔵設備案件が活性化している。消費者が集うフロントの店づくりからバックヤードで働く従業員の労働条件に配慮した物流環境づくりまでをトータルにカバーできることが、相乗効果を生み始めている。
―15年度を最終とする10年計画は「未来への基盤作り」とされました。16年からの10年計画では「世界で求められる企業への進化」を想定されています。海外展開の抱負をお聞かせください。
望月 シンガポール、カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナムに続きインドネシアにも現地法人を設立し、ASEAN(東南アジア諸国連合)地区に6つの現地法人ができた。昨年の海外売上高は約2億円で黒字化も達成している。この海外売上高を来期には10億円規模、10年後は50億円規模に育てたい。日系企業の大手小売り・流通企業のASEANへの進出意欲は強く、当社もデベロッパーのパートナーとしてビジネスチャンスをつかみに行く。
―年2回の株主優待は震災復興を目的として石巻・女川の物産品を導入されているほか、今夏には宮城県岩沼市で集団移転地内の大型商業施設の竣工を予定されるなど東北復興に貢献されています。
望月 国内拠点の一つとして、当社も仙台に支店を持っている。被災した東北の食品加工施設は多く、さまざまな相談を受けており、地元で信頼される存在になる努力をしている。東北では、被災した企業が自力で立ち上がることができるお手伝いをしている。こうした努力を認めていただき、集団移転地の大型商業施設の受注にもつながっている。
―今後のラックランドの成長イメージと株主還元方針をお教えください。
望月 商業施設デベロッパーの仕事を底上げしていく一方で、物流を含めた分野を開拓していく。建築設備など事業メニューも増やし、そのためのM&A(企業合併・買収)もチャンスがあればトライする。また、昨年から始めたビルメンテナンス事業もストック型のビジネスであり育てていく。さらに、次なる10年のスローガンである世界でも期待される企業として、海外事業を伸ばし売上高規模で300億円を下回らず、売上高経常利益率4%以上の企業体制を構築していきたい。株主還元については、安定配当を前提に利益率を上げることが王道だと考えている。また、利回りについては、長期金利以上を念頭に置いている。
【記者の視点】
ラックランドは前期の19%増収、23%経常増益に続いて、今15年12月期も売上高275億円(前期比9.4%増)、営業利益6億8,000万円(同13.5%増)、経常利益7億2,000万円(同10.7%増)、当期純利益4億円(同18.5%増)の増収増益を継続する見込みだ。最終利益は連続で過去最高益を更新する。さらに、増配、株主優待の拡充と株主還元も積極的。昨年12月高値1,769円から時価は1,500円近辺(売買単位100株)まで調整したが、週足チャートをみると、昨年から一貫して上昇する13週移動平均線との乖離も修正されている。企業成長力と近い将来とみられる東証1部指定を加味すれば、新波動に移行する期待は高い。

[本紙3月16日付18面]