目標リスク水準の異なる3タイプから選択

国際投信投資顧問が昨年11月14日設定・運用を開始した、3カ月決算型の「スマート・クオリティ・オープン(安定型)(安定成長型)(成長型)」(愛称:スマラップ)と、今年1月30日設定・運用を開始した、1年決算型の「スマート・クオリティ・オープン(安定型)(安定成長型)(成長型)1年決算型」(愛称:スマラップN)に対して資金が着実に流入している。3月24日現在で純資産残高は合計700億円を超えている。同ファンドは、「ラップサービス」(投資一任契約に基づく運用業務サービス)などでのアセットアロケーション(資産配分)のノウハウを活用するファンドだ。同ファンドの特徴や仕組み、強み、魅力、活用方法などについて、同社商品開発部長の大久保隆氏に聞いた。
■ラップ投信投入の背景
日本の場合、これまでのデフレ環境下ではあまり投資に目が向けられなかったが、黒田東彦日銀総裁の指揮の下で、デフレ脱却を目指して、2%のインフレ目標達成を掲げた金融政策が進められていることもあって、今後、インフレの状況が戻ってくると、資産運用をより真剣に考える時代が到来するのではないかと考えている。当社は、今まで預金しかしていなかった投資初心者の方々に安心して投資をしていただけるサービスにどのようなものがあるのかを検討する中で、注目したのがラップサービスだ。ラップにも種類があり、本格的なラップは富裕層向けに証券会社や投資顧問会社が資産のアロケーションをアドバイスして、資産を増やす、または守るための取り組みを行うサービスだ。ラップサービス、ラップビジネスはリーマン・ショック前に一時拡大を見せていたが、近年になって再び盛り上がってきている。インフレの時代に向けた資産運用サービスの一つとしてラップに対する関心が高まっているといえる。
当社は、投資信託を活用した、ラップに類似のサービスとして、より少額での投資を希望するお客さまに対して富裕層と同じようなサービスを受けられる金融商品を三菱UFJモルガン・スタンレー証券投資顧問部と一緒に検討して、ファンド型のラップサービスの提供にこぎ着けた。三菱UFJモルガン・スタンレー証券はもともとラップ商品を提供しており、そのノウハウや実績を持っている。預金しかしていなかった個人が、インフレの環境になってきて、将来の資産形成への準備が必要と感じ始め、こうしたサービスを求めていた部分もあると考えている。お客さまのニーズと当社の提案がうまくマッチして、当ファンドに資金が流入し始めているとみている。
当ファンドは、スタート時は3カ月決算型の3ファンドで、決算時に基準価額が当初元本額(10,000円)を超えている場合に当該超えている部分について分配金を支払う形のものにした。その後に1年決算型を3ファンド投入した。こちらは分配を意識しないで、複利効果を追求して中長期に運用することを目指すお客さまに向けに設定したものだ。
■ファンドの特徴
当ファンドは、3カ月決算型、1年決算型ともにお客さまのリスク許容度に応じて、目標リスク水準の異なる「安定型」「安定成長型」「成長型」の3つのファンドから構成されている。目標リスク水準とは各ファンドの変動リスクの目途を表示したものとご理解を願いたい。目標リスク水準は年率標準偏差が、「安定型」5%、「安定成長型」8%、「成長型」10%となっている。現在、特に資金が集まっているのは3カ月決算型の「安定型」だ。純資産総額は530億円を超えている。当社としては当初から、投資初心者の方々に投資の第一歩目としてこの「安定型」を使っていただきたいという願いがあったが、実際にお客さまの間でこのファンドが選ばれているというのは当社の考えとも一致している。6つのファンドは、投資比率を変えた8つの資産に投資を行う仕組みとなっている。8つの資産とは「国内株式」「国内債券」「国内リート」「先進国株式」「先進国債券」「先進国リート」「新興国株式」「新興国債券」。具体的には、8つの資産のインデックスファンドが投資対象となる。世界の8資産に分散して投資できることで、この一つのファンドの中で、運用が完結できる部分が優れた点であると考えている。外貨建て資産については原則、為替ヘッジはしない。
■株式運用はスマートベータ指数を活用
当ファンドの特徴として、投資するファンドはパッシブ運用とすることで分かりやすさを追求している。また、パッシブ運用においても投資効率の向上を目指し、スマートベータ指数に連動することを目指すファンドも活用している。これまではパッシブ運用の中でも、従来型の単純な時価総額加重平均ベースでのインデックスに連動するファンドが多かったが、最近では自己資本利益率や配当利回り、価格変動率などの特定の要素に基づいて構成されているスマートベータ指数ができてきて、それに連動するファンドが増えてきている。それを活用することで、単純な時価総額加重のインデックスを上回る投資成果を目指すような運用が、スマートベータ指数を活用することで達成できるのではないかと期待している。当ファンドは、そうした目標を持ちながら先進国の株式、日本の株式、新興国の株式でスマートベータ指数連動型のファンドを投資対象として採用している。例えば、日本株ではJPX日経インデックス400に連動することを目指すファンドを対象としている。■各ファンドの資産配分
各ファンドにおける資産配分は、目標リスク水準に応じて決まってくる。目標リスク目標値が「安定型」5%、「安定成長型」8%、「成長型」10%であるため、そのリスク水準を見ながら配分比率を決定していく。2月27日現在の運用状況から一つの例を紹介したい。3カ月決算型の資産別構成比率を見ると、「安定型」は国内債券が64.6%、先進国株式が16.4%、国内株式が7.0%などの順。「安定成長型」は国内債券が41.7%、「先進国株式」が26.5%、「国内株式」が13.0%など。「成長型」は、先進国株式が38.5%、国内株式が19.9%、国内債券が15.8など、「安定型「安定成長型」と構成が変わる。資産配分の大きな見直しは1年に1回だが、マーケットの状況に応じてボラティリティが高まる場合には随時見直を行う。こうした資産配分の構成比率は、当ファンドの助言会社である三菱UFJモルガン・スタンレー証券の投資顧問部からアロケーションのアドバイスを受けて行っている。■ファンドの活用
個人投資家、特に投資初心者の方にとっては、投資についてあまり考える時間がない上、アセットアロケーション自体も考えるのは難しいため、当ファンドのように一括して多資産に投資できることや、富裕層向けのラップサービスに近いようなサービスが享受できることは、メリットがあると考えている。加えて、当ファンドは申し込み手数料、信託財産留保額が掛からない。投資を始める方の最初の商品として選んでいただきたいということもあり、なるべく敷居を低くするために、申し込み手数料を無料にしている。これらの点が資産残高の増加につながっている要因ではないかと考えている。投資の初心者がいきなり大きいリスクを取ることは難しいので、最初は「安定型」に投資していただき、投資に慣れて、少しずつリスクを取れるような自信がついたら「安定成長型」、さらに「成長型」へと移っていただいても良いのではないか。また、当社としては投資初心者向けのほか、資産のコア(中核)のポートフォリオとして持っていただいて、取れるリスクの許容度によってサテライト(周辺)のファンドを組み合わせて使っていただくという提案もさせていただきたい。(T)
[本紙3月27日付12面]