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インタビュー2015年4月9日

櫻井英明のそこが聞きたい 一休 森正文代表取締役社長 ブランド価値さらに高める

ROE向上、持続的成長を目指す

兜町カタリスト・櫻井英明氏が上場企業のトップを取材する「櫻井英明のそこが聞きたい」。今回は、宿泊予約サイト運営の一休(2450)。森正文代表取締役社長に現状と今後の戦略を聞いた。

――業績絶好調ですね。

森 おかげさまで2015年3月期は第3四半期段階での最高益を更新しました。ホテル・旅館ともに販売が伸びて取扱金額は前年同期比25.2%増になりました。広告費やポイント費など営業コストも増えましたが営業収益の増加で賄うことができました。「一休.com」の取扱宿泊施設は第2四半期末から45施設増加して2,560施設になりましたし、会員さんも第3四半期で11.8万人増加して384万人になりました。目立つのはレストランの予約ですね。若い女性を中心に増加していて、未来のホテル・旅館予約層になっていただけるのではと期待しています。

アベノミクスに先駆けて昨年は3%のベアを行いました。企業として利益の追求は大切ですが、社員の方々の環境をよくすることで社会がさらに良くなることがあるようにと考えています。何しろ当社のモットーは「こころに贅沢(ぜいたく)させよう」。そして「インターネットに新しい風を。世の中に大きなインパクトを。そして、人々の心にうるおいを。 株式会社一休は、現状に満足することなく、常に社会に役立つ新しい価値を創造し続けます」ですからね。もちろん無借金という健全な財務体質を維持しながら積極的にROE(自己資本利益率)の向上を図り企業としての成長を図っていく方向です。

――最近の取り組みについてお聞かせください。

森 昨年5月に一休のブランド価値向上を目指して書籍「旅に出るなら」を発売しました。一休に掲載している選りすぐりの旅館・ホテル21施設を写真や周辺の名所などとともに紹介した「心に贅沢な書籍」です。8月には株主還元の一環として約7億円の自社株買いを行いました。また11月にはオンラインカードのみで利用可能だったポイント割引を現地決済でも利用可能にし、ユーザーさまのポイント利用シーンを広げ利便性を拡充しました。10月には海外ラグジュアリーホテルの予約サービスを開始。海外のラグジュアリー&アップスケールホテル・リゾートを日本語で予約できるサイトです。

今後は厳選したホテルのラインアップを拡充しユーザーさまへのサービス提供の幅を広げていきます。世間では海外からの訪日外国人客のインバウンド需要がよく話題になりますが、実はアウトバウンド需要の拡充もたいへん重要なことだと考えています。

――今後の展開はいかがでしょうか。

森 「一休」というブランドは、利用者さんの認知度がさらに上がりつつあります。この「一休」というブランド価値をさらに向上させていこうと考えています。ワンランク上の宿泊特化型ビジネスホテル予約サイト「一休.comビジネス」、国内最大級の厳選レストラン即時予約サービス「一休.comレストラン」、ギフト券などを取り扱う「贈る一休」もまだまだ拡大の余地があります。弊社事業の共通コンセプトである「上質なサービス」を提供して持続的成長を目指します。

株式市場での認知度も上がってきました。株式の時価総額は現在600億円程度ですが、まずは1度付けたことのある時価総額1,000億円を目指していこうと考えています。

<櫻井英明の取材メモ>
森社長とは何度もお会いしているが、今回の取材ではオフィスの隅々まで案内していただいた。オープンな社長室も目についたが驚いたのは、勤務中の社員の全員が目を合わせて「いらっしゃませ」とあいさつしてくれたこと。インターネットでのホテル・旅館・レストラン予約というIT分野の産業でありながら実はリアルの世界での宿泊や飲食の予約を提供しているのだからまさに「ネットとリアルの融合」。「社員が安心して、伸び伸びと仕事にチャレンジ出来る空間を提供します」が実現されていた。同社の未来はまだまだ拡大するだろう。そして早く時価総額1,000億円に遭遇したいと思った。

[本紙4月10日付1面]

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