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インタビュー2015年5月14日

☆トップインタビュー カプコン 今期は2ケタ増収増益を計画 代表取締役社長COO 辻本春弘氏

多彩なヒットコンテンツと「マルチプラットフォーム戦略」で高成長持続

先ごろ2015年3月期決算を発表したカプコン(9697)。売上高は37%と大幅減するも、営業利益は3%増と増益を確保した。そして今期は売上高760億円(前期比18%増)、営業利益120億円(同13%増)と一層の利益成長を計画する。その背景を同社の辻本春弘代表取締役社長COO(最高執行責任者)に聞いた。

――採算改善の要因は?

「売り切り型のパッケージソフトに加えて、近年はゲームのダウンロード販売の拡充に注力しており、この領域で大幅な改善を果たした。ダウンロードコンテンツ(DLC)には、新作タイトルのほかに既存タイトルを高解像度化したリマスター版も含まれ、開発原価や返品対応などコスト低減が可能。利益率が高いとの特徴がある」

「今期の新作タイトル数は29本と前期33本から減少するが、『モンスターハンター』関連や『ストリートファイターⅤ』など人気タイトルを投入することと、DLCの伸長により、販売本数は前期と同等の1,300万本を計画している」

――DLC販売状況はどうか。

「売上高に占めるDLCの比率は13年3月期の11%、14年3月期の18%から、前期は26%にまで拡大した。国内では既に定番化したDLCだが、欧米ではようやく認知されたところ。累計販売本数6,500万本超の『バイオハザード』シリーズ第1作目のリマスター版を昨年11月にオンラインで販売したところ、海外での売上高が当社計画を大きく上回った。それまで欧米では小売店など流通側が新作タイトルよりも価格を抑えた廉価版の店頭販売に難色を示していたが、ユーザーの要望に応えるべく取り扱いを拡大し始めている」

「家庭用ゲーム機からスマートフォンに至るまで、デバイスを限定せずにコンテンツを供給する『マルチプラットフォーム戦略』を強みとする当社にとって、販売チャネルの多様化は強烈な追い風だ。オンライン販売の普及でゲーム業界にもようやく、ユーザーのデータを瞬時に読み取って直接セールスできる環境が整いつつあることもポジティブ要素だと考える」

――オンライン販売の普及で何が変わる?

「例えば楽天(4755)ソフトバンク(9984)がプロ野球で優勝した瞬間に自社サイト上でセールを開始するなど、Eコマース(電子商取引)では当然のように行われている機動的な施策が可能になる。この流れに対応すべく、当社ではマーケティングやコンテンツ開発などすべての業務を内製化することで、好機を逃さない社内体制作りを進めている」

「加えて、開発を分業化することで作業効率の向上を図る。一方は本編を、もう一方は追加コンテンツなどDLCの開発を担当することで開発者の稼働率を上げつつ、タイトルのリリース間隔の短縮を目指す」

――アジアでのチャレンジも注目される。

「中国を中心に韓国やタイなどアジアの現地有力企業と協業し、開発・運営を委託し現地語化したオンラインコンテンツの投入を計画している。現在は中国テンセント社と中国版新作『モンスターハンターオンライン』の試験運用を行っており、年内には『モンスターハンター メゼポルタ開拓記』のサービス開始を予定している。『モンスターハンターオンライン』のリリースのタイミングは中国での運営やマーケティングにおいて実績のあるテンセント側が慎重に見極めていることから、同事業については今期業績に織り込んでいない」(Y)

[本紙5月15日付1面]

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