TOP  NSJアップデート  トップ記事  ☆どうした信託銀!?8週連続売り越し GPIF、今秋視野に資金温存か
トップ記事2015年5月29日

☆どうした信託銀!?8週連続売り越し GPIF、今秋視野に資金温存か

代行返上は継続的に発生

毎週の投資主体別売買動向で、「信託銀行」の動きが注目を集めている。5月28日に発表された5月第3週(18-22日)では、新年度入り以降、これで8週連続の売り越し。3月以降の計12週でも、買い越したのは1週しかない。昨年、差し引き2兆7,848億円を買い越した「最大の買い方セクター」は、一体どうしてしまったのか…。

表① 「信託銀行」の3月以降の売買動向
現物市場先物市場「現先合算」
3月第1週-33-261-294
3月第2週-354-127-481
3月第3週-1,346-440-1,786
3月第4週+508+2,488+2,996
4月第1週-1,193+207-986
4月第2週-1,378+695-683
4月第3週-598-642-1,240
4月第4週-986+420-566
4月第5週-149-200-349
5月第1週-110+63-47
5月第2週-274+71-203
5月第3週-635+748+113
※単位:億円
5月第3週も、「外国人の派手な買い越しに対する個人の売り」という、最近見慣れた光景が続き、信託銀行の存在感は薄れたままだ。

「信託銀行」としてカウントされる投資主体としては、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)や、(GPIFとの運用一元化の決まっている)3つの共済年金なども含めた年金マネーであり、信託経由での一部自社株買い、また公的資金として、かんぽ生命や、ゆうちょ銀行なども挙げられる。

なお、勘違いされがちだが、日銀のETF(上場投信)買い入れ業務は三井住友信託銀行が受託(2月2日付日銀リリース)したものの、実際の現物株購入、拠出は証券会社が担うため、「信託銀行」の売買にはカウントされない。

さて、もともと信託銀行の売買には季節性が指摘されており、2011年と12年には「3週連続」、13年と昨年も「4週連続」で、4月の新年度入りから売り越しが続いた経緯がある。とはいえ、「8週連続」となると季節性だけでは説明しづらい(表①のように、現物と先物の合算金額で見れば、「8週ぶり買い越し」に転じるが…)。

昨年の官製相場の主役となったGPIFは、基本ポートフォリオの規定する資産構成割合で、既に「国内株式25%」に到達し、買い余力をなくしてしまったのだろうか。そうだとすれば、依然、「公的資金頼み」の気分を残す今の市場にとっては、やはり気掛かりなところではある。

表② 信託銀行の売買動向に対する
株価感応度の高い上位銘柄群
銘柄コード感応度
九電工19590.41%
三井金属57060.40%
ニチハ79430.36%
三井造船70030.32%
新明和工業72240.32%
ミツバ72800.32%
日機装63760.31%
鹿島18120.29%
ロート製薬45270.28%
ツクイ23980.27%
双日27680.26%
三菱ガス化学41820.26%
三協立山59320.25%
参天製薬45360.25%
住友金属鉱山57130.24%
スタンレー電気69230.24%
マツダ72610.23%
日本新薬45160.23%
東レ34020.22%
小糸製作所72760.22%
売り越しの続く信託銀行売買について、“需給分析のスペシャリスト”として知られる大和証券の熊澤伸悟マーケットアナリストに話を聞いたところ、「信託銀行の『購入額』と『売却額』それぞれについて、委託売買全体に占める比重を見ると、前者が低下し、後者が上昇していることが分かる。GPIFなどの公的資金が買いを手控える一方で、『代行返上』などによる年金売りが増えてきたことがうかがわれる。とはいえ、これは必ずしも懸念すべきことではない。GPIFの国内株式割合は、3月末時点で22%前後と試算している。残りの3%、4兆円分くらいが買い余力として残る。短期間で買い切ってしまうのではなく、年間を通じて、下がったところを買いにいくというスタンスなのだろう。なお、3共済の買い余力は5,000億-6,000億円程度。ゆうちょ銀行や、かんぽ生命は、いわば『政治的』に動く部分があり、買い余力などは試算できないが、売りか買いかと言われれば、買いだろう。今の需給構造は決して悪くない。5月12、13日のように欧米株安→外国人売りとなると、すかさず下げたところを国内勢が買ってくる。皆が一斉に買うのが『バブル』なら、今の相場は、外国人や信託銀行などの“ローテーション”が効いている」とのこと。今秋に想定される日本郵政グループ3社の新規上場なども視野に、投資資金の“温存策”に出たといったところか。

ただし、厚生年金基金解散や代行返上などによる売り物自体は、今後も一定量が出るというのが熊澤氏の見方。幅広い銘柄に入るGPIFなどの買いとは別に、信託銀行の売買動向に対する株価感応度が高く、年金信託がある程度保有する銘柄については、企業年金によるリバランスの売りが上値を抑える可能性があるとしている。

熊澤氏が22日付レポートでスクリーニングしたうちの上位20銘柄は表②の通りだ。「例えば、年金などの新規買いが入りやすい、『MSCI最小分散』指数の新規採用、ウエート増加銘柄を買う一方で、表のような銘柄を売り建てるロングショート戦略なども想定される」(熊澤氏)とか。同指数の新規採用は三菱マ、三菱自、西武、テルモ、日立金。ウエート増ならブリヂストン、大正薬、三井物、伊藤忠、リクルートなどとなる。(A)

[本紙6月1日付1面]

関連記事