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ファンド情報2015年7月16日

☆ファンド情報 ベアリング投信投資顧問「ベアリング欧州株ファンド」インカム、キャピタル両エンジンで市場全体を上回るリターン目指す

「為替ヘッジあり」を新しく投入

執行役員 投信営業部長 豊田直樹氏に聞く

ベアリング投信投資顧問は「ベアリング欧州株ファンド(為替ヘッジなし)(注1)」を2007年8月8日に設定・運用を行っている。運用期間は既に7年超に及んでいる。運用パフォーマンスは良好で外部評価機関による評価も高い。リッパーの「リッパー・ファンド・アワード・ジャパン」では、「株式型 欧州株(評価期間3年)」の分類で13年の最優秀ファンド賞を受賞、「株式型 欧州株(評価期間5年)」で14年、15年と、最優秀ファンド賞を受賞、3年連続受賞している。今回、「ベアリング欧州株ファンド(為替ヘッジあり)」を新しく投入した。「為替ヘッジあり」は、「為替ヘッジなし」と同じマザーファンドで運用される。そこで、その特徴や視点、強み、運用実績などを同社執行役員投信営業部長の豊田直樹氏に聞いた。

■基本的な特色

当マザーファンドは、欧州株を投資対象としたものだが、当社がクオリティ配当株式投資と呼んでいるところに大きな運用の特徴がある。単なる高配当株式ではなく、盤石な財務・経営基盤と安定した利益を確保している高配当持続銘柄と利益成長により株価上昇と増配が期待される増益・増配銘柄の2つの銘柄群に、ボトムアップ・アプローチで絞り込んでいく。主要な投資対象は、代表的な欧州株のインデックスであるMSCIオール・カントリー・ヨーロッパ・インデックスに採用されている国・地域の株式。銘柄選定では高配当、高利回りに加え、財務の健全性や流動性、業績動向や株価の割安度などを考慮に入れる。また、今回の新ファンドは原則として、対円での為替ヘッジを行い、為替変動リスクの低減を図る。1、4、7、10月の各26日に決算を行い、収益分配方針に基づき分配を行う。運用を担当するのはベアリング・アセット・マネジメント・リミテッド(英国法人)、当社の親会社となる。

■「為替ヘッジあり」投入の背景

ユーロ相場が不透明な中で、為替リスクを低減しながら株価の上昇だけを狙いたいとのニーズに対応して、今回「為替ヘッジあり」を投入したもの。一方で、ユーロはかなり売り込まれ、長期的には底値圏にきたとみる向きには「為替ヘッジなし」と、お客さまのニーズに沿った選択ができるようにした。

■欧州株の投資環境

大陸ヨーロッパだけでなく、イギリスや、東欧諸国、ロシアなど幅広い国々を投資対象としている。欧州企業は、株主を重視する姿勢が強い。日米欧の配当性向と配当利回りを比較すると欧州が最も高い。低金利下で、こうした企業に注目している。ヨーロッパは弱いながらも景気が回復基調に入ってきたと考えている。実質GDP(国内総生産)成長率を見ると主要4カ国がそろってプラスに持ち直してきた。ユーロ安や原油安、QE(量的緩和策)による金利の低位安定などで、個人消費は少しずつ回復してきている。イタリアやスペインなども持ち直し、今後、景気好転に広がりが見えてくるだろう。こうした環境で欧州株はしっかりした推移が続くのではないか。欧州株式は他地域に比べ出遅れ感がある。足元の欧州株のPERは15年間の長期平均と比べ3割ほど割安。PBR(株価純資産倍率)も、長期平均をやや下回る状態にあり、欧州株投資は、面白いタイミングにあると考えている。

■高配当株の魅力

こうした中でどうして高配当株を選ぶのか。高配当株というと、一般に配当がクッションとなって下落局面に強いというイメージをお持ちかもしれない。そこで、欧州株式の上昇局面と下落局面の年間リターンの平均について1997~2015年(注2)の18年間を調べてみた。ここでは一般的な欧州株式が年間で上昇した年を上昇局面、下落した年を下落局面としてカウントしそれぞれの平均値を算出すると、上昇した局面では一般的な欧州株式は22.2%、欧州高配当株式が22.8%と、上昇局面でも高配当株はしっかりしている。下落局面を見ると一般的な欧州株式は-22.8%、欧州高配当株式は-19.5%で、下落局面のみならず上昇局面でも強みを発揮していると当社ではみている。

また、株式投資のリターンの内訳を地域別に調べてみると、配当による部分が大きいのが欧州株投資一つの特徴と考えている。アメリカ、日本は株価の上昇によるリターンが半分を超えている中、ヨーロッパは配当金収入の部分が大きなウエートを占めていることで、こうした点に着目した投資は、有効な戦略の一つと考える。欧州の株式配当利回りと債券利回りを比較すると、最近は債券利回りがあまりに下がり過ぎたため、欧州では株式の魅力度が歴史的にみても高まっている環境にあるといえる。

■パフォーマンスの特徴

それでは、その欧州株ファンドの中でも、なぜ当ファンドが優れた運用実績を残していられるのか。外部データ(注3)を基に欧州株為替ヘッジなしに属するファンドを選んで、その中で運用期間が5年以上のファンドの基準価額について今年3月末時点で選ぶと16本にとどまったが、この5年の毎月のリターンの平均を年率換算したものと、リスクを分布図にすると、リスクの点では当ファンドが19.9%と最も低いとはいえ、高いファンドでも24.1%とあまり変わらない。しかし、年率のリターンは当ファンドが18.3%と最も高く、最も低いファンドは8.5%と格差が大きい。ファンドの戦略の差が表れている。こうした運用成績を残している点がリッパー社に評価されている。当ファンドは、3月末現在、過去1年、過去3年、過去5年、設定来いずれの期間でも参考ベンチマークを上回っている。当ファンドは設定後、まもなくしてリーマン・ショックに見舞われたが、しっかりとした実績を積み重ねることにより、現在、再び関心を示していただけるようになっている。

■クオリティ配当株式投資という投資スタイル

クオリティ配当株式投資と呼ぶ投資スタイルを用いる。ポートフォリオは大きく2つの銘柄群で構成されている。一つは高配当持続銘柄、高い配当を払っていて、しかも高い配当を持続できる銘柄群でまずポートフォリオを構築する。高い配当を持続できるということは、ある程度しっかりした財務基盤や経営基盤を持っているからこそ、安定した収益、そこから安定した配当が払えるという、こうした「安定」という言葉が一つキーワードになってくる。これだけでは相場つきで市場全体についていけないこともあるので、同時にキャピタルゲイン狙いのエンジンも必要。これも配当という観点で考えると利益が増えたら、それを増配に回すような会社、そうすれば、株価が上がって、キャピタルゲインも狙える銘柄群といえ、インカムゲインとキャピタルゲインという2つのエンジンにより市場全体の上昇を上回るリターンを目指していこうというのが基本的な戦略である。ただ単に配当利回りの高い銘柄だけでポートフォリオを構築するとマーケットに負けてしまうこともあるため、インカムゲインとキャピタルゲインの両方を狙える銘柄群をポートフォリオに組み入れる。ベアリングは成長株投資に強みを持つ運用会社なので、われわれの投資哲学も増益・増配銘柄群は生かしやすく、相性も良く、このようなスタイルを取っている。

■運用プロセス

投資対象はMSCIオール・カントリー・ヨーロッパ・インデックス採用の銘柄群を中心に500銘柄以上、この中から配当利回りの観点などから銘柄を絞り込みつつ、個別企業の調査によって最終的にはアナリストが高い評価を付けた40-60銘柄程度の銘柄でポートフォリオを構築する。40-60銘柄程度は、アナリストのみならず、運用担当者自らがリサーチ内容の裏を取れる範囲であり、運用担当者のポール・モーガンが判断できることに重きを置いて絞り込んだもの。ベアリングの多くのリソースを活用し、汎欧州株式チームのポール・モーガンとロバート・スミスが運用を担当している。

国別構成では、フランス、ドイツなど大陸ヨーロッパのほか、イギリスも入っている。通貨別構成はユーロが約半分、ポンドが約3割、スイスフランなど。業種別に見ると、高配当株戦略の1つというと公益企業の比率が高いと思う方も多いとみられるが、実際は金融セクターをはじめバランスよくさまざまなセクターが組み込まれている。(3月末現在)(T)

(注1)正式なファンド名称は「ベアリング欧州株ファンド」(この記事で当ファンド)だが、ここでは「ベアリング欧州株ファンド(為替ヘッジあり)」との商品特性の相違を明確にするため、便宜的にファンド名称に(為替ヘッジなし)を記載している。
(注2)2014年12月末から15年3月末まで。
(注3)NTTデータエービックのデータを基にベアリング投信投資顧問が作成。

[本紙7月17日付12面]

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