オリオンビール(409A・P)が9月25日、東証プライムに上場した。初日は公開価格比2.19倍の1,863円で初値を形成し、同2.29倍の1,950円で引けた。上場当日の記者会見で村野一代表取締役社長執行役員社長CEO=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
オリオンブランドによる循環成長型モデル
県民に愛され、観光客に愛され、沖縄県の発展とともに成長してきた。観光客はハワイに匹敵する1,000万人。最近はオリオンデザインのアパレルを着て街に繰り出し写真を撮るようなことも起きている。そうした沖縄での良い思い出を友人知人に共有・拡散いただくこと、これが私どものマーケティング戦略にとって大切な一つのステージとなっている。そうした方が県外、海外に戻られた時に私どもはオリオンビールを推すのではなく、沖縄を想起していただくことに集中。例えばスーパーの沖縄フェアなど各種イベントで良い思い出を思い出していただき、そこにあるオリオンビールを手に取っていただく。そのオリオンビールは単なるコモディティーとしてのビールではなく、沖縄の魅力をいっぱいまとったプレミアム化された思い出、ブランドとなる。私どもは離島にあり、ロジスティックコストも安くはないが、少し高くとも買っていただけることを実現し今日に至る。オリオンのブランドを中心とした循環成長型のビジネスモデルを地道に行っている。
成長性・収益性・効率性で業界トップ
会社のサイズは大手と比較にならないほど小さいが、このビジネスモデルによりおかげさまで成長性、収益性、資本効率性で業界でもリーディングポジションを取れる数字をたたき出している。成長ドライバーは豊富にある。具体的には、県外・海外での売り上げ成長、RTD(栓を開けてすぐに飲めるアルコール飲料)での売り上げ成長、ブランド・ライセンスビジネスの成長だ。酒類事業の県外・海外売り上げ比率は現在26.1%、中長期的に35%まで引き上げていく。全体業績に関する中長期の目標は売上高(酒税抜き)年平均成長率で約5%、EBITDAマージン(酒税抜き)で約24%、ROE(自己資本利益率)約15%以上。これをしっかり達成していきたい。
成長ドライバー①ライセンスビジネス
ライセンスフィーをいただく収益性の高いビジネス。オリオンデザインを使用したTシャツのほか、最近はクッキーやアイスクリームなども出ている。ライセンス売上高は前3月期が1億4,500万円、今期は4~6月で前年同期比2.37倍とある意味爆発的に伸びている。本日、株式市場で高い人気をいただいたが、このブランドビジネスとも関係性が深いのではないかと、沖縄やオリオンブランドに寄せる期待というものが幸福度などと重なって支持を得たのではないかと考えている。
成長ドライバー②海外
海外は勝ち筋がしっかりあるところで勝っていく。例えば沖縄をよく知る地域の韓国、香港、台湾では沖縄の商品をそのまま、コミュニケーションも沖縄で行っている通り展開。一方、豪州や米国、その他は必ずしも沖縄の認知度、ましてやオリオンのことはご存じない。そこは違った戦略で日本製、日本品質をテコに「ジャパンクオリティのリゾートビール」というポジションで攻める。おかげさまで豪州や米国では非常に大きなビジネスを展開しており、米国は今年に入り前年比倍増の勢いで伸びている。沖縄駐在経験のある米国人が米国に1,000万人住んでいることが分かり、そうした方が多く住まわれる地域のスーパーに配荷し、好調に推移している。また、英国で年初からライセンス製造を始めた。パブでの人気も非常に良いと聞いている。ロジスティックコストが高いところは委託生産、ライセンスビジネスという一つの新しい勝ち筋ができた。委託生産は収益性が高く、売り上げがほぼ粗利益となる。英国以外の地域でも展開できるのではないかと考えている。
株主還元
酒類事業からの潤沢なキャッシュを背景に成長投資・更新投資を賄い、ROI、ROICを勘案した規律を持った投資を行った上で余剰資金を積極的に株主に還元していこうということで配当性向は50%以上ないしDOE7.5%以上のどちらか高い方を採用する。株主優待も用意している。オリオンファンの株主を一人でも多く増やしていきたい。(Q)