ウェルネス・コミュニケーションズ(366A)が6月23日、グロースに上場した。健康診断の一括支援やSaaS型健康管理クラウド事業を手掛ける。初値は公開価格を33%上回る3,300円。上場当時の記者会見で、松田泰秀代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
2つの事業を持っていることが強み
主要事業は健診ソリューション事業と健康管理クラウド事業の2つ。それぞれの事業に競合はあるが、両方の事業を持っているというのが最大の強み。健診ソリューション事業で、健康診断のデータを使える状態にする。健康管理クラウド事業は、健診結果以外のデータも集めて利用できる。良い箱だけあっても使えるデータがないと、データドリブン型の健康管理、健康経営は進まない。
大企業が主な顧客
健診ソリューション事業は主に大企業が顧客。大企業は全国に多数の拠点があり、拠点ごとに従業員、家族の健康診断を実施することは大変な手間がかかる。われわれは全国の医療機関2,200施設と提携しており、医療機関と顧客の間に入って健康診断の案内から予約の手配、進捗管理、データ収集、精算代行といったものをワンストップで行う。まだ、健康診断結果は紙で書かれており、医療機関ごとに基準値や判定記号がばらばらになっている。その統一化を図って、データを使える状態にする。
ユーザーID数は174万
健康管理クラウド事業は主力のプロダクトが「Growbase」というSaaSのプロダクト。顧客は健診ソリューション事業と同様に大企業。従業員の属性情報、健康診断の結果、残業時間などの就労データ、ストレスチェックなどメンタルヘルスデータ、産業医による面談記録などを一元的に管理し、可視化してデータを利活用する形で健康管理を支援するプロダクト。「Growbase」のユーザーID数は174万。国内の大企業で働いている人は1,660万人おり、拡大余地はまだまだある。
機能拡充で新サービスに発展へ
働いている人や働き方が多様化する中、「Growbase」に求められる役割がどんどん変化しており、健康管理に活用していただくだけでなく、人的資本経営、ウェルビーイング経営実現のための役割が求められている。今後さらに機能を拡充して、ここからつながるサービス、ソリューションを展開していく。今まで労働安全衛生法に基づいて健康管理が行われるのが一般的だったが、1970年代に作られた法律。今と状態が全く違う。例えば女性がどんどん活躍すれば婦人科検診やフォローアップが必要となる。がんの患者が増えているのも同様。また、健康相談、eラーニングなど健康管理が多様化していくなか、良い機能を持っている会社とどんどん提携を図っていきたい。事業開発やソリューションの連携を拡充するために上場に至った。
中小企業向けサービスも開始
今は大企業中心に展開しているが、「Growbase ネクスト」という中小企業向けに法令対応を中心として、機能を少し制限したプロダクトもリリースし、こちらだけで既に15万IDに上っている。中小企業は健康管理の体制が整っていないところも多く、「Growbase ネクスト」を使ってもらい、健康管理をアウトソースしてもらうようなBPaaS型の事業を展開したい。
ID拡大と収益性改善で成長へ
今後、「Growbase」のID増加に取り組むのと並行して、1社当たりの単価を上げることに注力する。多様化への対応などで、アップセルできるサービス、ソリューションがたくさんある。顧客からも「分析機能を強化してほしい」、「近接領域もできるようにしてほしい」などの要望があり、機能強化を図ることで収益の拡大を図る。健診ソリューション事業もID拡大に取り組むが、医療機関のデジタル化が進まないと、大きな負担が出てくる。社内のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進と、並行して医療機関のDX推進ツールの提供で、IDの拡大と収益性の改善に取り組んで成長していく。
大株主のSOMPOや伊藤忠とも連携
上場でSOMPOHD(8630・P)の持ち分比率は減少したが、筆頭株主であり、今後も営業の連携を強化したい。(もともとの親会社で大株主の)伊藤忠商事(8001・P)とも昨年共同事業を1つリリースしたが、しっかり連携していきたい。われわれのコーポレートガバナンスがSOMPOHDや伊藤忠に引っ張られるのではとの懸念も聞くが、独立性を持って株主の皆さまとコミュニケーションできる形をとっており、安心してほしい。(HS)