クラシコ(442A)が11月5日、東証グロースに上場した。初値は公開価格比2.35倍の3,270円。同社はメディカルユニフォームメーカーで、売り上げの65%が医療従事者向け、35%は患者向け。上場当日の記者会見で大和新代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
白衣価格は他社の5倍……医者になった中学時代の友人が「病院から支給される白衣をロッカーから出すとペラペラのくたくたで仕事のやる気が出ず、周りのドクターもみな不満を持っている」と。このひと言が創業のきっかけ。オーダースーツ職人になった高校時代の友人が持つスーツの技術を使い今までにない白衣を作るというコンセプトでEC(電子商取引)サイトで販売したところ多くの問い合わせをいただき、「クラシコ」のブランドが始まった。フラッグシップブランドは医療従事者向けの「クラシコ」と、レンタル患者着の「リフテ」。どちらも美しさと機能性・着心地を兼ね備える。価格は白衣が他社の5倍の3万円程度、スクラブは2倍弱と高価格帯だが、購入者の50%以上がリピートする熱狂的なファンを持つ。
糸から素材トップメーカーと独自研究を重ねる……メディカルアパレルは古い業界ということもあり、国内メーカーのほとんどが「一般品の間接販売」が中心。一方でわれわれは「高機能・高機能品を直接販売」という独自のポジショニングを作っている。最大の特徴は医療従事者と自社ECや店舗を介して繋がり、その声を聞き商品開発などを行っている点。また、北陸を中心とした素材トップメーカーと独自研究を重ね、糸から耐久性、着心地、機能性を追求して作っていることが他社の追随を許さないポイントとなっている。例えばスクラブは三層構造で、一番下の綿が通気性保持、中綿はストレッチ性と耐久性、表面はポリエステルでありながらウール調の上質感を持ち、おしゃれで着心地も良いとお客さまから評価されている。直接販売やブランド力を背景に粗利率は52.4%と通常のアパレルと比べ高水準。
参入障壁……事業開始から17年。この間、大手アパレル、有名企業が数多く参入したが、撤退もしくは細々と続けている状況。通常のアパレル素材を転用できない、素材開発に数年かかる、高価格帯はわれわれのブランドが存在している、ことが大きな参入障壁になっている。特許はないものの、開発した素材は開発者だけが扱えるという業界商慣習がある上、毎年素材のアップデートを重ねている。
中長期成長戦略……国内は競争力とブランド力をもとに継続的な成長を図る。加えて、高価格のためなかなか手が届かないという声に対応し、高品位ながら価格は他社と同程度のエントリーモデルを投入することで、若い医療従事者や新興国の医療従事者を含め新しい顧客層を拡大させる。さらに医療従者以外の患者着や検査着に領域を広げる。これらを世界各国に展開し、非連続的な成長を作っていく。
海外売り上げ比率20%超へ……ブランド価値や信頼性を高めて海外パートナーと組み、適切な資金調達を行った上で広告や人材投資を行いグローバルブランドを加速させるためIPOした。海外売り上げ比率は現在5%未満だが、海外展開を加速させ、中期的に20%は超えたい。海外比率が高くなれば、業績安定的・永続的成長の実現可能性が高まり、グローバルブランドとして株式市場からより評価いただけると考えている。
海外メディカルユニフォーム市場は魅力的……通常のアパレルファッションは国や地域ごとにトレンドや嗜好性が異なるが、メディカルアパレルは世界共通。にもかかわらず強いグローバルブランドはいまだに存在しない。グローバルユニフォームの評価ポイントは機能性にあり、機能性では素材が大事。世界的に評価の高い日本の素材で作られていることは海外顧客からの評価につながっており、グローバルマーケットで勝てる“勝ち筋”。海外医療アパレル市場はCAGR(年平均成長率)9.2%と予測されている。医療人口の増加、コロナを契機とする感染予防意識向上から一人当たりの枚数増加、医療用ユニフォームがペラペラでくたくたであることはおかしいと世界も気づきはじめたことが背景。
10人いたら4人は着てもいいもの……国内も大きく伸ばしていける。高いリピート率ながら国内市場のシェアはまだ3.3%。われわれの商品は10人いたら10人が着るものではないだろうが、10人いたら4人は着てもいいものと思う。エントリーモデルにより既存の他社商品のマーケットにも大きく入っていける。また、ドクターやナース向けにとどまらず、隣接領域でもスクラブを着る方は非常に増えている。例えば整体やマッサージ領域、獣医、歯科、介護など。隣接領域で様々なパートナーと組み拡大していくことで国内でも大きく成長できるとみている。
上場時の時価総額28億円……創業来16期連続で増収を続けてきた。国内チャネルや海外進出国の拡大により今後も安定的永続的に成長できるとみている。海外は既に14の国と地域で展開。今月からマーケット規模が大きく当社商品がフィットする米国、カナダ、オーストラリアにも進出する。顕在化しているマーケットを普通にとっていくだけで時価総額100億円は超えていけると考えている。今後の業績に関しては、売上高はCAGR20%内外がベースとなる。営業利益率は中期的に20%超えは十分に達成可能。既に3、4月の繁忙期はオペレーティングレバレッジが効き、単月で20~25%を実現している。この1、2年で利益体質を作ってきたため売り上げを伸ばせば利益率が改善していく。(Q)
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