テラテクノロジー(483A)が12月23日、東証スタンダードに新規上場した。初値は公開価格を38.9%上回る2,904円。企業や政府の基幹システム構築を主業務とするシステム開発会社。上場当日の記者会見で宮本一成代表取締役=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
技術力の高さに定評
当社はITのシステムを開発してお客さまに提供する、いわゆるシステムインテグレーター(SIer)だ。ソフトウエアの開発は言うまでもないが、開発後のシステムの稼働を支援したりシステムの改変を請け負ったり、運用・保守含めトータルにサービスを提供している。対象となるのは大手企業や官公庁の利用するシステム。事業分野は5つに大別され、このうち公共分野は官公庁や公的機関向けのシステムを対象としており、全体の17%を占める。次いで通信分野は携帯電話のモバイルネットワークのシステムの開発を行っている。携帯電話というと社会一般にはスマートフォンのアプリケーションを使ったサービスというイメージが強いが、当社はそこではなく、全国に張り巡らせられているモバイルネットワーク全体のシステムを手掛けている。「公共」「通信」の分野は社会性の高いシステムであり、これらのシステム開発についてはお客さまからの技術に対する要求が非常に高い。例えば政府のシステムだと、当然ながらシステムが正確に稼働しなければならないし、サービスが停止してしまってもいけない。また、情報漏洩(ろうえい)のようなセキュリティ事故なども決して許されない。私たちはこれらの要求に持ち前の技術力で応えて高品質のシステムを実現している。また、それによってさらに技術力に磨きをかけて、蓄積した技術をほかの分野にも展開し、5分野をバランス良く成長させている。
安定基盤で高い利益率維持
その結果、毎年売上高を拡大することができており、直近の2025年3月期は過去最高の売上高を更新した。利益面でも経常利益率は12%前後を維持し、今年度上半期も12%を達成している。大手SIerにも引けを取らない高い利益率を実現している要因として、1つは安定した顧客基盤が挙げられる。当社の受注形態は2つあり、1つは大手のITベンダーやSIerから開発を請け負うケース(70%)、もう一つは当社がシステムを利用する会社から直接請け負うケース(30%)だ。前者は単なる二次請けと思われがちだが、当社の場合は決してそうではない。例えばシステムのアーキテクトといったような技術方針にかかわる部分を当社が担当したり、ある意味対等な立場で重要な部分の業務を行っている。一方、直接取引ではシステム構築のスペシャリストとして技術力を発揮して顧客満足度の高いシステムを提供している。直接契約は利益率が総じて高い。最終顧客との直接契約の比率は年々上昇傾向にあり、ここの比率の上昇に伴って当社の利益率も上がってきている。
技術者育成・定着に成功
2つ目の強みは正社員による安定的なプロジェクト運営。われわれはチームを作って開発プロジェクトを進行しているため、優秀な技術者によるプロジェクトの運営が非常に重要になってくる。新入社員を中心に人材を確保しており、直近4年間で社員数年は平均10%増加している。過去の採用実績で蓄積してきたデータを分析して採用戦略を立てていることが成功の要因。また、新卒社員入社3年後の継続就業率は96%と、産業界全体あるいはIT業界全体と比べても高い定着率を誇る。人材を手厚い研修制度で育成していることに加え、当社は社員の幸せを最優先テーマとして社員とコミュニケーションを重ねてエンゲージメントの向上に努めており、その成果が数字に表れていると考える。
高利益案件への選択と集中
付加価値の高い案件の選択と集中を行っていきたい。幸いにもお客さまからは多くの引き合いをいただいている状況。そういう中で、高い技術力を生かせる高度な案件の選択と集中を行っていく。ターゲットとなるお客さまの状況を見ると、産業界では各社の間でDX(デジタルトランスフォーメーション)戦略、IT技術で業務プロセスやビジネスモデルを変革するという取り組みが活発になっている。われわれはこのDX戦略の支援をする。また、政府もデジタル社会の実現を目指している。さかのぼればデジタル庁創設以来、政府はデジタルガバメントを推進したり、IT投資を活発にしていた。われわれはこれらの投資にも応えてまいりたい。
今後はサービス提供も
企業のDX戦略の支援、そしてITによる社会課題の解決を当社の強みである高い技術力と顧客との深い信頼関係により実現し、高成長を継続していく。技術者の年平均8%増加させ、それを原動力に成長を進めていく。調達資金の使途としては、引き続き人的投資のほか、今後はサービスの提供も必要かと思っている。4年前にビジネスチャットサービスをリリースしているが、こちらは順調にお客さまも拡大している。こうしたサービスは利用者数が増えるとコストが増える。特に大手であるほど利用範囲を拡大するとコストがかかる。そこをわれわれは抑えた格好であり、非常にご好評いただいている。これは契約社数が増えることによって利益率が高くなってくるサービス。こういったものも今後展開していきたい。(SS)
※速報版は最終的な校了前の紙面記事です。今後、修正等が入る場合があります。

