蓄電型発電所など大型蓄電システムを製作するパワーエックス(485A)が19日、グロース市場に上場した。初値は公開価格1,220円を7.3%下回る1,130円と軟調だったが、その後はストップ高の1,430円まで買われた。週明け22日もストップ高。上場当日の会見で伊藤正裕取締役代表執行役社長CEO(写真)、藤田利之執行役 コーポレート領域管掌が語った内容をまとめた。
伊藤正裕CEO 業界のリーディングポジション目指す
当社は大型系統用蓄電池、系統用蓄電システムなどを手掛けている。日本のエネルギー自給率向上に少しでも貢献したいとの思いから2021年に創業、これまでの累計の受注額は624億円となっている。
「Power X Mega Power 2700A」と「同2500」が主力製品で売り上げの大半が大型の系統用蓄電池システム。われわれの成長を牽引しているのが蓄電所だ。蓄電所は電力の需給調整を行うための電源。送電線に電気が余っても足りなくても停電を起こしてしまうので、余った分を充電、足りない分を放電する仕組み。日本ではこれまでの調整は火力発電、くみ上げ式の揚水ダムの活用などで対応してきたが、調整力における蓄電池の必要性が高まっている。
政府の第7次エネルギー基本計画では40年までに300ギガワットアワーほどの電池が系統に接続される予定で、累計で10兆円の市場になると試算され、これに対しパワーエックスがリーディングポジションで頑張りたいと思っている。
大型案件が成長を牽引
当社の主力であるBESS(バッテリーエネルギー貯蔵システム)は自社で設計して製造・出荷している。電池自体を単品で売ることもあるが、昨今はお客さまからの要望で、蓄電所全体のプロデュースしている。蓄電池から、変圧器、パワーコンディショナーなどの調達、設計・生産・手配に加え、それらの輸送、メンテナンス、オペレーションを一気通貫、垂直統合で行うことが多い。
当社の成長を特にけん引しているのが大型の案件だ。特高蓄電所が高圧変電所の倍くらいある。これを営んでいるお客さまはTier1と呼ばれるエネルギー、ガス、通信の大手企業。エネルギー事業の一環として蓄電所を保有しているが、これを当社が受注し、作っているという構図だ。岡山県の本社工場、第二工場とともにフル稼働に近い状態だ。
大型系統用蓄電システムを作っている会社は日本では少ない。われわれ以外では1、2社というところ。外国製の製品は中国、米国製が多い。多くの場合は輸入代理店が販売をしているが、重要インフラに入れるという観点からはやはり国産、制御が安定していて、20年間サービス・メンテナンスがきちんと日本でできることが決め手になっており、これにより優位性が保たれている。
藤田利之執行役 先行投資フェーズから収益化、急成長へ
当社は製造業なのでどうしても投資が先行する。研究開発をし、工場を作り、製品を作り販売していく過程で先行投資フェーズというのが必要になる。現状はベース収益となるBESS事業の受注残がたまってきて、収益化の蓋然(がいぜん)性が高い段階に入り、ここからより急成長を目指すことができる。販管費、研究開発費は売上高の成長とともに増えていくが、売上高の成長よりもかなり緩やかになるだろう。損益分岐点を超えて利益が出やすい転換期に差し掛かっており、このタイミングでのIPOとなった。
売上高はお客さまが受け取る補助金のタイミング、決算期などをから第4四半期に偏りやすいシーズナリティがあるが、重要なKPIとして受注残、工場の稼働率、製品の在庫などを示すことで、投資家には説明していきたい。
25年12月期の業績について売上高で189億円、営業利益は8億350万円の赤字となるが、ちょうど収益的には転換するフェーズに来ているので、来期以降、受注残を積み上げベース収益に応用製品が載っていけば、大きな売り上げが出ると思っている。
25~29年のBESS事業の受注は正式受注と受注見込みを合わせ、533億円に達しており、来期以降も堅調な成長が見込まれる。受注残の積み上げを示しながら、将来の業績の蓋然性を示していくことなる。IPOで調達した資金は主に、ニーズが高い大型蓄電池の研究開発、設備投資に振り向ける予定だ。(M)
