フツパー(478A)が24日、グロースに新規上場した。日本の製造業に向けて画像認識AIなど最新AIを利用したサービスの開発、販売を展開している。初値は公開価格を31.7%上回る1,344円。同日の記者会見で、大西洋代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
社員の6割以上がエンジニア
製造業の人手不足を解消したい一心で会社を立ち上げた。人手不足が深刻な中、製造業は国内DX(デジタルトランスフォーメーション)市場の中でも大きくて伸び率も高い。日本で製造業向けサービスを行うには(本社)大阪がベスト。メキキバイトという外観検査の自動化からスタートして現在に至る。社員の6割以上がエンジニアなのが特徴で、私を含めた創業メンバー3人も広島大学工学部出身。AI開発者だけでなく、ハードウエア、組み込みソフト開発などバランスよい採用をしている。(競合が)同じようなことをするのは時間もかかるし、採用の難易度が高い。他社と比べて現場に深く入り込み、ロボット連携などAIだけでないものが得意。
今期は黒字見込みで利益創出フェイズへ
売り上げの大半が既存顧客から成り立っている。継続顧客売上高とライセンス収入のAI使用料を合わせた8割程度がリカーリングに近いモデルなので、収益基盤は安定している。一方、創業期から(売上高は毎年)2倍以上の成長を続けている。ずっと赤字だったが、前12月期は赤字幅が縮小し、今期は黒字を計画。累積赤字も回収できる。来期以降は利益創出のフェーズに入っていきたい。スケール性と事業の安定性を両立しながら拡大していきたい。
クラウド経由でデータ収集が強み
売り上げ構成の7割が画像認識AIサービス「メキキバイト」。導入の相談をいただければ、現場への機器選定、設置全部を行うワンストップサービス。導入後も継続してクラウドのアプリケーションで再学習して、現場のAIをどんどん新しいものにできる仕組みをセットで提供している。検査領域は競合もいるが、われわれのようなクラウド経由で継続的にデータを集める会社はほかにないと思う。われわれのクラウド環境に顧客の大量のデータがたまっていく。解約率は月次0.75%と低水準。基本、1回入れるとずっと使っていただける形。主要な取引先は中小から大手まで幅広く、売上高は特定先に依存しておらず、上位10社のうち9社が継続顧客。その一方で新規開拓先は50社あるが、最初、少額取引からスタートして徐々に取引高が大きくなることがよくあるパターン。業種別では77%が製造業。
分析AIとの2軸で成長
25%がエンタープライズ向けの個別のAI開発や生成AI関連の取り組みを行う分析AIサービス、残り新サービスが3%強。もともとわれわれは画像AIのみを提供していたが、直近、技術や導入実績を評価していただき、今は分析AIとの2軸で成長している。残りの新サービスでは、人の配置を決めるAIサービスを2024年7月にリリース。今年になりインターネットに接続せずに使える対話型生成AIを始めた。
大手企業との提携相次ぐ
成長戦略は、製造業向けプロダクトのラインアップをまだまだ増やしたい。検査以外のAIサービスとして人の動きや安全対策(のAIサービス)で、セーフィー(4375・G)と事業提携した。同社のように販売開発面で協調できるパートナーを増やしていきたい。M&Aの実績もないが、一緒にできるところがあれば検討していきたい。最近ではオリックス(8591・P)、ロート製薬(4527・P)、富士電機(6504・P)などの事業会社から出資を受け、資本業務提携をした。提携を足掛かりに医薬品や半導体業界にもサービスを提供していけ、まだまだ伸びしろが大きい。また、中長期では海外にも進出したい。地域的には東南アジアを中心にまず広げ、そこからどんどんエリアを増やしていく。中長期でも今ぐらいの成長ペースでいきたい。
時価総額1兆円を目指す
上場しても小粒なまま続いてしまうより、同じ関西の会社ならMonotaRO(3064・P)のようにかなり大きくなりたい。トップラインがまず伸びれば時価総額もついてくる。M&Aも含めて、10年、20年かけて時価総額1,000億円、1兆円となる会社を大阪から目指したい。製造業の市場は間違いなく十分に大きいので、われわれがどれだけスピードを上げられるかがポイントだと思っている。(HS)
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