ムービン・ストラテジック・キャリア(421A・G)が10月6日、グロースに新規上場した。コンサルタントなどハイエンド人材の紹介サービスを手掛ける。初値は公開価格を20.2%上回る2,502円。上場当日の記者会見で、神川貴実彦代表取締役社長(写真)が語った内容のポイントは次の通り。
利益率はかなり高く……弊社の歴史は長く(前身企業のコンサル事業開始は1999年)、ウェブをいち早く人材紹介に取り入れた。大半は企業が自社ホームページを作るくらいの時代に、コンサルティング業界専門の転職プラットフォームを作ったのが始まり。そこから力を付けてきた。競合人材紹介会社の大半が求職者にダイレクトにコンタクトを取る力がなく、他の転職プラットフォームに手数料を払っているが、弊社は募集から自社でできるプラットフォームがあり、利益利率がかなり高いのが特徴。プラットフォームの価値を上げるためにコンテンツを日々作り、ホームページの総ページ数が2万4,000ページ近くになっている。最近は転職ユーチューバーとの提携など、様々な試みをしており、登録者は10万5,000人に上っている。
コロナ禍の反動対策で急成長……収益モデルは極めて単純で、キャリアアドバイザー数×一人当たりの売り上げ。昨年から(キャリアアドバイザーの)採用を多くしており、今上半期は前年同期の3割増。今後の売り上げのベースができている。2023年度、24年度はコロナ禍の反動で売り上げはパッとしなかったが、23年後半から対策を取り、それが花開いた。今上半期の各利益は既に前期の通期を超えている。その結果、現預金がかなり積み上がってくるので、来年以降の成長に振り分けたい。23年度後半から手を打った施策で一番大きかったのは、「クライアントシフト」と言っているが、(特定の)お得意さんを持たない営業戦略に切り替えたこと。採用力が高まった顧客の世話をして、下がってきたら次の顧客にどんどん切り替えることで売り上げが平準化した。
点から線のお付き合いに転換……また、既存の登録者を再稼働し、2回目、3回目の転職を世話することにも力を入れている。ターゲットにしている20歳代、30歳代の人口が減る中、新規集客だけに頼るのは現実的でなく、これまで接点のある人材と何度も付き合う。「生涯キャリアハブ」と言い、転職という点の部分だけでなく、線でお付き合いする。転職以外のさまざまな悩み、課題にもなにがしかのソリューションを提供する存在になることを考えている。
人口減で若手が希少資源に……20歳代、30歳代人口が減るので、人材紹介会社は大丈夫なのかと思われるかもしれないが、供給がどんどん減っても需要が変わらず、給与水準や(人材紹介会社への)支払いの相場がどんどん上がっている。人材も希少資源になっている。AIで人がいらなくなるという話もあるが、現状はAIで効率化ができる一方、AIが出した答えが事実か分からず、チェックをする人間が必要とコンサルタント需要は増えている。また、弊社としては社歴が長くデータがあり、AIを使えば相当精度の高いマッチングができると考えており、(マッチング用AIを)今、開発中。
コンサルが落ち込んでもキャリアシフトで対応……売り上げでコンサルタントが占める割合は6~7割で、残りは事業会社、金融機関、システムインテグレーターなど様々。コンサルは今のところ新卒ではなく、中途採用に絞っている。われわれはコンサル業界に人を送り込むために会社をやっているのでなく、たまたまそこが一番人をとっているから。今後、コンサル会社(の採用)が落ちることがあったら、クライアントシフトすればいいと考えている。また、コンサル業界の離職率は高く、メンテナンス需要は結構ある。
大手企業への対抗で上場……もともと人材紹介会社はそれほど資本力はいらず、取り立てて上場は考えていなかった。しかし、今、求職者を集めるプラットフォームでは競合はリクルート、ビズリーチなど大手企業ばかり。今のところは何とかやれているが、今後を考えると体制強化しなければならない。もう一つ、AIの動きが加速しており、それをつかんで伸ばしたいと思ったことが、(上場を考えた)タイミングとなった。(HS)