伊澤タオル(365A)が6月20日、スタンダードに上場した。初値は公開価格を2%上回る765円。同社はタオルのファブレスメーカー。上場翌営業日に開かれた記者会見で伊澤正司代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
オンリーワン……タオルに特化した研究開発を行い、研究ノウハウによりタオルをファブレスで製造している日本で唯一の会社、オンリーワンの存在。販売と製造をうまくコントロールし、売り上げと製品性能が最大限高まったものを消費者にお届けしている。タオル市場は明確なマスマーケットが存在しておらず、われわれはマスマーケットの創出を目指している。今回の上場により事業がさらに加速すると考えている。
地政学リスクも考慮……繊維の研究はほとんどアパレルないし寝具を中心に行われている。中でわれわれは吸水性といった機能や耐久性を求めてタオルを日々研究。タオルに特化して研究しているところは他にはない。また、タオルの原料となっているコットンは事実上リサイクルできず、持続可能性を考えるといずれ限界が来ると考えている。人工繊維が求められる時代に備え、大手繊維メーカーと将来のタオルも考えている。信州大学、福井大学とも共同研究している。製造面では地政学リスクを勘案して中国依存度を下げるためインド、トルコに生産移管を進めており、生産地割合を2028年2月期に中国40%、インド30%(前25年2月期は中国67.8%、インド15.5%)にしていく方針。知見などから同業他社の参入障壁は非常に高い。
米国のアマゾン向け販売も今夏開始へ……前25年2月期は減収だが、これは一時的な在庫調整や期ずれなど一時的なものが要因。足元業績の回復は確認できており、通常の成長に戻っていっている。利益面では円安、円高の両方に強い体質を構築している。最長で3年程度の為替ヘッジを行っている。今後はホテル、病院などホスピタリティ分野にも大きなビジネスチャンスがあると考えている。初の海外企業向け販売も始まる。米国のアマゾンで、8月には販売がスタートする予定。マーケットサイズが大きく、伸びシロは非常に大きい。
のれん償却前当期純利益の50%をベースに配当……配当は重要な施策と捉え、上場前から実施している。今後ものれん償却前当期純利益の50%をベースに高水準の配当を実施したい。ファブレスメーカー、かつ、アセットライトなビジネスモデルで展開しているためフリーキャッシュフローが非常に高く、稼いだ利益を配当に回す形を考えている。
市場シェア20~30%を目指す……はじめに「タオル業界にはマスマーケットが存在しない」と申し上げた。例えば肌着といえばユニクロのヒートテック、洗剤ならば花王のアタックといった商品がある。その商品があるからこそヒートテックよりも価格は高いけど暖かい、アタックより高いけど天然由来で体への刺激が少ないなど、市場で商品が整理されている。一方、タオルについては事業者数と商品種類が多く、“ヒートテック”や“アタック”的な商品は事実上存在していない。タオルで分かりやすい中心的な商品があれば、柔らかさや吸水性などから価格の高低を判断できるようになり、それによりタオル業界全体が底上げされよう。われわれは現在存在していない“真ん中”のところを受け持っていきたい。国内タオルの市場規模は上代ベースで1,500億~1,600億円といわれ、下代に直すと800億~900億円。われわれのビジネスは下代なので売上高(100億円前後)から推定される現在の市場シェアは12%、13%。市場シェア20~30%となればマスマーケットと言えるサイズと思うので、国内においてもその水準まではまずはわれわれの役割としてマーケットチャンスとしては存在していると考えている。(Q)