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IPO2025年6月26日

IPO社長会見 北里コーポレーション 不妊治療の成功率のさらなる向上に寄与

北里コーポレーション(368A・P)が6月25日、プライムに上場した。不妊治療で使用する主に消耗品を開発、製造し、日本、アジア、欧州、米国など110カ国以上で販売している。初値は公開価格を49.3%上回る2,001円。上場当日の記者会見で井上太綬代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。

創業の経緯

私が東邦大学大森病院で体外受精、不妊治療を学ばせていただいたことが仕事のきっかけ。私は薬剤師で試薬や培地の調合も得意としており、こうしたことも事業にプラスになった。最終的に体外受精にかかわる製品を特許を取りながら開発してきた。先生方にも恵まれ、上場日を迎えることができた。まずは先生方、サプライヤーの皆さまに感謝。これまで私たちは業界のために頑張ってきたが、新たに株主の皆さまのためにもしっかり結果を残せるように頑張っていきたい。

競合状況

日本は不妊治療が世界的に見ても盛ん。不妊治療施設は600程度(米国は300~400程度)と世界で最も多い。このため日本は競合メーカーが国産品、海外輸入品と数多い。海外ではクーパーサージカル(米国)、ヴィトロライフ(スウェーデン)、当社が競い合っている。ただドメスティックのメーカーがどこの国でも入ってきている。

採卵・胚移植・卵子凍結に高い優位性

中で私たちは、卵を取る採卵技術、受精卵をカテーテルで子宮に戻す胚移植、卵子凍結の3分野について優位性をかなり保っている。特許の強みを生かしながら新しい治療方法などを業界に提案しながら事業している。今後は事業をさらに拡張し続け、特に海外活動に力を入れていきたい。また、卵子バンクなど周辺領域ビジネスの拡張につなげ、不妊治療の成功率をもっと高めることに寄与したい。

今3月期は増収減益見通し

今期は成長のための人的投資、工場の自動化を目的とした新社屋建設など先行費用により減益見通し。海外での製造拠点の設置はまったく考えていない。日本の企業であり日本で雇用しながらしっかり地域に根差した活動をしていきたい。自動化は続けるが、製品クオリティの維持ため、今後も手作業の部分を残す。なぜ手作業が必要かというと、私たちの製品は顕微鏡で見るものが多く、細心の注意を払って手作業で仕上げる必要があるため。

地域別見通し①日本

体外受精で生まれた子どもの比率は10%を超えてきている。不妊治療の需要は多いものの、人口ピラミッドから今後市場はそれほど大きく伸びはしないのではないかとみている。一方で小池都知事が推奨する卵子バンクなど新しい市場もあり、そこで当社の強みを十分生かせる。成長はまだまだ続こう。

地域別見通し②欧米

米国は代理店が新しくなることもあり毎年7~10%以上の売り上げ成長率が見込める。欧州は5%以上の成長率を想定。シェアは比較的高いものの、まだまだ取り切れていない地域もあるためそこを強化しながらシェア拡大を目指す。欧州は現在スペインの売り上げ比率が高い。スペインは法規制が緩く、不妊治療の患者さんがヨーロッパ中から集まるため拠点を持っている。まだまだやるべきことがたくさんあり、ドイツ、イタリア、フランス、イギリスなど主要国をはじめとして力を入れていく。

エリア別動向③アジア

一番力を入れなければならないのは中国をはじめとしたアジア。私たちはアジア企業なので、アジアでの優位性、売り上げ増強に向け今後かなり力を入れて取り組んでいくことになる。アジアはどこの国も今後伸びていこう。韓国も出生率は0.78だが国を挙げて力を入れている。中国、インドなども有名病院は海外の信頼のある製品を使う傾向がある。私たちはトップ病院と組んで拡販に努め、値段も維持したい。

配当性向40%

株主にきちんと還元することが大事であり、会社として株主還元にしっかり取り組む。今後も継続して配当を増やしていきたい。

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