GMOコマース(410A)が9月25日、グロースに新規上場した。SNS(交流サイト)を活用し、顧客企業の販促を支援するサービスを提供している。GMOインターネットG(9449・P)の子会社で、GMOグループの上場は11社目。初値は公開価格を80.5%上回る2,131円。上場当日の記者会見で、山名正人代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。
顧客店舗は1万5,000店超……経営理念は「すべてのお店のマーケティングプラットフォームに」。CX(カスタマー・エクスペリエンス)の向上や顧客のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を目的として、包括的な集客支援を行っている。2012年に設立、顧客店舗数は1万5,000店舗を超えている。業績は直近、右肩上がり。当社はストック的ビジネスをしており、比較的、計画を立てやすい。売上高20~30%、営業利益40~50%で伸びているが、それほどペースを変えずに来年以降もいけると思う。
データやAIを駆使し使い勝手の良いサービス……一言でいうと店舗向けデジタルマーケティングのプラットフォーマーを目指している。直近では店舗に合わせてデータやAIを駆使しながら、効果の高いマーケティングサービスを提供している。具体的にはLINE、インスタグラム、アプリなど、店舗が主に使うマーケティングツールを利用しながら自社でシステムを構築。データ収集、分析機能などを付け加え、使い勝手の良いものにして顧客に提供している。
2つのサービスが好循環……主要サービスは「GMOマーケティングDX」と「GMOマーケティングコネクト」。「DX」はLINE、インスタグラムといったツールを、導入からより高い効果が出せるまでコンサルティングなど包括的なサポートをしている。LINEのアカウントは日本で一番保有しており、営業していく一つの強み。「コネクト」は直近、最も力を入れている。顧客の嗜好に合わせたAIパーソナライズ配信で、売り上げアップを狙っていく。具体的にはお客さまの行動履歴、購買履歴、アンケートデータ、店舗独自のデータなどを収集、分析し、あとはAIを活用しながらチャネルを使い分けして集客を最大化する商品となっている。この2つのサービスは成長する上で好循環のつながりを持っている。「DX」の顧客データは年間27億件とかなりたまっており、「コネクト」のサービス導入が簡単にできる。AIを使ったサービスを差別化するには、データがしっかりあることが重要で、われわれは既にたくさんの配信実績があり、新しいサービスを進める上で、最大のアドバンテージと捉えている。
参入障壁高く競合おらず……80%がストック的収益。70%が顧客の月額利用料金、10%がストック契約の顧客がデータを使った場合の従量課金。ストックがありながら、利用ごとの収益を得られ、底堅い上に数字が伸びていく当社の強みの収益モデル。競争優位性は、何よりも早く始めたこと。ナレッジやデータがしっかりたまっている。われわれは企業、ブランド単位から店舗単位まで伴走するが、意外と一気通貫で行っているところは少ない。また、初期にある程度投資がかかるため、損益分岐点を超えるまで、時間がかかる。当社は損益分岐点をしっかり超えているが、新規参入のハードルになっている。結果として直接的な競合がいない。
新規乗展開も準備……成長戦略としては、顧客基盤の拡大をより早期に実現する。営業人員、販路を拡大しながら、クロスセル、アップセルを行う。続いてサービスの強化。マーケティングコネクトの収集するデータは、「決済で何を買った」「どんなクーポンを使った」などまだまだ増やせる。AIは当然もっと賢くなるので、AIを上手に使ってサービス強化に注力する。新規事業としては、顧客同士が来店客を送りあうメディアプラットフォームの構築や、新しい形のリテールメディアを考えており、準備に入っている。
グループ上場はプラスしかない……グループ会社の上場はGMOグループとして重要な成長戦略の一つ。変化の速いインターネット市場で勝ち続けるために、権限を分散しながらシナジー(相乗効果)を極大化する。当社にとっては顧客を紹介していただけるケースが多い。最初から営業するのに比べると圧倒的に有利。また、有形無形のアドバイスも受けられる。当社にとって(グループ上場は)基本プラスしかないと思っている。上場会社としての独自性を確保しながら、うまく利用していきたい。(HS)