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IPO2025年12月17日

【速報版】IPO社長会見 NSグループ 事業用保証で加速度的成長へ

NSグループ(471A・P)が12月16日、東証プライムに新規上場した。初値は公開価格を5%下回る1,406円。家賃債務保証事業を展開する日本セーフティー株式会社を中核とする持ち株会社。上場当日の記者会見で大塚孝之代表取締役社長=写真=が語った内容のポイントは次の通り。

借主・貸主双方に必要不可欠な制度

日本の不動産賃貸借市場は借地借家法による賃借人保護が強く、家賃滞納による不動産オーナーの未回収リスクが高くなっている。また、賃借人が連帯保証人を立てることができなければ入居審査を通過させることができず、契約獲得機会を逃してしまう。賃借人視点では連帯保証人が確保できないことにより、住居を借りることが難しい高齢者や外国人が存在しており、このような世帯数は年々増加している。当社が不動産賃貸借契約の連帯保証人を果たすことにより、賃借人にとっては連帯保証人がいなくても希望の部屋が借りやすく、不動産オーナーにとっては万が一の時に家賃が保証されることで安心して部屋を貸し出すことができる。家賃債務保証は各ステークホルダーの課題を解決し、不動産賃貸借取引を円滑に進めるための必要不可欠な存在。なお、家賃債務保証のビジネスモデルは最終的なサービスの利用者である賃借人と当社との契約手続きを取扱店が仲介するBtoBtoCのモデルだ。取扱店は私たちのような保証会社に代わって賃借人に保証商品を仲介する存在であるため、取扱店数が契約獲得に直結する重要なKPIとなる。

市場を上回る成長目指す

家賃債務保証事業の営業収益は主にフロー性収益である新規保証料と、ストック性収益である更新保証料および集金代行などのその他の売り上げから構成される。費用については、契約獲得時に取扱店に支払う販売手数料や、回収不能となった債権処理に関わる貸倒関連費用、訴訟費用などから構成される変動費と、人件費などから構成される固定費に大別されている。直近の2025年12月期第3四半期(1~9月)は、営業収益は前年同期比13.1%増、調整後EBITDAは同22%増と前年同期比で好調に推移している。また、当社では27年12月期までの中期経営計画を策定している。具体的には計画期間の最終期でトップラインで約365億円、EBITDAマージン約43%を目標としている。住居保証の着実な成長に加えて、事業用保証の加速度的な成長により、家賃債務保証市場の足元の市場成長を上回る2ケタのトップライン成長率を目指す。

ユニークなポジション

取扱店は25年1月時点で約6万6,000店。競合他社対比で首位と認識しており、強固な事業基盤を有している。28営業拠点を配置して、日本全国を幅広くカバーしており、特に大阪で事業を始め、早い段階から東京に進出してきたことから、関東・関西の大都市圏の取扱店カバー率が高い傾向にある。また、当社はスモール領域に強みを持っており、第一保証で10%近いシェアを有している。スモール領域は中堅・中小企業で構成されることから、市場の裾野が広く、そうした企業は審査通過率や財務安全性をより重視し、また、きめ細かい対応が求められる。一方で、信販系家賃債務保証会社の参入が難しい市場でもあり、販売手数料がミドル・ラージ領域に比べて低いことが当社の高い収益性につながっている。スモール領域の不動産管理会社では安価な賃料帯の住宅・事業用不動産を中心に管理しており、事業用保証の利用も多いことから、当社は既存のネットワークを活用して事業用保証市場の高い成長を享受することが可能。

高度なオペレーションとデータマネジメント

当社の収益性の源泉である高い回収率は、規律ある回収オペレーションによるものと考えている。滞納の段階ごとに適任の人材・チームで対応するとともに、回収チームの一人当たりの債権数を管理し、事業用に対しては専任の回収チームを設営するといった体制を構築することで、早期の回収を実現している。さらに訴訟移行の前段階で徹底して回収を追求することから、訴訟費用の抑制にもつながっている。また、当社における審査の基本的な考え方は「通過させるための審査」。長年の業歴を通じて蓄積したデータ、ノウハウを活用し、回収見込みのない賃借人や懸念のある賃借人を審査システムで瞬時に査定する。懸念のある賃借人については、審査時点で緊急連絡先や連帯保証人の印鑑証明などの情報を取得し、将来滞納が発生した際の回収を担保した上で審査を通過させる。強固な回収体制を有する当社だからこそ高い審査通過率を実現している。審査通過率の高さは取扱店のビジネスに直結することから、この利点をもって過度な価格競争を回避することも可能だ。さらなる審査基準の高精度化のため、AI技術を活用して新たな審査モデルを開発した。新たな審査モデルでは賃借人のスコアリングが精密化され、本来審査を通過しても問題ない賃借人の審査落ちを防ぎ、本来とるべきではないリスクを適切に排除することを可能にしている。

成長戦略

まず住居用保証のさらなる成長のための施策として、家賃債務保証の需要が強く、賃料帯の高い都市部でシェアの低いエリアや国内での未踏地域に優先的に営業人員を配置することで、網羅的なシェア獲得に注力していく。未成熟市場で高い成長ポテンシャルが見込める事業用保証事業においては、(住居用で既に取引のある取扱店が事業用案件も扱っているケースが多いことから)住居用保証で培った事業基盤を生かしながら営業力の高い事業用の選任部隊を配置することで効率的かつ着実な契約獲得を目指している。主たる事業である家賃債務保証に加えて、周辺領域での収入拡大を通じた収益源の多様化、収益力の底上げのため、多様なバンドル商品の開発にも取り組んでいる。また、家賃債務保証業界は中堅・中小の保証会社を含めた多数の会社が参入している一方で、市場の成熟に伴う競争激化を受けて小規模な保証会社を対象とした合従連衡や淘汰(とうた)が今後進行することが見込まれている。独立系、信販会社傘下の保証会社いずれにおいても一定の買収効果が見込めることから、保有している債権の質には留意をしつつ、インオーガニック戦略(M&A)の機会があれば積極的に検討していきたい。

配当方針

高い収益性に支えられたキャッシュ創出力を背景に、資本効率の高い経営や株主還元水準の維持・向上を実現しつつ、収益力向上のためIT・DX(デジタルトランスフォーメーション)投資、M&Aによる市場シェアの拡大といった成長投資にも資金を充当し、さらなる成長を志向する。株主に対して安定的かつ継続的な配当を実施する方針のもと、配当性向50%以上を目標としている。(SS)

※速報版は最終的な校了前の紙面記事です。今後、修正等が入る場合があります。

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