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IPO2021年4月22日

上場1年銘柄に注目 NexTone 阿南雅浩代表取締役CEOに聞く

10年内に著作権取扱高600億円目標

早期に東証プライム市場へ

NexTone(7094・東マ)は、楽曲の著作権を持つ人(著作権者)から委託を受け、楽曲を利用したい人に許諾して使用料を徴収し、著作権者に分配する「音楽コンテンツの著作権管理事業」を展開している。3月30日に上場から1年を迎えた。これまでの歩みを振り返るとともに今後の展望について阿南雅浩代表取締役CEOに聞いた。

――上場から1年が経過しました。

「上場時に『年率成長30~40%』『海外徴収開始』『演奏権参入』――を当面の目標に掲げた。上場初年度の2021年3月期は目標の成長率を上回り、海外徴収(海外で演奏、録音、デジタル配信された楽曲の利用料徴収)を開始した。そうした点はよかった」

「『21年3月期業績は“巣ごもり”で伸び、コロナが収束すれば成長が鈍化する』とみている人が多い。しかし、楽曲のリリース中止などマイナスの影響があり、巣ごもりで伸びた感覚はない。22年3月期もこれまでと同様の成長率を実現したい」

「事業の基礎になる管理楽曲数は順調に増加している。委託された楽曲数は22万曲超(前年同期は17万曲超)となり、新曲のほか、新たに浜田省吾の全旧譜などが加わった」

――なぜ管理楽曲が増えているのでしょう。

「当社はJASRAC(日本音楽著作権協会)の対抗軸として2000年に設立された。例えば、音楽教室での楽曲利用なら利用料は取りたくないと考える著作権者は少なくない。当社はそうした著作権者の要望に柔軟に対応している。一方、JASRACは硬直的。著作権者の意思が反映しがたいといわれている」

「当社は預かった楽曲がより多くの収益を生むようサポートしている。これも支持につながっている」

――成長戦略は。

「音楽著作権とひと口にいっても、①演奏権(コンサートでの演奏、カラオケ、店舗内BGM)②録音権(CDなどの複製)③出版権(歌詞集、楽譜の印刷)④貸与権(CDレンタル)⑤映画への録音⑥ビデオグラムなどへの録音⑦ゲームへの録音⑧広告目的で行う複製(CMへの複製)⑨放送・有線放送(テレビ・ラジオでの放送)⑩インタラクティブ配信(スマートフォン、パソコンへの配信)⑪業務用通信カラオケ――と11種類に分けられる。このうち当社は演奏権以外に参入済みだが、演奏権以外についても楽曲によって管理する権利が異なる。例えば、②⑤⑥⑦⑩は当社、それ以外はJASRACといったように」

「つまり、『新規の管理楽曲増加』だけでなく、『既存の管理楽曲における受託権利の拡充』も成長要因になり、伸びシロは大きい。その意味で今年は『放送・有線放送』権利を持つ楽曲の増加に力を入れる。というのも、著作権管理収入に占める『放送・有線放送』の割合は、JASRACが約30%、当社は7%にすぎない。演奏権に未参入であることを考慮すれば、放送・有線放送の構成比としては30%以上が健全な姿であろう」

――動画配信サイト「ユーチューブ」に音楽カバー動画(歌唱カバーや演奏カバーの動画)を投稿したクリエイターに収益を配分する仕組み
を整えました。

「UUUMのほか、講談社、ホリプロなどの権利者(200以上のチャンネル)と契約。海外のクリエイターにも同様のサービスを提供したい」

――海外について。20年11月、海外の著作権管理事業者(SACEM、SDRM、IMPEL)と著作権徴収代行契約を締結すると発表しました。デジタル

配信で既に徴収スキームを確立済みのユーチューブ、スポティファイ、アマゾンミュージック、アイチューンズ・ストアなどの配信のほか、演奏、放送、録音などすべての利用においても海外利用料の徴収が可能になります。

「当社の管理楽曲が海外で利用されたら著作権使用料徴収を代行いただく契約を締結。海外で橋頭堡(ほ)を築いた。世界最大級のSACEMとの契約効果は大きく、海外での当社の信用力が向上した」

「さらに20年12月末、著作権協会国際連合のCISACに参加した。日本からはJASRAC、日本美術著作権機構などが参加している。CISACは長らく、『非営利・各国一分野一団体』を原則としていたが、世界各国で当社のような営利企業・団体による著作権管理事業も広がりつつあることから、20年に参加申請の受け付けを開始。世界各国から10社がエントリーし、当社を含めて3社が今回承認された(ほかは英国のSoundreef、スペインのUNISON)」

「日本と同様、米国、英国、スペインなどでも既存組織に対抗しようとする事業者がいる。そうした事業者とも連携し海外展開していきたい。いつの時代も革命は辺境から起こる」

――中長期的な目標をお聞かせください。

「著作権管理収入はJASRACが1,180億円、当社は60億円。両者の合計金額の半数(=取扱高600億円)を10年以内に達成したい。また、新規事業も含め引き続き同じピッチで成長を仕掛けていきたい。東証のプライム市場にはできるだけ早期にいきたい」

銘柄情報

企業名:NexTone
事業概要:音楽コンテンツの著作権管理事業
上場日:2020/3/30
初値:553円(株式分割修正後)