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インタビュー2022年5月27日

<特別対談> NEW ART 白石幸生会長兼社長/経済評論家 杉村富生氏 “アート的発想”で多角化を推進

ITbook株、将来的に35%取得へ

日本最大級のブライダルジュエリー専門店「銀座ダイヤモンドシライシ」で知られるNEW ART HOLDINGS(7638・S)。近年は主力のブライダルジュエリーの成長に加え、エステティックサロン、フィンテック、スポーツなど事業多角化を進めている。すべてはアートの力で世の中をより良くするために――。代表取締役会長兼社長の白石幸生氏(写真、右)と経済評論家の杉村富生氏(写真、左)の対談を紹介する。

杉村氏 「みんなの夢の企業グループNEW ARTは、アートの持てるすべての力であなたを美と健康と幸せに導きます」という経営理念を掲げている。

白石氏 ブライダルジュエリーを始めて約30年。画廊・美術館経営はその前から手掛けている。画家の将来のために自分は何を提供できるかというところからNEW ARTはスタートした。画家たちを育てていく中で思ったのは、「自分も作家でありたい」ということ。アートの世界では革新性や独創性、そして世の中のためになることが求められるが、これは経営においても同じことが言える。アート的発想で社会を少しでも良い方向に変えていきたい。

杉村氏 美(アート)をキーワードに、次々と多角化を進めている。

白石氏 最近では、椿油の生産量日本一で知られる利島を訪れた。現代の化粧品のほとんどは石油原料の成分が使われている。日本で完全天然素材の化粧品のトップメーカーを育てようと画策しているところだ。引き続きM&Aを中心に事業を拡大していく。

杉村氏 昨年7月には美術品のオークション会社(エスト・ウェストオークションズ)を子会社化した。

白石氏 世界的にオークション会社の重要性が高まっている。画廊を始めて50年余り、気が付けばアジアのトップになっていたが、それでも欧米勢には総合力で差がある。世界トップの座を目指し、日本で最も古いオークション会社であるエスト・ウェストオークションズに加わってもらった。

杉村氏 絵画マーケットに対する世間の関心は高い。一方で、どのぐらいの市場規模があるかなどは一般的にあまり知られていない。

白石氏 世界的には7兆円ぐらい。しかしこれは20年前から言われていることで、実際はもっと多い。いま求められているのは、アートを経済的観点から語れる専門家。例えば銀行は絵を担保に取りたくても、その絵を経済的に評価できる人がいない。土地や建物の経済価値を判定する不動産鑑定士のような存在が必要だ。

杉村氏 実際は売り手である画商がほとんどの主導権を握っている。

白石氏 そもそも美術品のように個性の強いものは換金価格と小売価格が極端に違う。よくテレビ番組で鑑定されているものについても、本来であれば換金価格を出さなければいけないのだが、日本はまだ“資産としての美術品”という考えが定着していないために小売価格が出てきてしまう。政府ももう少し日本のアート産業の活性化に向けた環境整備に力を入れてほしい。

杉村氏 ITbookホールディングス(1447・G)の株式大量保有について。このほど株主から6名の取締役候補者が提案された。

白石氏 会社は株主がいなければ始まっていない。しかし、ITbookに関しては株主の存在をまったく忘れている。少なくとも恩田氏(前代表取締役会長兼CEO)がいた時から価値は半分に下がっており、適切な経営がなされているとは言い難い状況。早急に経営体制を立て直す必要がある。将来的には35%まで株式を取得したい。まずは自分が安定株主となることで、株主の皆さまがついてきてくださると信じている。IT産業はこれからの経済・政治の重要な柱となっていくだろう。地盤調査・改良事業についても、とある建設会社が一緒に仕事をしたいと名乗りを上げてくれている。

杉村氏 ここ一連の動きはアート経営の集大成、もう1度飛躍が期待できる状況になってきたということか。

白石氏 経営統合を経て経常利益100億円を出せる会社になれば、おのずと時価総額1,000億円が視界に入ってくる。今回の市場再編ではプライム入りの条件を満たすことができなかったが、今度は向こうから“ぜひ当市場に来てください”と言われるようになれればと思う。なお、今2023年3月期の期末一括配当は通常配当70円に感謝特別配当(10円~20円)を含め80円~90円を予定。(SS)