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コラム2022年9月29日

企業研究 イワキ(6237・P) 生産体制の再構築など「稼ぐ力」強化

長期ビジョン2025年の売り上げ400億円へ「着実」に

イワキは先ごろ株価急伸して1300円台に回復。中国の持分法適用関連会社2社を連結子会社化すると発表したことがきっかけだ。 今期業績予想の上振れ、そして、かねてより成長のカギとされる海外売上拡大への期待が高まっている。

【事業内容】ポンプの「デパート」多品種・小ロットであらゆるニーズに対応
イワキは「ケミカルポンプ」の専業・総合メーカー。ポンプといっても水ではなく硫酸や塩酸といった化学薬液“ケミカル”を扱うポンプを製造販売している。

1956年の創立時には理化学機器、実験室や研究所で使うビーカーやフラスコなどを扱っていたものの、当時の顧客が「国産で良質なポンプがない」という困り事を抱えていたことからポンプの製造・販売に参入。現在も、特定のポンプを販売する企業が多い業界の中にあって「イワシから半導体」、つまり、漁船に搭載して小魚と海水を一緒に移送するポンプから半導体製造装置に組み込まれるポンプまでと、顧客のニーズに沿うよう数万点に及ぶ多種多様なポンプ型式を取り扱っていることが大きな特徴だ。

【安定成長】特定市場への依存を解消
多種多様なラインアップは「業績の安定」にも効果を発揮している。創立より国内経済成長に乗って売り上げを順調に伸ばした同社だが、90年代に入ると大きく増減を繰り返すように。これは、技術革新の進展に伴い半導体・液晶市場向け製品が拡大したものの、この市場はシリコンサイクルと呼ばれる特有の景気循環の波が非常に激しく、同社もこれに多大な影響を受けるようになったためだ。この経験を生かし、以降は医療機器など半導体・液晶「以外」の市場を伸ばすことで、現在は安定的に成長できる体制が整っている。

【長期ビジョン】売り上げ400億円を“着実に”
2015年に策定した「イワキグループの10年ビジョン」。最終年度となる25年3月期は売上高400億円を目標に掲げており、22年3月期実績が324億円、23年3月期予想が348億円と、達成に向けて着実に積み上げてきている。

21年11月開示の中期経営計画には「生産体制の再構築」「不具合の撲滅」「基幹システムの刷新」といった取り組むべき重点項目がいくつか定められている。「計画」となると一般的には売上高など数字に目が行きがちだが、同社は企業価値の向上のための取り組みにも注力をしている。

重点項目の中でも優先度が高い「生産体制の再構築」では、外部倉庫活用による納期短縮などを実施し、物流機能の外部委託はほぼ完了している。この先は、ここに投下していた人員などの経営資源を本業である高品質な製品の生産などに集中させる。

【成長戦略】海外拠点を強化、本格始動
同社は長期ビジョン達成に向け、海外事業のさらなる強化に取り組んでいる。海外売り上げを伸ばす取り組みの一つに「販売方法の拡充」がある。現地営業は日本国内の営業とは異なり、単年度の売り上げが重要視されており、評価にもそれが反映されている。一方、リターンは大きいが、売り上げ獲得まで時間を要する顧客装置への組み込み用途向け営業は非効率だと抵抗があった。しかし、長期視点での評価をしていくことを前提に、中国で顧客装置開発初期から密に関わっていく販売方法を実践したところ、顧客装置組み込み用途向けが多い医療機器市場が稼ぎ頭になった。これがきっかけとなり、海外売り上げを伸ばす営業戦略の一つとして当該販売方法への意識が高まった。同社では、この販売方法を中国だけでなくアメリカやヨーロッパなどに広げていく。

※イワキは8月25日に中国の持分法適用関連会社2社を連結子会社化すると発表。社会インフラの質の向上、環境改善に対するニーズが強まりつつある同国で一層の事業拡大を図ることができると判断したと理由を説明している。

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本稿は22年7月29日にひろぎん証券が広島本社で開催した個人投資家向け会社IR説明会でのイワキ代表取締役社長藤中茂による講演内容からポイントを抜粋したものです。講演の模様は「動画」でもご確認いただけます。