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銘柄・相場情報2022年8月4日

企業研究 マリオン(3494・スタンダード)優良不動産で堅調な「賃貸」、「金融」掛け合わせで相乗効果発揮へ

【事業内容】地方公共団体向け競合不在の「賃貸」

手掛ける事業は主に2つ。首都圏に賃貸用不動産を所有する「不動産賃貸事業」と、これら不動産を証券化して当社が直接、投資家に販売する「不動産証券化事業」。

前者の賃貸事業では、首都圏に保有する不動産については主に地方公共団体との契約が多く、東京事務所にお勤めの職員の方々の住居としてご利用いただいている。ここは私が先代、先々代から受け継いだ信頼関係によるもので新規参入は困難。

後者の「不動産証券化事業」は2004年に許可を取得、現在は、申し込みから契約までがウェブサイト上で完結する「i-Bond(アイボンド)」を運用している。

i-Bondは数ある不動産証券化商品の中で非常にユニークな存在だ。特徴は①1口1万円と小額での投資が可能なこと②いつでも入出金の受付が可能なこと③手数料は無料で対応していること。キャッチフレーズは「お金 第3の置き場」。予定分配率は年1.5%と際立つ水準ではないものの、当社が保有する不動産という裏付けがあるため安全性が高く、余剰資金を待機させるMRF(マネー・リザーブ・ファンド)のような使い方をされる方が多い。預貯金ではインフレに耐えられず、物価上昇に合わせて不動産もおそらく価値上昇が期待されていることから、i-Bondを検討される方はますます増えるとみている。

【中期計画】5年後の売上高2.8倍、経常利益7.7倍

26年9月期を最終年度とした中期経営計画を発表。売上高は21年9月期の18億円から50億円に、経常利益は1.3億円から10億円にまで高める。具体的には次のような戦略を掲げている。

■不動産賃貸事業では賃貸戸数を1,206戸(22年9月末予定)から1,650戸に。ただし高値圏にある今はバリューアップを優先する。

■不動産賃貸事業、地方公共団体の取引件数を現在の217件(22年4月末実績)から400件に引き上げる。まずは25年に予定されている大阪万博に伴う特需に対応する。

■社会に必要とされる「サステナブル」な領域、例えば医療モールや介護といった施設を拡大して、物件構成比を現在の14%から30%にまで高める。

■不動産証券化事業のi-Bondについては、デジタル広告だけでなく対面での営業も強化することで出資残高を32億円(21年9月末実績)から150億円達成を目指す。

■不動産証券化事業では、SPC(特別目的会社)に保有資産を入れて運用することで運用益を得るアセットマネジメント事業を新たに立ち上げる。

直近では第2四半期決算と同時に通期予想を修正、売上高を300億円から210億円(前年同期比14%増)に、経常利益を3億円から2億4,000万円(同18%減)に引き下げたが、これは、不動産売却益の発生が来期にズレ込んだため。中計に変更はない。

【上場維持】基準適合に向けてIR(投資家向け広報)積極化

個人投資家の皆さまと向きあうといったIR活動に今後は積極的に取り組む。これまでは不動産賃貸という非常に安定的な事業を手掛けているがゆえに、クライアントや株主に対してがむしゃらにアピールすることの必要性を感じてこなかった。

ただ、今回は東証スタンダード市場を選択したものの、時価総額と流通株式比率が基準を満たしていない。まずは株価を今の3倍程度の水準に引き上げた上で、流通株式比率について対策を議論していきたい。

ちなみに当社はPBR0.3倍程度と、株式市場での評価がかなり低いと感じている。保有する不動産の含み益は少なく見積もっても40億~50億円程度、かつ、「建て替え」という可能性を秘めた物件が多い。新宿御苑にほど近い本社ビルは現在14階建てだが41階とする構想もある。

余剰資金については、現在は保有資産のバリューアップに投下している。円安などで外資の買いが集まっている現在とは状況が変わり、買い場が訪れたときは一気に方向転換できる体力がある。

※本稿は22年7月6日に大阪市内で開催された個人投資家向け会社説明会におけるマリオン福田敬司代表取締役社長の講演内容からポイントを抜粋したものです。