TOP  NSJアップデート  インタビュー  <特別対談> 日総工産 清水竜一代表取締役社長×経済アナリスト馬渕磨理子氏 ~前編~
インタビュー2021年6月17日

<特別対談> 日総工産 清水竜一代表取締役社長×経済アナリスト馬渕磨理子氏 ~前編~

2024年3月期利益2.5倍へ

飛躍のカギは「エンジニア人材」

製造派遣・請負など製造系人材サービスを展開する日総工産(6569)は今年2月、創業50周年を迎えた。先に公表した新中期経営計画(以下、新中計)では、最終年度の2024年3月期に売上高1,150億円(21年度比68.5%増)、営業利益67億円(同2.5倍)と業績の飛躍的な伸びを構想している。その背景と今後の戦略を経済アナリストの馬渕磨理子氏が聞いた。

――創業からの半世紀を振り返ってみて。
当社は製造系人材サービスのパイオニア。産業界の発展とともにビジネスモデルを変化させながら、今日まで日本のモノづくりをサポートしてきた。それでも昨今は技術革新の進展や新しい働き方の拡がりなど、企業と就業者、双方のニーズの多様化・複雑化が急速で、当社もさらにダイナミックな変化の必要性を感じている。

――製造現場はどう変化しているのか。
いわゆるライン作業を経てモノが出来上がる時代から、今は機械が作業の中心で、これを人がアシストする流れになってきた。当社の主力である製造派遣・請負は2兆円超と大きな市場ではあるが、中期的には微減が見込まれる。

一方、エンジニア派遣の市場は23年度までに20%以上の伸びが想定されている。専門性が高いこともあって慢性的な人手不足が続いており、コロナ禍が自動化・省人化の流れに拍車を掛けた。結果、製造現場ではロボットやAIを活用した装置の導入が進みつつあり、このような新しいテクノロジーはこの先も絶えず流入が続く。当社が請け負う現場のオペレーションも大きく変わり続けており、これに対応できる技術や技能を持つ人材へのニーズはますます高まることになる。

――新中計のポイントは。
重点取り組み事項として「既存領域の拡大」「エンジニア領域の拡大」「新規事業の創出」の3つを掲げた。「既存領域」については24年3月期に売上高820億円(3年間で33%増)を見込むが、これはオーガニックな成長を前提としたもの。再編が加速する業界にあって有効なM&Aなどの上乗せは含まれていない。

「エンジニア領域」は前期実績の36億円から174億円まで拡大する。受注単価が高いため、既存の派遣・請負ほど多くの人を稼働させなくても達成できるとみている。

――「新規事業」とは?
主にHR(ヒューマンリソース、人事)テック領域のサービス展開を構想している。前期までほぼゼロの状態から、3年後の売上高126億円を目指す。しかしここはマネタイズ方法によって変動する可能性があり、どちらかと言えば売上総利益18億円という目標を最優先で実現していく。

――現在は既存領域が売上高の95%を占めている状況。新中計では全体のベースアップを図りながらエンジニア領域の比率を15%にまで高めるとしている。
製造系人材サービス会社の多くは新卒社員をエンジニアとして育てるが、当社は既存の技能社員のキャリアチェンジや技能開発の一環として徐々にエンジニアへと育てていく。既に全国に研修施設を保有して、座学だけではなく、実際の装置に触れながら育成するプログラムを持つ当社だからこそ可能なモデルだ。

――教育に力を入れている日総工産ならでは、ということか。
配属前の教育・研修はもちろん、入社後の処遇改善など、就業者の管理には非常に力を入れている。加えて、教育・研修の内容についても市場の変化を機敏に察知した上で対応、これが取引先からの評価向上と就業者の処遇改善につながり、最終的に当社の利益に寄与するという好循環サイクルができている。

<後編は6月25日付に掲載予定です>

対談の様子は動画でもご視聴いただけます
https://www.nsjournal.jp/nsj_library/nisso-6569/