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トップ記事2022年9月6日

明治大学 株価指数研究所「兜日本株価指数」とは!? 日本株 144年の歩み明らかに

「戦後東証再開来」の日経平均月足チャートを見ると、前半の40年余が上昇、後半30年余が調整と“2つの局面”にくっきりと分かれている。もっともこれは、あくまでも戦後に限った話だ。渋沢栄一らが東京株式取引所(東株)を設立した1878年(明治11年)から既に144年(戦後再開後73年のほぼ2倍)。むろん第2次世界大戦以前にも活発な売買が行われてきたはずだが、これまでは市場通の間でもほとんど話題に上ることがなかったのが現状か。

こうした状況下、明治大学が先に「日本の株式市場の戦前期データベースを構築 140年にわたる歴史的趨勢が明らかに」とするリリースを発行して一部で話題を呼んだ。1878~1951年の日本企業の個別株価や資本金、配当金、資本異動のデータを収集し、「三和・岡本日本株価指数(兜日本株価指数)」を算出している。左のチャートで、戦後の部分は現行のTOPIXにつなげたものだ(一番上は「配当込み」)。これによって、日本の株式市場の144年間の真の姿が明らかになった。

本紙では、指数構築の立役者である2人に取材するとともに、8月27日開催の「株価指数研究所 成果発表セミナー」にも参加。この指数誕生の経緯や相場的な意義などについて、両者の話を次のようにまとめた。

なお、セミナーには、さわかみHDの沢上篤人代表や東京海上アセットマネジメントの平山賢一チーフストラテジストなど指数構築に関与した著名な市場関係者も参加して大いに盛り上がった。(K)

明治大学・三和裕美子商学部教授、株価指数研究所代表
商業利用の用途は「無限大」

三和・岡本日本株価指数は現在、「兜日本株価指数」として商標登録申請中だ。「兜」はもちろん日本の株式売買の中心地である兜町からとったものだ。1878年の取引所創設以来140年以上の歴史を持つ東京市場だが、当時からの株価指数は存在しなかった。戦前にも株価指数はあるにはあったが、単純平均型のため現状の指数に連結することができない。

2000年頃からの知人である岡本氏と話していて、ニューヨーク、ロンドン市場などとも統一して比較できる指数を作ろうという話になった。明治大学の研究ユニットとして16年に「株価指数研究所」を設立し、データ収集に取り組んできた。当初は20年東京五輪開催時を目標にしてきたが、コロナによる作業中断もあって、6年がかりでようやく完成した。

当初は歴史の先生にも声を掛けたが、誰からも一緒にやろうとは言ってもらえず、実物取引よりも清算取引が主体の戦前の市場慣行など、分からないことだらけのなかで手探りの作業が続いた。

延べ30人の学生アルバイトを動員し、「東株営業報告書」「統計月報」「株界二十年」など、めくると割けてしまいそうな当時の文献を一枚一枚写真に撮っては、ひたすらデータを打ち込んでいくわけだ。さらに、配当落ちなどの修正処理なら現在とさして変わらないが、当時の制度下では、増資の分割払い込みによって生じる新株と旧株の扱いの違いなどは1つ1つチェックして修正をかける必要があった。

完成した指数で戦前の日米株価を比較すると、日本の方がリスクも高いが、リターンは大きく上回ることが分かった。

明治大学とI―Oウェルス・アドバイザーズが独占契約を結んで、この指数の商業利用で展開していく。いろいろな人と話すと、思っていた以上に用途は幅広く、無限の広がりが感じられる。

今後も、欠落していたデータの補充や実物取引分の追加などアップデートを進めていく。アカデミアと実務界双方に貢献していければうれしい。

I―Oウェルス・アドバイザーズ・岡本和久社長
“終戦のカベ”を超えた意義

そもそも株価指数とは、社会全体に入っているお金が現在どういう状態にあるのかを時系列でつないで示したものだ。その意味では「配当込みTOPIX」を用いるのが最も適している。戦後に東証再開された1949年5月から遡及計算されている同指数だが、これをさらに、明治・大正・昭和初期まで遡って連結させたのが三和・岡本日本株価指数の試みだ。

長期投資の土壌のある米国市場では、労力をかけても長期のデータをきちんとそろえているのに対し、日本人の意識の中には“終戦のカベ”があり、市場においても、「戦前のことは忘れよう」となってしまっていた。

指数の商業利用の用途としては、まず研究機関やメディアなどの学術研究関係のニーズが想定される。指数がカバーする144年間の様々な局面における実質リターンの計測などが可能となる。資産運用の質の向上にも寄与するのではないか。

蓄積した膨大なデータには当然、個別企業の株価も含まれる。それらについてアニュアルレポートへの掲載といった企業ニーズも想定できよう。

もう1つは、個人投資家向けの投資の分野でも活用できそうだ。チャートの一番上の線は配当を再投資して計算したTRI(配当込み修正株価指数)だ。多少のギザギザはあっても、長期的に緩やかな右肩上がりを続けてきたことが分かる。

多数の銘柄を含んだ指数だから極端なブレも少なく、値動きが緩やかになる。また、売ったり買ったりではなく、時間を味方に付けた長期投資だからこそ、企業の生み出す収益がリターンの源泉となる。長期・分散投資の重要性が直感的に理解できるはずだ。

証券市場と向き合って半世紀余、73年のオイルショック、87年のブラックマンデー、2008年のリーマン・ショックなど背筋の凍るような暴落を何度も経験してきた。相場に暴落は付き物だが、長期のチャートで振り返ると小さな谷にしか見えない。結局、保有を続けていれば上昇してきたことになる。