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銘柄・相場情報2026年6月4日

企業研究 キオクシア 上場から1年半 株価57倍に

会社側は「スーパーサイクル」を宣言

キオクシアのSSD、高帯域が特徴のCMシリーズ。

フラッシュメモリーの世界的な大手、キオクシアHD(285A・P)の株価上昇が止まらない。5月15日の決算発表、6月2日のIR(投資家向け広報)説明会を経て上昇が加速、株価は8万円台に到達した。2024年12月のIPO(新規上場)時の初値は1,440円だったので2日の最高値8万3,140円まで、約1年半で57.7倍という驚異的な上昇を見せた。

同社の前身は不正会計問題で経営危機に陥っていた東芝から17年にメモリー、ストレージ事業を分離して設立された東芝メモリ。18年に米国のベインキャピタルグループを軸とする企業コンソーシアムが主導して株式の過半数を取得・買収していたため、ファンドの出口案件としてIPO人気は盛り上がらなかった。キオクシアは上場当初から、AIサーバーの大容量データ保存や消費電力の課題解決の観点からSSD(フラッシュメモリーで構成される大容量記憶装置)の重要性が高まり、高い成長が期待できる点をアピールしていたが、当時の投資家の反応は薄かった。

理由としてメモリーメーカーは市況産業であり、半導体の需要変動の波(シリコンサイクル)に大きく業績が左右されるため、業績好調時でも高いPER評価ができないという認識があった。もう一つは、当時の従来型のフラッシュメモリーのデータの読み書きのスピードではAIサーバーへの大量採用は難しいと、懐疑的な見方が一部にあったためだ。

こうした見方が変わり始めたのがデータセンター(DC)、エンタープライズ向けSSDの成長加速が顕著となった25年秋ごろ。同社が第8世代と呼ぶ高速・大容量のSSDが使われる学習用、推論用サーバーの大躍進が始まった。スマートフォンやパソコンなど民生機器向けの比率が低下し、ハイパースケーラー(大規模クラウド事業者)向け高付加価製品の驚異的な伸びが始まった。

26年3月期は売上収益が前期比37.0%増の2兆3,376億円、一時的な減損損失や無形資産の償却費などを除いたNon-GAAP営業利益が同93.4%増の8,761億円と過去最高を記録。さらに、27年3月期第1四半期の予想は伸びが一段と加速、Non-GAAP営業利益は1兆3,000億円と前期の一年分水準を四半期で超え、前年同期比では28.7倍の伸びを見込む。

2日のIR説明会で太田裕雄社長は、現在のAIに加え、エージェントAI、フィジカルAIの普及により推論処理量は爆発的に増加するとの見方を示した。同社では市場調査会社のデータを参考にしたフラッシュメモリーの26~28年の年平均伸び率を22%、このうちDC向けが46%、推論向けが86%になるとみている。26、27年と需給はタイトで、爆発的な需要の増加に対応するため、26~28年は年平均4,700億円の設備投資を行う計画。また、高帯域、低レイテンシー(遅延)、超大容量など求められる性能に応じた製品シリーズの開発も強化する。

需要が供給を大幅に上回る状況の中でハイパースケーラーが安定的にメモリーを確保するために、価格と供給量を長期で契約するLTAによって、収益の安定も見えてきた。今後も需要変動のサイクルは避けられないものの、変動が小さくなり、特に山と谷の「谷」が非常に小さくなる「スーパーサイクル」に入ったとの見方を示した。時期的には26年3月期の第1四半期以降、ニューフェーズに入ったとみているという。

高成長と市況変動に対する安定的なビジネスモデルを構築、財務体質も強固になったとことから、早ければ今下期から配当を開始する。M&Aなどの成長投資の資金を確保しつつ、配当を行い、状況によっては自社株買いも実施する。

決算とIR説明会を経てアナリスト評価も一段と高まっている。複数の証券会社から10万円を超える目標株価が示されており、先行きの期待は大きい。

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