高まる将来の需要に向けて新工場を建設中
1950年に設立された日本ゼオン(4205・P)は日本で初めて合成ゴムの量産に成功して以来、さまざまな独創的製品を市場に供給してきた化学メーカーだ。ナフサに含まれるC4、C5留分から抽出した成分を基に、合成ゴムや高機能樹脂などの製品をグローバル市場で展開している。高い世界シェアを誇る製品も数多く、その背景には「世界一も世界初も、世界唯一も目指して」という企業スピリッツがある。現状と今後の戦略を松浦一慶専務に聞いた。
――中東紛争が起きて以来、ナフサの供給不足が懸念されていますが、影響は。
松浦 当社はナフサを直接購入しているわけではなく、総合化学メーカーのエチレンセンターがナフサから精製するC4、C5留分を購入している。ホルムズ海峡封鎖の影響で必要量を100%調達できる状況にはないが、合成ゴムは輸出向けスポット販売を調整することで、既存顧客への安定供給を維持している。また、原料の高騰に対しては、従来より自動的に製品価格に反映される仕組みがあり、工場の稼働率低下による固定費上昇についても、サーチャージとして市場に価格転嫁されるメカニズムを取り入れ、業績に与える影響を吸収している。
――合成ゴムをはじめいろいろな戦略製品がありますね。
松浦 主要品目の中で合成ゴムは底堅い需要が続いている。自動車タイヤなどに使われる汎用ゴムとエンジン周りに使われる特殊ゴムがあるが、当社が特に得意とする特殊ゴムは世界トップメーカーの一つと自負している。特殊ゴムはエンジン周りの重要保安部分になくてはならない素材であり、業績は安定している。合成ゴムで培ってきた各種要素技術を応用し、蓄電池などで使われるリチウムイオン電池用バインダーも他社にはない独創性が評価されている。
また独自開発した高機能樹脂のシクロオレフィンポリマー(以下、COP)はカメラのレンズ用途、医療・バイオ用途、ディスプレイ用光学フィルムなどに幅広く利用され、将来にわたって需要拡大が見込まれる。代替困難な特長的性質を有しており、当社の技術の結晶だ。26年度はスマートフォンのカメラレンズ向けは生産台数の減少により需要は低迷するが、セキュリティカメラ向けや車載カメラ向けが順調に伸びる見通し。また医療用は安定的に成長が継続、半導体用途は前年度比約20%成長が見込まれるなど見通しは明るい。
COPの増産に向けて山口県周南市に約780億円を投じて新工場を建設中で竣工は28年度上期。現工場(岡山県倉敷市)と合わせてCOPの生産量は約30%の増産を見込んでいる。
――そのほかに期待できる分野はありますか。
松浦 COPを当社内で加工した光学フィルムは55インチ以上の大型液晶テレビ向けで圧倒的シェアを誇り、今年度も需要は堅調の見通し。リチウムイオン電池用のバインダーはEV(電気自動車)、ESS(定置型蓄電池)、AIデータセンター向けに需要拡大中。中国や韓国、日本などの電池メーカー経由で世界市場に展開。単層カーボンナノチューブは山口県周南市にプラントがあるが、追加投資を決定し経済産業省から「蓄電池に係る供給確保計画」として認定。最大約51億円(取組を実施するために必要な資金の額約30%強)の助成金を受領予定。用途としてはEVや折りたたみスマートフォン、家庭用ロボット、空飛ぶ車などに使われるリチウムイオン電池への採用が期待される。
17期連続の増配予想 対話機会を増やしIR重視へ
――株主還元策は。
松浦 16期連続増配しているが今期も増配を継続する予定。DOE(自己資本配当率)は現行の4%以上から5%への段階的引上げが将来的な目標。昨年秋から個人投資家向けIRを本格化。高水準の配当利回りと相まって、個人株主の構成比は1年で2%弱増加した。今後も投資家・株主との対話を通して、多くの方に当社の存在を知ってもらえるよう活動する。
※速報版は最終的な校了前の紙面記事です。今後、修正等が入る場合があります。

