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その他2026年9月1日

今週のAIチャート分析 ─電気・ガス業に集中した「買われ過ぎ」─

データ基準日:2026年9月1日(この日の終値までの情報のみを使用)
※20営業日前比(=20営業日前の終値との比較)、過去20営業日平均比(=過去20営業日の平均との比較)

1. 今週のスクリーニング結果

東証に上場する全銘柄のうち、指標の計算に足りる履歴を持つ3,653銘柄を分析した。このうち売買代金が1日平均1億円以上ある1,634銘柄を対象に、オシレーターの行き過ぎを判定したところ、点灯したのは45銘柄、点灯率は2.8%だった。

その内訳に、はっきりした偏りがある

電気・ガス業は候補22銘柄のうち11銘柄が点灯した。点灯率50.0%で、全体の18.2倍にあたる。
業種は26区分を検定しており、そのうち最も偏っていたものを取り上げている。多くの区分を見れば偶然に偏って見えるものが混じるため、二項検定に多重比較の補正をかけたうえで判定した。この偏りが偶然である確率は0.001を下回る。

以下、電気・ガス業のテクニカル構造を点検する。

2. 本稿で使う指標

本稿は4つの指標を使う。うち3つは同じことを別の角度から測っているため、先に断っておきたい。

RSI 一定期間の値上がり幅と値下がり幅の比。0〜100で表し、高いほど買われ過ぎ、低いほど売られ過ぎとされる。
ストキャスティクス 直近の値幅の中で、現在値がどこにいるかを0〜100で表す。
ボリンジャーバンド 移動平均から標準偏差の何倍離れているかを見る。バンドの外に出れば行き過ぎとされる。
一目均衡表 転換線・基準線・雲・遅行スパンから、価格が上昇と下降のどちらの側にいるかを見る。

この3つ(RSI・ストキャスティクス・ボリンジャーバンド)は互いに強く相関する。当研究室の測定では、RSIと直近1ヶ月の騰落率の順位相関は-0.89だった。つまり3つが揃って点灯しても、それは多角的に確認したことにはならない。同じ軸を3つの物差しで測って、全部が振り切れたという意味である。本稿が3指標の全一致を条件にしているのは、確度を上げるためではなく、境界付近の銘柄を除くためである。

一目均衡表だけは性質が異なり、価格の位置を見る指標なので、上の3つとは独立した情報を持つ。そこで本稿は「行き過ぎているか(オシレーター)」と「どこにいるか(トレンド)」を分けて示す。

3. セクターのテクニカル構造

点灯した11銘柄はすべて買われ過ぎ方向である。売られ過ぎ側の点灯は無い。セクター全体が同じ方向に振れている状態で、個別の事情というより、セクターに共通する需給の可能性がある。
この点灯は、緩やかな上昇の結果ではない。点灯した銘柄は直近2営業日で平均6.8%上昇している。幅は2.8%から13.1%で、2営業日の一斉高がそのまま行き過ぎの判定に出ている。何がこの動きを引き起こしたかは、本稿では確認していない。価格と出来高の観測にとどまる。

掲載する5銘柄のうち4銘柄が長期上昇に分類された。例外が東京電力ホールディングス(9501・P)である。EMA200からの乖離は-0.83%で、セクター内で最も売買されている銘柄でありながら、点灯していない。対照として本稿に含める

4. 業績とバリュエーションの現在地

テクニカルでは4銘柄が同じ「強気(短期は過熱)」に見えるが、業績の中身は揃っていない。2026年4〜6月期は、四国電力が増益だった一方、関西電力と北海道ガスは大幅な経常減益、中国電力は経常赤字となった。しかも、会社予想を開示している4社は、いずれも2027年3月期の最終減益を見込んでいる。したがって足元の一斉高は、少なくとも現時点では一斉の業績上方修正を伴う上昇ではない

表は基準日終値と各社の2027年3月期第1四半期決算を使った比較である。決算の原典は、関西電力(9503・P)中国電力(9504・P)四国電力(9507・P)北海道瓦斯(9534・P)東京電力ホールディングスである。

(予想PERは基準日終値÷会社予想EPS、PBRは基準日終値÷2026年6月末の1株当たり自己資本、配当利回りは会社予想年間配当÷基準日終値で算出した。いずれも小数第2位を四捨五入。東京電力HDのPBRは連結自己資本を普通株式数で機械的に割った参考値であり、A・B種優先株式が存在するため、他社との単純比較には適さない。)

銘柄 1Q経常利益(前年同期比) 通期純利益予想(前年比) 予想PER PBR 予想配当利回り
関西電力 528億円(▼60.8%) 3,100億円(▼18.4%) 10.6倍 0.92倍 2.7%
中国電力 -33億円(赤字転落) 310億円(▼54.8%) 12.2倍 0.49倍 2.8%
四国電力 270億円(△19.0%) 300億円(▼41.0%) 14.1倍 0.87倍 2.6%
北海道瓦斯 35億円(▼40.9%) 94億円(▼18.5%) 8.3倍 0.79倍 3.0%
東京電力HD 114億円(▼88.7%) 未定 算定不可 0.27倍(参考) 0.0%

関西電力 — 最終増益に見えるが、本業は減益

第1四半期は売上高が9.8%増えた一方、経常利益は60.8%減った。中東情勢による燃料費の増加、円安、原子力利用率の低下が重なり、エネルギー事業の採算が悪化している。 四半期純利益が38.2%増えたのは、きんでん株式の売却益1,050億円を特別利益に計上したためであり、純利益の増加を本業の増益と読むことはできない

予想PER10.6倍、PBR0.92倍は極端な割高圏ではないが、株価はすでに20営業日前比で20.3%上昇し、簿価に近づいた。 ここからの評価余地は、燃料価格・為替の落ち着きと原子力利用率の回復によって、会社予想の経常利益2,900億円を実現できるかに依存する。

中国電力 — 低PBRには低い財務余力が映る

第1四半期は、燃料費調整制度の期ずれが前年の約120億円の差益から約100億円の差損に転じ、島根原子力発電所2号機の定期検査による停止も重なって経常赤字となった。 会社の通期予想は純利益310億円を据え置いており、原子力設備利用率64%を前提にしている。したがって、下期に向けた利益回復には、島根2号機の稼働回復と燃料費の料金反映が重要になる。

PBR0.49倍は5社で東京電力HDに次いで低い。しかし自己資本比率は17.0%にとどまり、有利子負債は3兆3,610億円である。 簿価割れだけを割安の根拠にするより、低PBRは収益変動の大きさと財務レバレッジへの割引と見るべきである。

四国電力 — 業績は相対的に最良、株価指標は最も高い

第1四半期は経常利益が19.0%増え、純利益は29.1%増えた。伊方3号機がフル稼働し、水力発電量も29.8%増加したほか、卸販売電力量の増加が寄与した。 通期純利益予想300億円に対する第1四半期の進捗率は65.8%に達する。ただし会社は通期予想を据え置き、前期比41.0%減益を見込んでいる。季節性や今後の修繕・燃料費を考えると、第1四半期を単純に4倍することはできない。

予想PER14.1倍は、算定できる4社で最も高く、良好な第1四半期をある程度織り込んだ水準である。 チャートの強さを業績が支えている点は他社より明確だが、20営業日前比で20.4%上昇した後だけに、今後は通期予想の上振れ余地が実際に顕在化するかが焦点となる。

北海道ガス — 指標は割安だが、天候と季節性を割り引く

第1四半期は、春先の高温で暖房需要が弱く、都市ガス販売量が1.8%減少した。原料費調整による販売単価の低下に加え、スマートメーター・DXや人材への戦略的費用も増え、経常利益は40.9%減った。 一方、予想PER8.3倍は比較銘柄で最も低く、PBR0.79倍、予想配当利回り3.0%で、自己資本比率は53.6%と財務面にも余裕がある。

ただしガス事業は冬から春先に利益が偏るため、第1四半期の減益を軽視することも、逆に年間へ直線的に延ばすことも適切ではない。 会社は通期純利益94億円、18.5%減益を見込む。割安感が維持される条件は、冬場の需要と原料価格が会社想定から大きく外れないことである。

東京電力ホールディングス — 低PBRを割安とは断定できない

第1四半期は営業損失343億円、経常利益114億円、最終損失98億円だった。持分法投資利益778億円が営業赤字を補った一方、原子力損害賠償費157億円を特別損失に計上している。 会社は中東情勢による燃料価格の不透明さを理由に通期業績予想を開示しておらず、年間配当予想も0円である。このため予想PERによる評価はできない。

機械的なPBRは0.27倍だが、福島第一原発の廃炉・賠償に関する見積りの不確実性と優先株式を抱える資本構成を考えれば、他社のPBRと同じ意味にはならない。 EMA200を上回るかどうかは需給上の転換点にはなっても、業績の可視性が回復したことを示す条件ではない

総じて、4社の簿価割れと2.6〜3.0%の予想配当利回りはセクターへの資金流入を説明しうる。ただし、業績面で最も強い四国電力はPERが最も高く、最もPBRが低い中国電力は第1四半期赤字である。 この組み合わせは、低い株価指標と良い業績を同じものとして扱えないことを示している。

5. 銘柄別の分析

関西電力(プライム / 電気・ガス業)

関西電力

終値 2,955円
オシレーター RSI 84.47 / ストキャスティクス 93.37 / %B 1.189 → 買われ過ぎ
長期トレンド 長期上昇(EMA200からの乖離 23.80%)
中期トレンド 三役好転(雲の上 / 転換線と基準線は好転 / 遅行スパンは上)
値動き 20営業日前比 20.34% / 120日 16.80%
出来高 過去20営業日平均比 1.86倍
支持線 2831.8円(ボリンジャー上限(+2σ)) / 2,719円(一目均衡表の転換線)
抵抗線 2956.5円(20日高値) / 2956.5円(52週高値)

評価: 強気(短期は過熱)
短期の行き過ぎは、終値が 2831.8円(ボリンジャー上限(+2σ))を下回れば解消する。 ただしそれはトレンドの見方が変わることを意味しない。

この見方が無効になる条件: 終値が 2,643.8円(一目均衡表の基準線)を2営業日連続で下回った場合、この見方は無効。

中国電力(プライム / 電気・ガス業)

中国電力

終値 1,055円
オシレーター RSI 83.68 / ストキャスティクス 90.36 / %B 1.129 → 買われ過ぎ
長期トレンド 長期上昇(EMA200からの乖離 12.92%)
中期トレンド 三役好転(雲の上 / 転換線と基準線は好転 / 遅行スパンは上)
値動き 20営業日前比 16.33% / 120日 8.31%
出来高 過去20営業日平均比 1.86倍
支持線 1034.4円(ボリンジャー上限(+2σ)) / 1006.5円(一目均衡表の転換線)
抵抗線 1,145円(52週高値)

評価: 強気(短期は過熱)
短期の行き過ぎは、終値が 1034.4円(ボリンジャー上限(+2σ))を下回れば解消する。 ただしそれはトレンドの見方が変わることを意味しない。

この見方が無効になる条件: 終値が 965.9円(一目均衡表の基準線)を2営業日連続で下回った場合、この見方は無効。

四国電力(プライム / 電気・ガス業)

四国電力

終値 2,077円
オシレーター RSI 83.08 / ストキャスティクス 90.96 / %B 1.111 → 買われ過ぎ
長期トレンド 長期上昇(EMA200からの乖離 31.46%)
中期トレンド 三役好転(雲の上 / 転換線と基準線は好転 / 遅行スパンは上)
値動き 20営業日前比 20.44% / 120日 28.21%
出来高 過去20営業日平均比 1.79倍
支持線 2034.2円(ボリンジャー上限(+2σ)) / 1,945円(一目均衡表の転換線)
抵抗線 2084.5円(20日高値) / 2084.5円(52週高値)

評価: 強気(短期は過熱)
短期の行き過ぎは、終値が 2034.2円(ボリンジャー上限(+2σ))を下回れば解消する。 ただしそれはトレンドの見方が変わることを意味しない。

この見方が無効になる条件: 終値が 1,826円(一目均衡表の基準線)を2営業日連続で下回った場合、この見方は無効。

北海道ガス(プライム / 電気・ガス業)

北海道ガス

終値 888円
オシレーター RSI 82.69 / ストキャスティクス 94.81 / %B 1.148 → 買われ過ぎ
長期トレンド 長期上昇(EMA200からの乖離 14.32%)
中期トレンド 三役好転(雲の上 / 転換線と基準線は好転 / 遅行スパンは上)
値動き 20営業日前比 13.55% / 120日 -0.45%
出来高 過去20営業日平均比 2.00倍
支持線 869円(ボリンジャー上限(+2σ)) / 840.5円(一目均衡表の転換線)
抵抗線 891円(20日高値) / 930円(52週高値)

評価: 強気(短期は過熱)
短期の行き過ぎは、終値が 869円(ボリンジャー上限(+2σ))を下回れば解消する。 ただしそれはトレンドの見方が変わることを意味しない。

この見方が無効になる条件: 終値が 829.5円(一目均衡表の基準線)を2営業日連続で下回った場合、この見方は無効。

東京電力ホールディングス(対照)(プライム / 電気・ガス業)

東京電力HD

終値 572.3円
オシレーター RSI 64.29 / ストキャスティクス 70.18 / %B 1.275 → 中立
長期トレンド 長期下降(EMA200からの乖離 -0.83%)
中期トレンド 三役好転(雲の上 / 転換線と基準線は好転 / 遅行スパンは上)
値動き 20営業日前比 8.78% / 120日 -10.95%
出来高 過去20営業日平均比 1.55倍
支持線 556.7円(ボリンジャー上限(+2σ)) / 542.6円(雲の上限)
抵抗線 577.1円(EMA200) / 939.4円(52週高値)

評価: 弱気

この見方が無効になる条件: 終値が 577.1円(EMA200)を2営業日連続で上回った場合、この見方は無効。

6. 次に見るべき水準

銘柄ごとの結論ではなく、見方が変わる水準を横断で並べる。距離は基準日終値からの乖離。

銘柄 終値 見方が変わる水準 距離
関西電力 2,955円 2643.8円(一目均衡表の基準線) -10.5%
中国電力 1,055円 965.9円(一目均衡表の基準線) -8.4%
四国電力 2,077円 2034.2円(ボリンジャー上限(+2σ)) -2.1%
北海道瓦斯 888円 829.5円(一目均衡表の基準線) -6.6%
東京電力HD 572.3円 577.1円(EMA200) 0.8%

どの水準にも先に到達しうる。 この表は方向を予測するものではなく、見方を変える地点を事前に決めておくためのものである。

7. 点灯した全銘柄

電気・ガス業で点灯した 11銘柄をすべて挙げる。掲載していない銘柄も、条件は同じく満たしている。

銘柄 終値 RSI %B 長期トレンド 掲載
9503 関西電力 2,955円 84.47 1.189 長期上昇
9504 中国電力 1,055円 83.68 1.129 長期上昇
9507 四国電力 2,077円 83.08 1.111 長期上昇
9534 北海道瓦斯 888円 82.69 1.148 長期上昇
9508 九州電力 2192.5円 80.82 1.246 長期上昇
9536 西部ガスHD 2,586円 79.25 1.028 長期上昇
9513 電源開発 4,232円 78.88 1.229 長期上昇
9509 北海道電力 1,171円 76.15 1.219 長期上昇
9543 静岡ガス 1,340円 75.90 1.096 移行期
9505 北陸電力 1,070円 75.69 1.183 長期上昇
9532 大阪ガス 5,879円 73.76 1.147 長期上昇

(点灯は編集上の注目度の目安であり、収益を予測する検証済み指標ではありません。当研究室の検証では、この種の指標による銘柄の順位付けは、でたらめに選ぶのと区別がつきませんでした。)

8. リスクと留意点

•本稿の数値はすべて日足終値から算出したものであり、日中の値動きは考慮していない。
•データ源の制約により、上場廃止となった銘柄は含まれていない(生存者バイアス)。
•当研究室の検証では、テクニカル指標による銘柄の順位付けは、ベンチマークを -7.4% 下回った。
指標の点灯は、収益を予測するものではない。
•下落後の反発には傾向が測定されているが(1ヶ月で25%超下落した銘柄の翌月平均 3.95% 対 全銘柄 0.74%、1,356例)、

これは母集団 1,144銘柄・8年の測定であり、本稿の母集団とは異なる。そのまま本稿の銘柄には当てはめられない。

•逆張りの傾向は測定できているが、その優位は売買コストで消える水準である。短期売買の根拠にはならない。
•電力会社の利益は、燃料価格・為替・燃料費調整制度の期ずれ・原子力発電所の稼働率で大きく振れる。単一四半期の利益を年率換算しない。
•PBR1倍割れは、必ずしも清算価値に対する割安を意味しない。大規模な設備投資、規制、廃炉・バックエンド費用、有利子負債を踏まえ、資本に対して十分な利益を継続して得られるかを見る必要がある。

本稿は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。 投資判断はご自身の責任において行ってください。