TOP  NSJアップデート  インタビュー  よくわかる!! エラン(6099・東証プライム)~ アナリストが峯崎社長に聞く20の質問 ~
インタビュー2026年10月27日

よくわかる!! エラン(6099・東証プライム)~ アナリストが峯崎社長に聞く20の質問 ~

本テキストは、エランの峯崎社長への インタビューの内容 を書き起こしたものです。峯崎社長には、多くの投資家が抱く「20の質問」にお答えいただきました。

【会社名】エラン(6099)
【実施日】2026/10/14
【回答者】代表取締役社長 社長執行役員CEO 峯崎 友宏 氏
【会社概要】

1995年創業。病院の入院患者や介護施設の入所者に、衣類・タオル類の洗濯サービス付きレンタルと日常生活用品の提供を組み合わせた、日額制の「CS(ケア・サポート)セット」を展開する。2025年12月期の連結売上高は554億48百万円、連結営業利益は42億72百万円で、それぞれ前期比16.7%増、19.5%増となった。同年末の導入施設数は2,830施設に達した。2024年にはエムスリー(2413)グループへ参画し、同社のIT分野の強みを生かした新サービスの開発や、インド・ベトナムでの海外展開を進めている。

Q1
創業から現在の事業に至る成り立ちを、峯崎社長が入社された前後の会社の転機も含めて教えてください。

当社は1995年に神奈川県相模原市で創業し、個人宅向けの布団の訪問販売から始まりました。その後、長野県松本市へ本社を移し、布団の中綿をほぐして仕立て直す、打ち直しなどのリフォーム事業へ転換しました。その背景には、創業者の櫻井英治が当初から掲げてきた「人の困りごとを解決する」というビジョンがあります。当時、一番多かった粗大ごみは布団だったそうで、捨てずに座布団などへ作り替えて再利用する事業を始めたのです。この事業が長野県で思いのほか受け入れられ、松本市と長野市に支店を出し、売上高は4億~5億円ほどまで伸びたと聞いています。

その後事業が好調で、櫻井が新たな事業を考えていた頃、リフォームの仕事で訪ねた病院長のお宅で、「病院の布団も扱ってもらえないか」と依頼を受けました。ただ、病院で使う寝具の供給・管理を担う「基準寝具」の業界はすでに確立されており、今から工場の建設などに資金を投じて後発で参入するのは得策ではないと考え、お断りに伺ったそうです。

すると、「それなら、患者さんの身の回りのものを用意できないか」と提案されました。当時その病院では、ご家族がお見舞いに来られない患者さんのために、看護師や看護助手が買い物や洗濯といった雑務の負担が増えていたそうです。寝巻きやタオル、歯ブラシ、スリッパなどを当社が用意すれば解決できるのではないかと、「面白いね、やってみよう」と始めたのが、2003年8月のCSセット(入院セット)です。私もちょうどその月に営業担当として入社し、今では導入施設がまもなく3,000施設というところまで来ています。

エラン_0_20261027.png
【出所】エラン 2026年12月期 第2四半期 決算説明資料 p.10 (2026/7/31)

エラン_1_20261027.png
【出所】エラン 統合報告書「ELAN REPORT 2023」p.21 (2023/11/24)

Q2
CSセットの立ち上げ当初には、どのような苦労がありましたか。ご自身の営業経験を交えて教えてください。

最初の1施設への導入までには、確か1年余りかかったと記憶しています。「こんなに良い、誰も損をしないビジネスモデルなのに、なぜ病院は導入してくれないのだろう」と思っていました。

当時の病院は非常に封建的で新しいものを好まないところがあり、営業先では「実績はあるのか」と繰り返し聞かれました。当然実績はないため、「ぜひ最初の1施設になってください」とお願いし続けていたのが実情です。また、当時はご家族が患者さんの世話をするのが当たり前という考え方があり、身の回りのものを届ける必要がなくなると、お見舞いに来なくなるのではないかという心配も病院側にはありました。

Q3
最初の1施設が決まってから、CSセットはどのようにして広がっていったのでしょうか。最初の導入のきっかけも含めて教えてください。

実は、最初の1施設を決めたのは私です。「導入する気はないけれど、遊びに来ていいよ」と言ってくださる事務長さんがいて、ほかに行くところもなかったので、よく雑談に伺っていました。ある時、その方の奥様が入院され、「妻の着替えがどこにあるかも分からないし、仕事をしながら毎日届けるのも大変だ。峯崎さんの会社はそれを解決できるんだっけ」と相談されました。「まさにその通りです」とお答えし、導入が決まったのです。

当時は夫が入院すると妻が世話をするのが一般的でしたが、逆に妻が入院すると夫は仕事との両立や着替えの用意に困ることがありました。その大変さを想像していただければ必要性が伝わるのではないかと、営業でも「もし奥様が入院されたら、どうされますか」と問いかけるようにしました。実績に加え、こうした具体的な話もできるようになり、1施設目から10施設目までは非常に速いスピードで増えました。

同時に、当社の取引先であるタオルや寝巻きなどの貸し出し・洗濯を担うリネン業者さんの数も増えました。業者さんにとっても、当社と組めば仕事が増えたり、新たに生まれたりするため、「紹介したい病院がある」と多くのご紹介をいただけるようになったのです。こうして、神奈川県から長野県、関東全域、名古屋、東北へと一気に広がりました。

Q4
病院や施設に出入りする関連業者とのネットワークは、現在どこまで広がり、事業の強みにどうつながっていますか。

当社には「WIN-WIN-WIN」、いわゆる「三方よし」という理念があります。関わる業者さんや利用される患者さんとその家族など、誰かが損をするのではなく、全員が笑顔になり、良くなることを目指しています。こうした「敵を作らない」考え方も、CSセットが一気に広がった理由ではないかと思っています。

そのおかげで、リネン業者さんだけでなく消耗品の販売業者さん、院内売店の運営業者さん、病室のテレビのレンタル業者さんなどとのネットワークも全国で構築し続けることができています。

Q5
CSセットの導入施設は約3,000施設に達しましたが、今後の国内の成長余地と成長ペースを、どのように考えていますか

全国には病院が約8,000、介護老人保健施設が約4,000あり、小規模の有料老人ホームやグループホームなども増えています。当社は約3,000施設で満足せず、全体の41%の施設への導入を視野に入れて営業活動を行っています。

入院セットの必要性が認められるにつれて競合他社も増え、市場が盛り上がっています。当社が受注できなくても、他社のサービスが入って困る方が減り、「笑顔の総量」が増えるなら、それはそれで良いと考えています。もともとはなかった入院セットが、今では病院や施設の7割弱に導入されています。

今後は、残る約3割の未導入施設を開拓するとともに、他社サービスからの切り替え提案にも取り組み、年間で10%程度の成長を続けていく考えです。

エラン_5_20261027.png
【出所】エラン 2026年12月期 第2四半期 決算説明資料 p.10 (2026/7/31)

Q6
入院セットの普及が進む中、施設数の拡大だけでは成長が鈍化する可能性も考えられます。年10%程度の成長をさらに加速させるため、どのような取り組みを進めていますか。

まずはCSセット自体の差別化です。寝巻きでは「lifte(リフテ)」というブランドを立ち上げ、今までの入院着とは全く違う、リゾートホテルで着られるような寝巻きを作りました。既存の導入施設のうち約20%で導入され、非常に喜ばれています。他社には真似できないため、「少々高くてもエランさんがいい」と選んでいただけています。値段を下げず、価値を上げて喜んでご利用いただく考えです。

加えて、これまで患者さんやご家族を主なお客様としてきたところから、病院自体の困りごとを解決する施策も検討・開発しています。エムスリー(2413)グループに入ったことを生かして共同開発も進めており、これも他社には真似できない差別化になるのではないかと考えています。これら二つの施策を通じて病院にも喜んでいただき、CSセットを長くご利用いただくことを目指しています。

エラン_6_20261027.png
【出所】エラン 2026年12月期 第2四半期 決算説明資料 p.16 (2026/7/31)

Q7
病院の困りごとを解決するサービスとは、具体的にどのようなものでしょうか。お話しできる範囲で教えてください。

病院でも働き方改革を進めていますが、業務上、難しいところが多くあります。詳しい内容はお話しできる範囲に限られますが、看護師さんが本来担うべき業務以外の細かな作業を簡略化し、時間を生み出すサービスをイメージしていただければと思います。そうした形で、病院の経営に寄り添うサービスを進めています。

エラン_7_20261027.png
【出所】エラン 2026年12月期 第2四半期 決算説明資料 p.36 (2026/7/31)

Q8
エムスリー(2413)と組むことになった背景と、互いに見いだした連携の可能性を教えてください。

エムスリーさんは非常にデジタルに強く、私たちはとてもアナログな会社です。また、同社が病院や施設と直接契約するBtoB(企業・施設向け)の事業を展開するのに対し、当社は患者さんと直接契約するBtoC(個人向け)の事業を手掛けてきました。お互いに持っていない領域があるからこそ、相乗効果を生み出しやすいのではないかと、話し合いの中で意気投合し、資本業務提携に繋がりました。

Q9
事業の性質や企業文化が異なる中、エムスリー(2413)との協業はどのように進んでいますか。現場での連携や、その手応えを教えてください。

文字通り親子関係にありますが、親が子どものやりたいことを一生懸命応援し、知らないことを教えてくれるような関係です。当社にもデジタルに強い人材はいますが、それをどう事業に活用するかという点で助言をいただいています。また、エムスリーさんは海外展開の経験も豊富なので、進出に当たって気を付けるべきことを教えていただくなど、当社にない知見を補っていただいています。

新しい事業を作る際にも「そんな方法があったんですね」と思うような提案をいただくので、本当に良い資本業務提携ができているのではないかと思います。

Q10
インドやベトナムでの海外展開について、両国を選んだ背景と、現在の取り組み、将来の事業構想を教えてください。

両国を選んだのは、これから医療インフラが整い、増えていくところにチャンスがあると考えたためです。まだ整備の余地が大きく、コロナ禍をきっかけに衛生環境を改善する必要性が強く認識され、インフラ整備が進みつつあります。

2024年の参入当時、インドは日本の約12倍に当たる14億人超の人口を抱えながら、病院数は日本と同程度で、政府も病院を大幅に増やす方針を示していました。ベトナムでも、民間病院がほとんどない中で増やしていくという話があり、こうした医療インフラの拡大に可能性を感じました。

ただ、すぐにCSセットを展開できるとは思っていません。法律の違いに加え、両国は平均年齢が30歳ほどと日本より約20歳若く、CSセットのニーズはこれからだと考えています。経済水準もさらに上がると見ているため、条件が整うのを見極めたいと思います。まずは資本業務提携先の企業を支援して病院との接点を深めるとともに、日本国内にある衛生管理を徹底するための商品やサービスも現地に持ち込みながら、将来のCSセットの展開に向けて準備を進めたいと考えています。

Q11
インドやベトナムは長期的なポテンシャルが大きい一方で、高齢化の段階が日本と両国の間にある国の方が、早く収益化できるとも考えられます。他国への進出はどう考えていますか。

東アジアや東南アジア、ヨーロッパにもアンテナを張っています。例えば、スペインやイタリアは今後の高齢化という点で注目していますが、先進国ではすでに仕組みが出来上がっており、新たな参入には莫大な資金が必要となるなど難しさがあります。そのため、まずは東アジア、東南アジアを中心に展開したいと考えています。

エラン_11_20261027.png
【出所】エラン 2026年12月期 第2四半期 決算説明資料 p.47 (2026/7/31)

Q12
国内の既存事業で収益基盤と着実な成長を確保し、エムスリー(2413)との協業や海外展開で成長を加速するという理解でよろしいでしょうか。

おっしゃる通りです。まずは既存事業をしっかり進めながら、新しい価値をどう生み出すかを考えていきます。

Q13
資本配分計画では、3か年でM&Aに90億~120億円を充てる方針を示しています。どのような領域で、どのような機能や経営資源を獲得したいと考えていますか。

M&Aは、国内外を問わず、CSセットに付随する事業や、病院・施設に喜んでいただけるヘルスケア領域で考えています。全く異なる業界へ進出することは考えていません。

判断の軸は、これまでと同じく「困りごとを解決する」ことです。病院や施設にはまだ多くの困りごとがあり、それを解決できる商品やサービスも日本には結構あると感じています。そのため、当社としてはポテンシャルが発揮しきれていないその「仕組み」を買いたいと考えています。ただ、良い仕組みがあっても動かす人がいなければ意味がないので、優秀な人材も合わせて迎え入れたいと思っています。

エラン_13_20261027.png
【出所】エラン 2026年12月期 第2四半期 決算説明資料 p.29 (2026/7/31)

Q14
中期経営計画の先を見据え、例えば、2040年には、どのような価値を社会に提供できる企業になりたいと考えていますか。

今の「CSセットのエラン」から、「ヘルスケアのエラン」と呼ばれる会社にしたいと強く思っています。2030年までにそうしたいですし、2040年には絶対にそうなっていなければならないと考えています。

CSセットは自画自賛してしまうほどよくできた事業ですが、これまでは人の力で成長させてきました。これからは、人と組織の力で、CSセットよりも優れた事業を次々に作れる会社にする必要があります。ただ、社内だけでは生み出せる事業の数にも人材の能力にも限りがあるため、M&Aも活用して、自社だけでは足りない力を取り込みながら、新たな事業を継続的につくれる会社へ成長していきたいと考えています。

Q15
「CSセットのエラン」から「ヘルスケアのエラン」へ変わるうえで、核となる考え方を教えてください。

アップル(AAPL)がiPodからiPhoneへと展開したような流れを、当社でも作りたいと思っています。音楽プレーヤーでは各メーカーが似た商品を出して競争が激しくなる中、アップルはiPhoneによって新たな市場を切り開きました。CSセットしかない今の当社は、いわばiPodです。これを、さまざまなサービスが入ったパッケージにしたいのです。

具体的には、お客様と接する期間を広げたいと考えています。現在は入院中だけですが、退院後に在宅で療養するときや、再び入院を控えたときにも寄り添えるビジネスモデルを作りたいと思っています。

エラン_15_20261027.png
【出所】エラン 統合報告書「ELAN REPORT 2023」p.29 (2023/11/24)

Q16
目指す企業像の実現に向け、現在どのような課題や悩みを感じていますか。

CSセット一本で成長してきたことが、強みでも弱みでもあります。専門領域ではどこにも負けない一方、それ以外に独り立ちできる事業を作れていません。新しい事業は立ち上がり始めていますが、まだCSセットと肩を並べる事業に育っていないことが課題です。

Q17
次の事業を生み出すため、人材や組織の面では、どのような体制を作りたいと考えていますか。

当社には人柄の良い社員が非常に多く、新しいことも「どんどんやりたい」と前向きな人がたくさんいます。必要な知識を持つ方が社内に溶け込み、既存の社員と組むことで、良い事業を作れるのではないかと思います。現場を知る社員と、M&Aで迎える企業や協業先の新しい考え方やアイデアを組み合わせて、事業を立ち上げていきたいと考えています。

Q18
CSセットに続く新事業の立ち上げを、人的資本への投資の面ではどのように後押ししていますか。

給与制度の整備や福利厚生、教育に力を入れています。社員が頑張り、やりがいを感じられる制度を積極的に取り入れているところです。

Q19
教育や研修制度について、御社ならではの取り組みを教えてください。

他の上場企業の社長とお話しすると「それはないな」と言われるのが、研修の内製化です。新入社員向けの研修は先輩社員が内容を作り、教えます。外部研修も取り入れますが、基本は自社で行っています。

また、理念を浸透させるため、「エランクレド」という絵本のような冊子を配っています。冊子では、先ほどお話しした「WIN-WIN-WIN」をはじめ、経営理念や行動指針を分かりやすく解説しています。さらに、少し古くさいと言われるかもしれませんが、毎朝の朝礼で経営理念や行動指針を唱和しています。これは創業期からずっと続けていることで、今も変わりません。そのため、当社の社員なら誰に聞いても、全員が経営理念と行動指針を唱和できると思います。

エラン_19_20261027.png
【出所】エラン 統合報告書「ELAN REPORT 2023」p.8 (2023/11/24)

Q20
最後に、投資家に改めて伝えておきたいことをお聞かせください。

これまでCSセット一本で成長してきましたが、これからは「ヘルスケアのエラン」を全力で目指します。まだまだお客様や関係先との接点を増やし、それぞれをつなげられると考えています。

日本では病院と行政がうまくつながっていなかったり、取り残されている高齢者の方がいらっしゃったりします。そうした方々や関係機関を当社のサービスでつなぐ世界を目指し、それを海外にも展開できれば素晴らしいと思います。今の領域からさらに大きくなっていきたいので、引き続き注目していただけると嬉しいです。

関連記事