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REIT・不動産2023年2月9日

ARES、設立20周年記念式典を開催 「J-REIT」の歩みを振り返る

一般社団法人不動産証券化協会(ARES)は2月6日、帝国ホテルで設立20周年記念式典を開催した。かつてバブル崩壊で傷ついた不動産市場、ひいては日本経済を立て直すべく発足した同協会の「歩み」を振り返ってみたい。

持続可能な社会への貢献、PRの場を検討中

一般社団法人 不動産証券化協会 会長 杉山 博孝 氏(三菱地所 取締役会長)

当協会は昨年12月4日に設立20周年を迎えました。当初の会員数は129社でしたが、今日300社を超えるまでに拡大しております。J-REIT(不動産投信)と私募ファンドの資産総額は約50兆円規模に達し、そんな市場を支える専門人材を育成する「不動産証券化協会認定マスター制度」は昨年、登録者が1万人を超えました。

こうして不動産と金融が融合した不動産証券化事業は、いまやすっかり定着し、日本経済の発展に必要不可欠なインフラになったと自負しています。

これまで不動産証券化市場は世界同時多発テロ、リーマン・ショック、東日本大震災と幾多の試練を乗り越えて成長してまいりました。近年は新型コロナウイルス感染症の影響が甚大ですが、終息の見通しはいまだ立っておりません。

経済も、昨年末に日銀がこれまでの金融緩和策を一部修正する動きが見られるなど先行きに不透明感が高まっております。他方、ESG(環境・社会・ガバナンス)/SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みを求める声が投資家などを含め社会全般に広まっており、不動産証券化市場におきましても足元の困難な状況に対処するだけではなく、持続可能な社会の実現に貢献できるようマネジメント力の一層の強化が求められているところです。そこで当協会は設立20周年を記念して、J-REITのESG/SDGsへの取り組みを表彰し、業界全体の底上げや投資家へのアピールにつなげる協会賞の創設を検討しております。

J-REIT 20年の歩み

2001年にスタートしたJ-REIT。現在は60を超える銘柄が東京証券取引所に上場している。保有する物件の数は4,200万以上、総額は21兆円超。不動産の種類も当初はオフィスビルが大部分を占めていたが、商業施設や住宅、物流施設、ホテルなど用途も多様化し、今では有料老人ホームなどヘルスケア施設も組み入れられるようになった。

<J-REIT保有不動産種別>
オフィス……40%
物流施設……20%
商業施設……16%
住宅……14%
ホテル……8%
ヘルスケア施設……1%
※22年12月末現在、取得価格ベース

~試練を乗り越え、常に進化~
1990年代に日本経済はバブル崩壊による資産デフレと金融仲介機能の低下によって低迷を続けていた。これを克服するためにも直接金融あるいは市場型間接金融などを通じて多様な投資家が資金を投入、リスクを分散する体制、すなわち不動産証券化商品(J-REITなど)の創設が不可欠だった。

そこで90年に不動産業界を中心として「不動産シンジケーション協議会」が発足。その後2000年SPC法や投資信託法の改正によって、これまで主に有価証券に限定されていた投資信託の運用対象に不動産が加わり、ついに翌01年9月にJ-REITが誕生した。02年12月にはARESが発足。以降、J-REITは資産、銘柄数とも順調に拡大している。

リーマン・ショック勃発で世界が金融収縮期に突入すると、投資法人が民事再生法の適用を受けるなどJ-REITは非常に厳しい試練に直面したが、すぐにJ-REITへの資金供給を目的とする官民ファンドを設立するなどセーフティーネットが設けられた。11年3月の東日本大震災でも市場は大きく動揺したが、しかし物件被害が限定的であることが判明。J-REIT物件の耐震性の高さが再認識されることとなった。

第二次安倍内閣が発足するとJ-REITは「低金利でも比較的に安定した利回りが得られる」という魅力が注目されて再び成長軌道に。

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