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IPO2023年12月20日

IPO社長会見 雨風太陽 生産者を通じて関係人口創出へ

雨風太陽(5616)が12月18日、東証グロースに新規上場した。全国の生産者と消費者をダイレクトにつなげる日本初の産直EC(電子商取引)アプリ「ポケットマルシェ」を運営。初値は公開価格を26.4%上回る1,320円だった。上場当日の記者会見で髙橋博之代表取締役=写真=が語った内容のポイントは次の通り。

都市と地方をかきまぜる……12年前の東日本大震災をきっかけに、当時被災地で都市と地方の分断という社会課題が浮き彫りになっていた。それをビジネスの力で解決していきたいということで当初はNPO法人としてスタートした。地方は人が少なすぎて閉塞状況にあるので都市の活力をもっと地方に引き込む。逆に都市は人口が多すぎて様々な課題を抱えているので、窒息している都市に地方のゆとりを取り込む。これがミッションに掲げる「地方と都市をかきまぜる」という考え方だ。

足で稼いだ7,900人……日本には1,700を超える自治体があるが、その85%を超える市町村にわれわれの生産者さんたちがいる。しかもこれはこの10年間で私が日本列島を8周して、それぞれの地域で生産者の皆さんとひざ詰めで対話をし、現場を歩いて足で稼いできた7,900人なので非常に関係性が強固だ。このネットワークが一番の強みであり、これをアセットにして都市住民にサービスを提供していく。

地域の価値を都市住民へ……地方に眠っている価値を掘り起こして、自然の通訳者とも言える生産者を通じて具体的なサービスに落とし込んでいく。それがポケットマルシェサービスであり、親子地方留学という旅行系のサービス。これまで生産者は間延びしてしまったバリューチェーンの一番奥にいて消費社会からは見えなかった。これが都市と地方が分断している状況だが、われわれはここをダイレクトに双方向につなげた。生産者の価値に共感した都市住民がリピーターに、あるいはこの地域に子どもと体験に訪れるような形でバリューサイクルとなり、消費者が生産者および生産者が守る地域の価値を守り育てる仲間になっていくということがビジネスモデルの強みでもあり、会社の理念をも体現している。

日本初のスマホ完結産直プラットフォーム……ポケマルは忙しい生産者でも簡単にできるようスマホ1台で完結するようにした。食材に特化しているので、アパレルや家電製品と違って購入サイクルが早く、継続購入ユーザーが伸びていくという特徴がある。日本は四季折々で全国に多様な自然が広がっているため、旬に応じて食材名の検索から自然流入が起きている。従来の流通は中間コストが大きかったので生産者の手取りがわずか、さらに価格決定権もなかった。われわれは手数料が若干高めだが、食材に特化したアプリ開発をしているので非常に使い勝手がいいと生産者からも好評だ。

他のサービスとの違い……これまでの食品EC、オイシックスなどと違うのは双方向でつなげているためフィードバックが届く。これまではどれだけ手塩にかけて育てても嫁ぎ先が分からなかったが、明確にフィードバックがあるので仕事のやりがいが生まれる。逆に自分に足りないところをダイレクトメッセージでお客様から教えてもらい売る力を付けていくなど、お客様と生産者の距離が一番近い。また、スーパーなど従来の規模流通は規格と安定供給が問われたが、われわれの場合はこれまでの流通でそぎ落とされていた貴重な食材に出合える。

親子地方留学……地方に1週間来ていただいて親はワーケーション、こどもは生産者のところで様々な農漁業体験をする。これが非常に好評で、岩手県も募集した人数の倍の応募があった。昨年岩手でスタートし、今年5カ所に広げたが、最終的には日本中どこでもできるので順次地域を拡大していきたいと思っている。インバウンド向けもやっている。

3つ目の柱、自治体向け支援……1,505の自治体にわれわれの生産者がいるが、これまで付き合いのある自治体は182とまだまだ余白に手が伸びていない状況。自治体が抱える様々な課題に対して、われわれのアセットをソリューションにして提案をし、委託事業を受けている。例えば生産者の販促の支援やワーケーションのプログラムの提案など。

成長戦略……基本は食品のサービスを安定した収益基盤にしながら、その上に7,900人の生産者のアセットを体験プログラムにして収益化していく。さらにその上に同じく7,900人の生産者のアセットを活用して様々に自治体へサービスを提供していく。われわれはインパクトIPOとして、経済性のみならず社会性も追いかけるということで独自に設定したインパクト指標がある。これらの指標を追いかけるほど都市と地方の分断が解消されていく。2050年に日本人は1億人を切ると言われており、今から2,000万人が地方を中心に一気にいなくなることになる。その時に2,000万人が都市と地方を往来している社会になっていれば人口が減っても活力は維持できる。地方でも持続可能な社会を目指す。(SS)

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