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IPO2023年12月7日

IPO社長会見 QPS研究所 28年5月期に24機体制 稼働機数を増やし、利益幅拡大へ

(右から)松本祟良取締役、市來敏光代表取締役副社長COO、大西俊輔代表取締役社長CEO、八坂哲雄ファウンダー

QPS研究所(5595・G)が12月6日、東証グロースに新規上場した。マイクロ波レーダーを使った小型の地球観測衛星「SAR衛星」の開発・製造を行う九大発の宇宙工学ベンチャー。初値は公開価格(390円)比2.2倍の860円だった。上場当日の記者会見で大西俊輔代表取締役社長CEOと市來敏光代表取締役副社長COOが語った内容のポイントは次の通り。

目指す世界

大西 私たちは最終的に36機の小型SAR衛星を打ち上げることによって、世界中のほぼどこでも10~20分程度で観測できる“準リアルタイム観測”を目指していく。直近の銀行からの借り入れと、今回のIPOによる資金で18号機まで計画をしている。既に6号機を今年6月に打ちあげて10月からデータ提供を開始した。今期(2024年5月期)中にさらに衛星を3機、来年度は4機、再来年度は6機を打ち上げ、27年度(28年5月期)に24機体制ということを進めていく。衛星の機数を増やしながら売り上げを上げることで事業を拡大させていく。

36機体制、黒字化の時期

市來 “需要”というところが1つ大きなポイントになってくる。来年から新工場が稼働し、年間の製造体制が10機に増強されるので、資金さえあれば2年ぐらいのうちには、36機体制に持っていける。あとは市場を見ながら決めることになる。

大西 (黒字化について)なかなか時期として明確に答えることは難しいが、機数が増えてくると観測頻度が高まり提供時間も短くなるので、データとしての価値が高まり販売枚数が増えてくる。売り上げが伸びていく一方で圧縮できるコストも出てくるので、そこで利益の幅が取れてくる。現状は実用機が1機、実証機が1機だが、再来年までの打ち上げを進めていく中でどこかで黒字というものが見えてくるのではないか。

プレーヤーはまだ少ない

市來 現時点ではものすごく大きなプレーヤーがいるように見えるが、決して追いつけない状況ではない。機数で先行しているフィンランドや米国の主要プレーヤーも、打ち上げたものが全て稼働しているのかは実は分からない。まさにわれわれは今から機数が増えていくという状況で、逆転していくと考えている。また、世界的にどこも同じだが、小型SAR衛星ビジネスの中心はどうしても国の官公庁になっている。情報の秘匿性なども含めると、やはり“国産”というところがより求められてくるようになるだろう。

民間需要の本格化

大西 私たちのSAR衛星については夜でも悪天候時でも見れるというのが特色だが、その威力を発揮するには衛星の機数をいかに増加させるのかというところが一番の肝だ。

市來 やはりある程度機数が増えないと頻繁に画像は取れない。われわれの中での1つの目標は8機以上の体制。これをしっかり作ったところから本当の意味での実証が始まる。現在進めているインフラ系や点検、海洋関係などの画像を本格的に供給できるようになってくる。

1つの業界から同じような課題が寄せられているので、1つソリューションが作れればある程度横展開できそうだ。われわれの小型SARはレーダーならではの撮影で、例えば建物や地盤の陥没・傾斜をミリ単位で検知できるというところにすごく興味を持っていただいている。これは従来の光学衛星ではできないことであり、まさに機数が増えた時点、25年度ぐらいからが本格的に民間需要が立ち上がると考えている。(SS)

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