ランサーズ(4484・東マ)は仕事を依頼したいクライアントと仕事を受注したい個人をオンライン上でマッチングさせるフリーランスプラットフォーム「Lancers」を運営している。12月16日に新規上場から1年を迎える。これまでの歩みを振り返るとともに今後の展望について秋好陽介代表取締役社長CEOに聞いた。

――上場から1年を振り返って。

「上場効果を実感する機会が多かった。上場企業という安心感から、採用面では応募者数が倍増。特に新卒者の応募数の増加が顕著だ。また、資金調達の選択肢の幅が広がったことも良かった」

――事業環境はいかがでしょうか。

「コロナ禍を契機に働き方の価値観が大きく変わった。テレワークの浸透により、これまでできないと思っていた業務も“オンラインで発注できる”と多くの企業が気付いた。コロナ以降はバックオフィス系の職種にも社外人材の活用が広がっている。短期的にはコロナによるマイナス面の影響が業績に表れているが、中長期目線ではプラス影響の方が大きい」

――御社の強み、特徴は。

「クライアント側にとっては、社内にはないノウハウを持っている人材をオンライン上で、かつ変動費でスピーディーに発注できるというメリットがある。フリーランス側は時間や場所にとらわれず様々な企業と仕事ができる。自身のスキルアップや報酬の増加につながるほか、個人のスキルやノウハウが1社だけでなく複数社に還元されるという社会的価値も高い」

「特定の個人にオンラインで仕事を発注する『オンラインスタッフィングプラットフォーム』が流通金額の9割を占めている。作業量が多く低単価の仕事が中心の『クラウドソーシング』に対し、企業が通常行っているようなコア業務をオンラインで受発注できることが特徴。案件の単価も高い。個人の信用やスキルを可視化するアルゴリズムやテクノロジーを活用しながら、より高付加価値・高単価の仕事が流通するサイクルを積み上げてきた。ここは他社にはない強みと思っている」

――業績と事業の進捗について。

「今3月期第2四半期(4～9月)は、特に受託型のサービスでコロナのマイナス影響を受けた。一方、新規クライアント登録数はコロナ以前と比べて大幅に成長している。もともと流通金額全体に占める新規の割合は1～2割程度。足元の新規クライアントの増加がすぐさま業績に反映されるわけではないが、来期以降の流通総額の拡大に寄与する」

「最も重視しているのはプロダクト開発。新規のクライアントからはエンジニアやセールスの人材を“チーム”で欲しいというニーズが増えており、まずは複数の企業が複数人のフリーランスとともに働けるシステムへのアップグレードを図る。また、クライアント1社当たりの年間利用額が伸びている中で、より筋肉質なセールス&マーケティング投資を行っていく」

――提携やM&Aに対する考えを聞かせてください。

「基本的に、プロダクト開発やオンラインスタッフィングプラットフォームのセールスなどは自前で行う方針。ただ、当社がサービス提供できていない領域や立ち上げ途上の新規カテゴリに関しては、M&Aを活用していく場合もある」

「今年10月に買収したMENTAは、『教えたい人』と『学びたい人』をマッチングするサービス。新しい報酬機会や教育機会など、対フリーランスの価値提供を増やす狙いがある。買収前から既に、MENTAを通してスキルアップしたフリーランスがLancersで仕事を獲得し、そのフリーランスが今度はMENTAで教える側として報酬を得るというサイクルが出来ていた。オーガニックだけで高成長を遂げてきた実績からも、先行きが非常に楽しみなサービス」

――最後に株主還元策に対する考え、投資家の皆さまへ一言お願いします。

「中長期のポテンシャルに対してしっかりと投資を行うことが一番の株主還元につながると考えている。なお、先々の市場変更や株式の分布状況の改善、流動性向上を図る観点から、直近で株式の立会外分売を実施した」

「今はまだ黎明(れいめい)期にある業界において、コロナ以前まで続けてきた20～30%の成長は維持していきたい。ビジョンに掲げる『テクノロジーで誰もが自分らしく働ける社会をつくる』に向け、将来的には日本で一番報酬を払っている会社になることを目指す。投資家の皆さまには、一緒に日本社会を変えていく仲間として応援していただければ嬉しい」