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インタビュー2022年3月28日

トップインタビュー サイバネットシステム 代表取締役 社長執行役員 安江令子氏 V字型収益回復の道筋を開く

シミュレーションのリーディング企業へ

小型グロース株が一様に売られてきた昨今の相場だが、最悪期を脱しつつあるここからは企業内容の真贋が問われることになる。サイバネットシステム(4312)は機械系CAE(コンピュータ支援エンジニアリング)ソフト販売国内トップで、従業員のエンジニア比率45%の高技術企業だ。近年の高成長路線から一転、今12月期は大幅な減収減益に転じる見通しながら、一方で、自己株式の取得や増配を発表し、来期V字型収益回復を掲げる積極的な中期経営計画も打ち出してきた。その背景は何か。そして、この先にどのような近未来像が描けるのか。同社の安江令子社長(写真)に話を聞いた。

――そもそも「CAE」とは何をするものか。

「モノづくりの研究開発段階で、試作品によるテストや実験の代わりにコンピュータ上で設計したモデルを用いてシミュレーション、分析する技術のことだ。自動車で言えば、衝突実験の度に自動車を壊していてはお金も時間も掛かり過ぎるが、CAEの利用で大幅な行程削減が可能になる」

――AI活用によって、さらなるシミュレーション効率化を進めているとか。

「CAEのシミュレーションを1回実行するには、(試作品を作らないとはいえ)高性能のコンピュータを72時間(3日間)程度稼働するようなケースがあり、この作業を20回繰り返すとなると3カ月を要する。ところが、過去のCAEの分析データをもとにAIを活用すれば、『72時間』を『3秒』に短縮可能だ」

――「シミュレーションのリーディング企業を目指す」とのこと。自動車の衝突実験などはイメージしやすいが、ほかにも用途は大きく広がるのだろうか。

「例えば、自社開発したAIを搭載した大腸内視鏡画像診断支援ソフト『EndoBRAIN』はAI搭載医療機器として国内初の薬事承認を取得し、医師の診断を支援している。航空宇宙分野では、当社の『MapleMBSE』が米NASA JPL(ジェット推進研究所)でも使用されている。さらに、水素エネルギーの効率的な貯蔵、運搬支援や、UV殺菌装置の細菌・ウイルスへの紫外線照射量評価などにも用途が広がってきている」

――確かに将来性は有望そうだが、今期については「前期比11%減収、36%営業減益」見通しだ。米シノプシスとの販売代理店契約終了が背景とされているが。

「同社関連の売上高は2020年12月期には全体の約21%に達していた。既に代替製品のラインアップはそろっているが、短期的な影響は避けられない」

――現在は、CAE製品で世界シェア35%の“最強ベンダー”米アンシス製品の比重が高いが、将来また同じようなことが起こる可能性もあるのでは…。

「アンシス社の最高レベルパートナーに7年連続で認定されるなど、同社とは非常に良好な関係にある。もちろん代理店ビジネスの特性上、ベンダーが直販に切り替えるリスクは存在する。前期の代理店比率75.8%、自社開発製品・サービス比率24.2%に対し、2030年を目途に50対50を目指していきたい」

――自社開発体制は。

「09年にカナダと米国、10年にベルギーで買収した開発子会社3社で新製品の開発や製品の機能強化を進めている」

――「自社開発」とともに「海外」「非製造業」拡充も目指しているとか。

「前期23.3%の海外比率を40%に、同じく28.6%の非製造業向けを50%に高めたい」

――焦点はアジアか。

「アジアはシノプシス製品の比重が高かったために一時的に落ち込む見込みだが、中国、台湾を中心に研究開発に関する投資は日本企業以上に積極的で、需要は旺盛だ。アジアの製造業は組み立てから設計が必要な製造へと高付加価値化シフトが進んでいる」

「近年のEV(電気自動車)化など技術の転換期には課題解決に向けたシミュレーションの重要性が増す。電動化、5G、スマートシティなど、様々な技術が進化していくなか、当社の技術は『明るい未来』に貢献すると自負している」

――中期経営計画では来期V字型回復や26年12月期最高益などを掲げているが、あえて死角を探れば…。

「リスク要因があるとすれば米中貿易戦争激化か。機密性の高い分野だけに、政治が絡むと米国ベンダーの製品が中国で売れなくなる事態もあり得るだろう」

――決算発表時に株主還元方針変更を発表した。

「指標を配当性向50%またはDOE(純資産配当率)3%からDOE6%に変更している。16年から利益の拡大に合わせ配当を2倍以上に増加させてきた。一時的な減益時でも増配を維持できるようにするためだ」

――株価については。

「当社の認識する企業価値に比べて低いと感じている。事業拡大と情報開示の充実を通じて高めていきたい」