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インタビュー2022年7月4日

トップインタビュー 独立系証券 進展への道 新大垣証券・石村憲威社長に聞く

「ローカルスタンダード」とは何か 信金提携など積極対応進む

バブル弾けて30余年。多くの証券会社で経営統合や銀行の傘下入り、あるいは淘汰などが進むなか、岐阜県を地盤に、一貫して「対面営業中心の独立系証券」として生き残ってきたのが新大垣証券だ。何せ創業108年の社歴は野村証券をも上回る。近年は石村憲威(のりたけ)社長(写真)のリーダーシップのもとに進めてきた各種施策も花開きつつあるようだ。10数年の先物・オプションディーラー経験を持つ相場通でもある石村社長に話を聞いた。

――グローバルスタンダードならぬ「ローカルスタンダード」を目指しているとのこと。

「地方の地場証券として一番大切なものは、一人一人のお客様に誠実に向き合い、永くお付き合いいただくことである。当社の企業理念である『進もう 伸びよう あなたとともに』は、共に成長していきたいという思いによるものだ。他方で、情報は氾濫し金融商品も複雑化しているなかで、それを正確にそしてスピーディーにお伝えする必要がある。そのため、営業マンの高いスキルと正確な情報や安心できる商品の提供が大切だ」

「当社は、昔ながらの誠実で温か味のある顧客対応をしつつ、営業マンのスキルの向上を図り、安心して資産運用をしていただくことを目指している。サービス提供で提携している企業も大和ハウス、コメ兵、FPパートナーなどお客様に安心していただける企業にお願いしている」

――3年前に社長就任されてから取扱商品の内容を刷新されたとか。

「生保商品の扱いは4年前からだが、その後、米国とユーロのゼロクーポン国債を始め、一昨年には米国株の取り扱いも開始した。投信商品の品揃えも拡充している。ノーロード(手数料無料)で始めた米S&P500連動型ETFの積み立ては円安効果もあって順調に推移している」

――近年は新たな取り組みが目立つ。その1つが顧客紹介に関する地元信用金庫との業務提携だ。

「2019年10月に大垣西濃信用金庫と業務提携させて頂いた。地元大垣の資産形成のパイを大きくしたいという思いからお願いし、受けて頂いた」

――すでに2年半が経過したが、紹介案件は順調に伸びているのか。

「最初の1年半はぽつりぽつりという感じだった。現場の営業の方々にとっては、どうしても『顧客を取られてしまう』との不安があったと思うし、『証券会社はハイリスクハイリターンの回転売買をさせる』といったイメージも警戒されたかも知れない。しかしながら今回の提携は顧客を奪い合うものではなく、両者で資産形成のパイを大きくすることが目的であることや、当社ではハイブリッドでリスクの高い商品は一切取り扱いせず、地元のお客様の目線にあった資産形成を促していることを、大垣西濃信金さんの全支店に何度も足を運んで、現場の方々にご説明させて頂いた。その結果、現場同士の交流が深まり、信頼関係を構築できたことがその後の案件拡大につながっている。これからもこの関係を大切にしつつ拡充に努めていきたい」

――昨年12月には高山信用金庫とも提携した。

「大垣西濃信金さんからご紹介して頂き、高山信用金庫の坂口理事長に快く賛同していただいた。選んで頂いたからには誠実に対応し、両者での飛騨高山地区の資産形成の拡充に努めたい」

――信頼構築にまた1年半ぐらいかかりそうか。

「前回のノウハウもあるので、もう少し早められるのではないか。現場の皆様はもとより、ご紹介して頂いた飛騨高山のお客様との信頼関係を構築し、地元のお客様の資金を地元で循環できるように務めたい」

――「高山信金」と言えば…。新大垣証券の高山営業所は今年8月4日で20周年を迎えるとか。

「もともと投資家保護の観点から金融当局の意向もあって、廃業を決められた岐阜第一証券の後に出店させて頂いたが、飛騨高山の皆様は温かく迎えてくれた。とはいえ、地元愛の強い土地柄で、大垣など他の地域から出向いても簡単には“本音のお付き合い”には至らない」

――何か対応策は?

「当社は本店を含めて5店舗あるが、2年前から『瑞穂羽島地区』、大垣と垂井の『西濃地区』、そして『飛騨高山地区』の3つのブロック長制度を導入し、高山では地元出身の女性ブロック長を起用した。この地域では、銀行内の系列証券併設はあるが、独自の店舗を構える証券会社となると当社だけなので、伸びしろはかなり大きいと期待している」

――取扱商品拡充、信金提携、ブロック長制度…。多彩な取り組みだが、他にもあるか。

「5月に『ライフサポート課』を新設した。保険の保障や相続・贈与、不動産や“断捨離”まで気軽に相談してもらえるように、従来の金融証券から切り離して女性4名で対応している。それこそ『水道が出ないけど…』といったところから入ってもらってもいい。何でも聞いてもらうキッカケになればありがたい」

――最後に目標とする方向性や、目指す姿などがあれば聞きたい。

「一番やりたいことは『ファン』を増やすことだ。例えば、アップルのファンに他のスマホを勧めても決してなびかないだろう。ナイキもしかりだ。ところが金融界では、大手も含めて『〇〇証券でなければ』という話はあまり聞かない。営業マンの不断の努力によるスキルの向上を計り、当社の目指すローカルスタンダードに実直に、誠実に、取り組むことで、1人でも多くの新大垣証券のファンを作っていきたいと考えている」