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コラム2022年12月22日

企業研究 トレックス・セミコンダクター(6616・P) 5GやIoT本格化で躍動する「電源IC」のスペシャリスト

【事業概要】“異業態”両立の背景
トレックス・セミコンダクター(以下トレックス)はアナログ電源IC専業のファブレスメーカーでありながらも、フェニテックセミコンダクター(以下フェニテック)という半導体受託専業ファウンドリ(製造工場)を完全子会社として保有する。ファブレスとファウンドリ、異なる業態を共存させるユニークな戦略の目的は「相互補完」。それぞれが本業を突き詰めつつ時には補完し合うことでシナジーを発揮させている。

トレックスが手掛ける電源ICとは、様々な機能を動かすために電圧を制御しながら安定供給する部品のこと。家電製品から医療機器、産業機器や車載機器などまで「電気」を必要とする機器には全て組み込まれている。

身の回りの電気製品などが急速に増大、かつ、車載向けなど新しい技術が次々に誕生する現代においてICの設計を担うエンジニアは不足傾向にあり、しかし育成には5年、10年と長期間を費やさなければならず、そこで同社は専業という立場から電源ICに関するノウハウを蓄積。製造「以外」のマーケティングや製品企画、販売、品質保証までに事業を集約させ、製造についてはフェニテックを含む外部に委託することで、世界トップレベルの設計能力と、顧客第一に徹した小回りの効く対応力の両立を実現している。

高品質・安定供給を実現
一方のフェニテックは日本国内で唯一の半導体ファウンドリ。1968年創業と50年以上の実績を持ち、親会社トレックスよりも売上高、利益ともに大きい。トレックスは発注の70%程度をフェニテックに依存するが、逆にフェニテックの売上高に対するトレックスの比率は15%程度にとどまる。

「高品質・安定供給」との観点からもグループ内におけるフェニテックの存在意義は大きい。先ごろのような半導体不足の中ではファウンドリ側の意向が優先される傾向が強まり、トレックスが得意とする“小回り”、少数意見への対応は後回しにされがちだが、グループ内だからこそ協力が得やすい。フェニテック側もトレックスから顧客にニーズや業界動向といった正しい最新情報を常に入手することができるといったメリットがある。

【直近業績】「中計」進捗1.5年前倒し
2023年3月期の第2四半期は、売上高が前年同期比16%増の173億8,400万円、営業利益は同91.2%増の34億1,000万円だった。半導体市場が非常に活況だったことと、特に利益については、当社の売上高に占める海外比率が71%と高く為替の影響を受けたことも大きな要因だ。

通期では売上高で前期比6.9%増の330億円、営業利益で同28.3%増の50億円を計画しており、2Q時点の進捗率は、特に利益が68%となっているものの、これまで活況だった半導体市場は減速しており、今後の見通しが不透明なことから現段階では据え置きとしている。

ちなみに中期経営計画として25年3月期の売上高350億円、営業利益40億円を掲げているが、こちらも1.5年程度前倒しで進んでいるような状況。今後は見直される可能性がありそう。

【中期計画】
トレックスが手掛ける電源ICの強みは「小型」「省電力」。シャープペンシルの芯より薄い0・3ミリメートルといったサイズ感、あるいは、バッテリー向けを意識した長寿命などが特徴で、これらの技術はGX(グリーントランスフォーメーション)の観点からも大いに注目できる。

Powerfully Small! ~小さくても力強く~
強みは「小型化」「省電力」、脱炭素社会にも貢献

具体的には電子回路の「省電力」化、基盤の「小型」化に加えて、発熱を抑える低損失パワーデバイスを推進することで脱炭素社会の実現に貢献していく。

GXに必要な次世代技術の開発も進めており、現在はシリコンカーバイドや酸化ガリウムといった半導体の性能を高める「素材」を扱い、シリコンカーバイドについては10年以上かかった開発がようやく顧客へのサンプル提供開始の段階へ。酸化ガリウムについては既に製品開発の実績を持つ会社と資本提携を結んでいる。

※本稿は2022年12月8日に名古屋市内で開催された個人投資家向け会社説明会におけるトレックス・セミコンダクター執行役員経営企画室室長の前川貴氏による講演内容からポイントを抜粋したものです。